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笹川陽平日本財団理事長の歓迎の辞(仮訳)
 皆様、今晩は。
 皆様を東京にお迎えして「第一回必須医薬品・地域ヘルスケア・システム国際会議」を開催することができ、大変光栄です。
 私の父、故笹川良一は、「世界は一家、人類みな兄弟」ということを固く信じておりました。実際、父はこの信念に基づいて、また、この信念に導かれて、様々な苦悩を軽減すること、人間の潜在能力の開発を奨励すること、そして、世界平和を達成するため国際相互理解を促進することに生涯を捧げました。
 父は、1962年、この信念を具体的な活動とするべく、日本船舶振興会(日本財団)を設立致しました。民間の非営利団体であれば、政治やイデオロギー、民族、宗教問題等に捕われずに活動できるため、自身の目的達成の方法として最良の手段であると確信したことが、設立の動機でした。
 設立以来38年、父の雄大な構想が活動を通して正しいことが再三立証されてまいりました。教育、農業開発、文化交流、緊急時の救援活動、環境保護、そして当然のことながら、医療の分野で貢献できたことにより、本会は目標を効率良く達成できる機関であると自信を深めております。
 ハンセン病の撲滅や医学教育に対する奨学金、チェルノブイリ事故の被災者への医療協力で証明されているように、当会の目標に鑑みて保健問題に特別関心を持つことは至極当然のことです。その結果として、1993年の「必須医薬品プロジェクト」発足をみることになりました。
 現在進められているこのプロジェクトは、必須医薬品の不足にみられるように、社会状況や経済状況から医療システムの不備が深刻な国々を援助する活動です。医療システムの不備による必須医薬品の不足の問題は、ユニセフが先頭に立つ「バマコ・イニシアティブ」で初めて取り上げられました。当会では必須医薬品購入資金回転システムの構築は素晴らしい構想だと思いましたが、援助を受ける各国の実情がそれぞれ異なり、「バマコ・イニシアティブ」の形態での実施は困難な国もあると考えております。このような機会にこそ本会の今までの経験を十分活用すべきだと考えております。私共はアフリカの農民に主要作物の自給自足を奨励している笹川グローバル2000を始め、様々なプログラムを通して地域プロジェクトに関り、地域参加についての、又、地域の実情に応じた最良の実施方法についての知識を習得することができました。当会にはこのような実績がありますので、ユニセフの活動支援を通してばかりでなく、すべての人が持つ、十分な医療を受ける権利の実現に貢献できると確信いたします。
 この度、ユニセフを始め、WHO、各国保健省、その他関係者全員のそれぞれの努力と経験を収集、共有する場としてこの必須医薬品・地域ヘルスケア・システム国際会議のスポンサーを努められるのは光栄です。
 この会議によって、関係当時者間の協力が促進され、会議報告が各国における必須医薬品購入資金回転システムの推進に活用されるよう希望しております。そのためには、重要な問題点が全て明らかとなり、新たな見識が示されるよう、お互いに質問、討論を活発にしていただきたいと思います。
 この会議出席のため、遥々お越しいただき、ありがとうございます。皆様の献身的な努力には感銘をうけます。又、当然のことながら、東京大学の梅内博士には深く謝意を表明致します。博士のリーダーシップとイニシアティブなしには、本日のこの会議は実現できなかっただろうと思います。
 最後に、日本財団は1962年以来、長い道のりを歩んでおり、ヘルスケア面の成果は誇り得るものだということも申し上げておきたいと思います。しかしながら、私共の歩んでいる道には終わりはありません。私共は皆様と、より明るい未来に、より早く辿りつけるよう、友人やパートナーに手を差し述べながらこの道を歩きつづける覚悟です。
 ご静聴ありがとうございました。








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