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第一回必須医薬品・地域ヘルスケア・システム国際会議提言事項(仮訳)
1995年10月25日-27日 於東京
 
 エクアドル、ホンデュラス、グアテマラ、ペルー、ラオス、モンゴル、ミャンマー、ネパール、ベトナムの各国保健省、WHO、及びUNICEFの代表である我々は、次ぎの分野で必須医薬品・地域ヘルスケア・システムを推進させるため以下の事項を提言する。
地域参加
I. 地域住民が積極的に参加する地域参加のプロセスをプロジェクトの枠組みの不可欠要素としなければならない。又、その方法、アプローチ、及び形式についての詳細な文化的背景を考慮して実施されなければならない。
II. 地域参加とは、プログラムの活動の承諾及び資源の提供だけに限定するのではなく、次のような場合には、地域の代表やその地域住民の団体を通じ、地域住民の参加、協力を促すものとする。種々のレベルでの意思決定、住民のニーズの評価、地域住民の動員、プログラムの立案、及び、プロジェクトの実行、評価段階。
III. プロジェクト計画には、地域の能力開発を構成要素に含めるものとし、能力開発にはRDF/PHC委員会のメンバーとなる地域住民を訓練するための特定活動、及び、地域と共同で地域の視点に立って開発した参加状況、及び、RDFの進展状況を評価する適当な指標を含めなければない。
IV. 地域を動員するには時間と資源を要する。従って、プロジェクトを立案する際にはこの点を認識し、配慮しなければならない。特定の活動をプロジェクトの計画に含める場合には、適当な時間と資金を組み合わせるものとする。地域動員の進展他状況は頻繁に評価し、プロジェクトの継続的なモニター及び定期評価の一部にしなければならない。
RDFの運営及びRDF委員会
I. 持続可能な政策
 公平に入手・利用できるプライマリ・ヘルスケア・サービスを維持し、持続させるには、既存の政策を定期的に見直さなければならない。必須医薬品の選択及び、RDFの構成については明確なものとする。必須医薬品に対する国家予算の配分は定義を明瞭にし、詳細に明記し、且つ増額しなければならない。
II. 中央レベルの役割
 RDFの狙いは、薬品を基本的に、自ずと定期的に使用する商品として使用するのではなく、適切な病気予防、治療医療サービスに寄与することにある。これは、指導原理であるので、ガイドライン、手続き、及び規定を綿密に作成するのは中央レベルの責任であり、更に、パイロット・プロジェクトの規模を国家レベルにまで段階的に拡大するためのメカニズムを立案するのも中央レベルの責任である。RDFによって生じる収入は、RDFが発展する見通しがたって初めて関連の保健活動に利用できる。
III. 地域のオーナーシップ及び権限の委任
 地域にはっきりと権限を委任することは極めて重要である。地域の参加及び、集まった資金を管理する地域の責任は中央レベルで保証するものとし、RDFにより生じた資金を基礎保健サービス改善に使用する権利を地域に付与する。
IV. 技術グループの支援
 中央及び、中間レベルには以下を確保するために、様々なセクターからなるタスクフォース、及び支援グループを配置する:
・ RDFの運営の統一化
・ 時宜を得た効果的なモニター及び監督
・ 情報の迅速な普及
V. ヘルスワーカーと地域双方の定期的、継続的訓練
 薬品の供給及び、技術・管理面の訓練は双方一緒に実施されなければならない。従って、この訓練には供給側とユーザー側の双方を参加させなければならない。(ヘルスケアのパートナーシップ)
VI. 規制当局による監視
 薬品及び、その処方、販売、用法を検査、管理、監視する政府組織(例:薬品局)の役割を強化しなければならない。
VII. 重点疾病の治療薬の選定及びガイドの見直し
 妥当な診断及び治療を確保し、それによって医療サービスの質的向上に寄与するため、重点疾病用の伝統医学及び標準的治療のガイドラインに留意しながら、薬品選定プロセスを定期的に見直すことを義務付けなければならない。
VIII. 活動が多岐にわたるヘルスワーカーの労働量
 「マルチ・マネージャー」としてのヘルスワーカーの労働量を実際の職務と手続きの面から見直さなければならない。職務を定義し、優先すべき仕事及び支援の条件を決定するため、任務の分析を実施するものとする。これにより、多岐にわたる役割のバランスをとることができる。
IX. オペレーションズリサーチの必要性
 オペレーションズリサーチの結果をシステムにフィードバックさせることが肝要である。プログラム/プロジェクトの一部に必ず結果がフィードバックされる明白なメカニズムを含めなければならない。オペレーションズリサーチは以下の問題を調査するために行う。
・ RDFに対する地域の認識,及び、地域のヘルスサービスに対する受け取りかた
・ 保健に対する家庭/世帯の支出
・ RDFの技術、管理面に関するヘルスワーカーの遂行能力(必須医薬品の処方及び使用の監視を含む)
薬品の供給及び支援
I. 政府は必須医薬品供給システムを運営するための長期プランを策定するものとし、適切であると考えられる場合には、そのプランに伝統医学を含めなければならない。
II. 医薬品の流通および保管等に関わる訓練を全てのレベルで改善しなければならない。この訓練の資金は、当初は援助機関からの寄付で賄うが、徐々に政府予算に組み込むものとする。
III. 政府は予算の中の保健配分を検討し、全体的に薬品供給項目への配分を増やすものとする。援助機関からの資金は、現在進めているヘルスケア改革のために充当されなければならない。
IV. 薬品の使用法を改善し、コスト削減を図るため、合理的な一般名による処方を強化する国家プランを策定しなければならない。
V. 能力を強化し、調達方法を改善するには、又、一定の国でプロジェクトを持続させるための重要な必須医薬品の現地生産の基準向上を図るには、援助が必要である。このための特別な協力体制を国レベルで決定しなければならない。
保健チームの管理能力
I. RDF体制を出発点として用いることにより、更に基礎保健サービスの管理システムを再生させるため、RDFのガイドライン、短期・中期・長期プラン、政策及び手続きを各レベルの関係者の参加を得て明白に体系化しなければならない。体系化することにより援助機関の参加が促進される。
II. プロジェクト・プランの訓練要素を発展させるには、能力本位の訓練方法、問題解決型のアプローチ、及び、直接参加による方法を利用する。政策を実施する観点からヘルスワーカーと地域機関の訓練を統合する。
III. 地域は単なる受益者ではなく、積極的なパートナーであると考える協力体制を焦点に訓練することにより、基礎保健サービスの提供システム及び、ヘルスワーカーの管理能力の向上を図らなければならない。
IV. RDFプログラムは、詳細な活動予定と合わせて作成しなければならない。実際に実施されている間は、合意を得た一連の活動に従っていることを保証するため、プロセス及び進展状況を綿密に監視しなければならない。
V. RDFの進捗状況及びインパクトを地域レベルで監視できる簡単明瞭な指標を開発しなければならない。これらの指標は、地方でも簡単に理解でき、定期的に実行可能で、長期的にプログラムの道標となりうるものでなければならない。かかる指標は、地元地域、NGO、ヘルスワーカー等の受益者と親密に協議して作成しなければならない。
VI. RDFのインパクトを地域レベルで監視する際には、公平を期するため、性別、読み書き能力、都市住民か農村住民であるか等の点を考慮しなければならない。
VII. プロジェクト計画には、ニーズの評価、地域の動員、及びプログラムの立案段階での地元の立案プロセスに地域住民の参加を要求する明白な活動を含めなければならない。
VIII. ヘルスケアを提供し、RDFを管理する保健省及び地域機関の管理能力を強化・補強するため、各国が短期・中期・長期要素を含む総合国家プランを作成するよう勧告する。このようなプランが作成されれば、援助機関は、このプランに合わせて参加することが可能になる。
IX. RDFの設立に係わる各国特有の政策及びガイドラインには、地元で得た資金を地元レベルで利用できることを保証する権限の分散を含めなければならない。
X. 予算の用意、人的資源の配分、備品の供給、地域参加、管理体系、及び地元の状況との関連性等、プロジェクトを持続可能にするための方策を必ずプロジェクト計画の中に織り込み、全ての関係者(政府、援助機関、及び地域自治体)の側の適切なコミットメントを確保しなければならない。








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