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第二十三回日本剣道少年団研修会(体験・実践発表会)
最優秀賞者作品
 
期日 平成十三年二月十八日(日)
場所 日本青年館
 
「悔しさをバネに」
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新潟県新潟市
成思館道場
小学六年生
清水 里奈
 
 皆さん、誰もが「悔しい」と思った事があると思います。試合で負けた時の悔しさや、どんなにがんばってもうまくいかない時などいろいろあると思います。私が今日まで頑張ってこれたのはいつも心の支えになってくれた先生方、先輩、友達、家族がいたからだと思います。そしてもう一つ剣道を本気でがんばろうとさせてくれたことがあります。それは二つの「悔しさ」があったからです。最初の悔しさは一年生の秋、初めて遠征稽古に行った時の事です。面を付けたばかりで大きな声を出すことしかできない私に初めてお会いした先生が「元気があってとてもうまいね」と言って下さいました。道場以外の先生からほめてもらう事など当然初めてでうれしさで一杯でした。しかし周りを見わたすと生徒達は私を見てクスクス笑っていました。それも冷やかしのような笑い方でした。「どうして笑われているのだろう。おせじなのかもしれない。でもそんな笑い方しなくてもいいのに」悔しくて悔しくて涙をこらえることが精一杯でした。「君達にはもう二度と笑われない。君達以上に稽古して男の子に負けない剣士になってみせる」と心に誓いました。その悔しさが本気で剣道に取り組めた最初のきっかけです。
 二つ目は日本武道館で行われる小学生の部の個人戦に出場できなくなった事です。「全国大会個人戦で男子と試合をしてみたい」その思いで一年間頑張ってきました。いえ、頑張ってこれたのだと思います。待ちに待った予選会当日、不安と自信、いままでにない緊張感でもこの試合に対する気持ちだけは誰にも負けたくはありませんでした。試合は進み準決勝、無制限の延長戦がが続き気力だけで戦っているのが自分でもわかりました。決勝戦また延長戦となり握力がなくなっていきました。そして左手がしびれているような感覚になっていました。「ここで負けられない。負けてたまるか」と気力をふりしぼりそして銅を抜いていました。「ヤッタ!」うれしさで手のしびれなど忘れていました。しかしこの喜びはわずか二十八日間に過ぎませんでした。六月十一日、私にとって一生忘れる事のできない一日になりました。私の夢、それが現実となったと思った個人戦には女子の出場はできないと知らされたのです。「どうして?やっと手に入れたキップなのに。一年間がんばってきたのにどうしたらいいの?」悔しくて悔しくて涙が止まりませんでした。次の日もまた次の日も一人になると自然に涙があふれてきました。数日後、三人の先生方が道場に来られ私が出場できなくなったのは大人のミスだったと頭を下げられました。その中には私を初めてほめて下さった先生もいました。先生は私がただ心配で来て下さっただけだったのです。「どうしてそこまでされるのだろう。」胸が熱くなりました。「もういいです先生!」と心の中で叫びました。先生とあの日から手紙の交換をずっとさせていただき私にとって大好きな大事な先生なのです。「もう気持ちをきりかえよう。悔しさがあったからがんばってこれたんだ。この悔しさをバネにして女子の出場できる全国大会へ向けてがんばろう」と心に決めました。この悔しさは一生忘れることはできないと思います。でもけっして人を恨んだりはしません。それは館長先生の教えがあるからです。「人間はまちがいもする。でも反省できるのも人間だけだ」という言葉です。私を笑った人もミスをした大人の方も人間です。必ず反省していると思います。そして私も人間です。友達など言葉や態度などで傷つけているかもしれません。その時はしっかりあやまり二度としないようにします。二つの悔しさで学んだことをいかし、流した汗、流した涙を大切に心の暖かい人になるよう努力し大好きな剣道を続けて行きます。
 
 
「剣道とは」
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北海道伊達市
伊達網代道場
中学一年生
馬場悠衣
 
 「剣道とは」と聞かれると、皆さんは、何を考え、何と答えるでしょうか。私ならきっと「自分に自信と勇気を与えてくれた、とても大切なただ一つの武道である。」と胸を張って、答えると思います。私の中での自信と勇気。それは、今の力を信じ何事にも挑戦するという意味なのです。
 剣道、自分と相手、竹刀で相手とただ単純に打ち合う武道。一見簡単に見えるのだが、いざやってみると何とも言えない難しさ。だからこそ、どんな武道、スポーツよりも楽しく、一つの事が長続きしないこんな私でも、長く続けられたのです。
 竹刀で相手と、ただ単純に打ち合う剣道。私は今まで約八年間やって来て、二つ自分で変わった事があります。
 一つは、生きていくえで、とても大切な礼儀作法。これは、剣道をやっている時も、ふだんの生活の中でも、とても重要な事です。剣道を始める時、終える時の挨拶「お願いします」「有り難う御座いました」などは、ふだんの生活では「おはようございます」「こんにちは」「さようなら」におきかえて、自然と声が出るようになっていると私は思います。なぜなら、以前までの私は挨拶がなかなかできなかったけれど、今の私は、少しずつだけれど自然と挨拶ができるようになってきたからです。これからは、どんな時でも挨拶ができるように、そしてただ口でするのではなく、心から挨拶のできる人間になろうと思います。
 二つ目は、友情を深めあう事。これは剣道を通じて仲間を増やし、男女関係なく共に泣いたり、笑ったりする事だと思います。私には今、剣道を通じて数えきれない程の仲間が、全国各地にできました。昨年の体験発表でも普段は絶対に会えない仲間がたくさんできました。私はこんなに仲間ができる武道、スポーツは剣道位ではないかと、本当に剣道を続けてきて良かったと改めて心から思いました。同じ道場の仲間、外の道場の仲間、普段はよき友であるが、時には本気で戦う事も、しばしば。お互いが本気で戦う時はものすごく嫌だけど、お互いが強く成長するためには、相手だけではなく、私も本気で立ち向かって、いかなければならない。みんなそうやってきたのだから。これからも私は、全国各地に信頼し合える仲間をたくさんつくり、友情を深めあっていきたいと思います。
 中一になってからの折り返し地点。私の心のかたすみで、本気で剣道をやめたいと思う気持ちが存在したのです。その理由は、思った通りの試合ができないから、ただそれだけの事。私はなぜこうなってしまったのか、改めて自分を見つめ直しました。すると一つ、私に大きな原因があったのです。六年生の時に全国三位という実績をつかみ、それに甘えて練習をなまけてしまっていたのが大きな原因になってしまったのです。
 私は今、思った通りの試合ができないから、やめたいと思った自分を情けなく思います。これは自分の弱い心に負けてしまったと言う事です。だから私は、心の強かった昔の私に戻る為、真剣に練習を積み重ね、どん底から上へ、上へとはいあがっていこうと思う。人間は気持ち次第で変われるのですから。
 剣道とは、人間によって考え方がそれぞれ違います。私の剣道とは、自分に自信と勇気を与えてくれた、大切な武道、礼儀作法を学ぶもの、友情を深めあうもの、私はこれから、もっとたくさんの剣道を知るため、数多くの練習を積み重ねてゆきます。
 私は、もう一度皆さんに言います。私の夢、それは、もう少しで掴めそうで掴めなかった全国優勝をする事です。
 剣道、それは、人間を変える力を持つもの。本当に不思議なものだとつくづく思います。
 私はこれからも、頑張り続ける事を誓います。








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