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5-2.内水面(川、湖)について
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新潟県荒川の川船と川漁
 海に比べ、内水面ではまだ結構木造船が使われているということが言える。一方、その造り手を見ると、年齢構成は海の場合とそれ程変わりはないが、現存数48人といたって少ない船大工が数多くの舟を造っているという現状が見えてくる。船大工がいるところでも、一河川につき一人の船大工が残っているかいないかという段階に来ている。つまり、川舟というのは海の船以上に近代化を必要としない舟であり、それは一面からすると遅れているといえるが、むしろこれで十分役割をはたしていて、木造船そのものがFRP船や鉄船などに代替されない形で現在まで引き継がれてきたということが読み取れる。その場合に船大工が一人亡くなった時の打撃は一層大きい。今までにも海船については日本全国規模、あるいは広域に関連する博物館などが出来上がって、資料が集積されていく傾向にあるのに対して、川舟の技術保存はこれまで比較的小規模でしか進んでこなかった。こうした現状から、もう少し川舟を重点領域として含めていく必要性がある。内水面の造船技術においては、それぞれの河川、上中下流域でも形が違う。それらが川の自然と関わるだけでなく、人々の生活の営み方と関わり、使い手と船大工と相互のやり取りのもとで今ある形の船が出来上がったと言える。従って、単に造船技術だけを見るのではなく、そこに付随する様々な生活文化を念頭に置きながら今後の調査内容を決めていくことが肝要である。








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