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第3章 マレーシアの港湾事情
3.1 概要
 マレーシアにおける港湾(漁港を除く)は次の3種類による方式で管理されている。
[1]連邦直轄港
   ・・・・・クラン港、ジョホール港、ペナン港、クアンタン港、ビンツル港
 これらの港は、それぞれの地域(5ヶ所)にある運輸省港湾局により管理されている。ただし、実際に港湾を運営している組織は港湾局とは別で、ペナン港、ビンツル港は国営企業、他の3港については近々民営化される予定となっている。また、クラン港、ジョホール港には実際には複数の港が含まれており、運営組織もそれぞれの港で別組織になっている。
 半島部のペナン港、クラン港、ジョホール港の南北に連なる3カ所の港では、国内外を結ぶ貨物の流通基地としての機能に留まらず、マラッカ海峡を通過する船舶の貨物積替基地、タイへの貨物搬送基地として、取扱貨物を囲い込むシーボーン政策を進めている。
 
[2]州の管理する港
 サバ州・・・・・・コタキナバル港、サンダカン港等6港
 サラワク州・・・・クチン港、ミリ港、シブ港、タンジュン・マイン港等6港
 
[3]運輸省海事局の管理する港
 半島海事局管轄・・・・・ランカウイ港、コタバル港等7港
 サバ海事局管轄・・・・・ラブアン港、サプイタン港等6港
 サラワク海事局管轄・・・サマタン港、ルンドウ港等28港
 
3.2 主要港(連邦直轄港)の状況
[1]クラン港
 クラン港は首都クアラルンプルの外港であり、南港、北港、西港からなり、マレーシアでは最大の港湾である。このうち南港は最も古く、現在は国外との輸出入に関与していない。また、北港はクラン港の中心的役割を担っており、コンテナ取扱能力は270万TEU(20フィート標準コンテナ換算)である。さらに2〜3年のうちに100TEU拡大する予定になっている。西港は94年に開港し、開港以来取扱量は年間3桁以上の伸びを記録している。99年の総取扱量は前年比209%増の80万1,056TEUを記録した。さらに、西港は近年の貨物取扱量の増大を受け、1.4kmの停泊地を更に600m延長する工事を進めている。
 これら北港、西港を併せたコンテナ取扱量の世界ランキングは1998年の21位から1999年に14位と大躍進した。
 なお、クラン港のコンテナ取扱料金は、1965年以来35年間変更がなく、20フィートのコンテナがRM190、40フィート・コンテナがRM285となっていたが、2000年10月に値上げされ、それぞれRM230、RM345となった。
 
図3 クラン港概要
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 クラン北港はクラン・コンテナ・ターミナル社(KTC)及びクラン・ポート・マネージメント社(KPM)の2社で2000年9月までターミナル運営がなされていた。その後、KTCとKPMはコンテナ輸送大手のコンテナ・ナショナル社(KN)と合併し、ノースポート・コーポレーション社(NCB)を設立し、国内最大の港湾ターミナル運営・コンテナ輸送会社となった。合併後、既存3社はNCBの全額出資子会社となり、NCBは持ち株会社としてこれら3社を統括している。NCBへの出資比率は国営投資会社ペルモダラン・ナショナル(PNB)が53.4%となり、この他、国営石油会社ペトロナス傘下の海運大手マレーシア・インターナショナル・シッピング・コーポレーション(MISC)関係企業が15.4%となっている。NCBはクラン港で取り扱われるコンテナの約70%を処理している。
 また、コンテナ取扱港であるクラン西港は、クラン・ムルティ・ターミナル社(KMT)により運営されている。KMTへは香港財閥企業のハチソン・ワンポア、タブン・ハジ(巡礼管理基金庁)セランゴール州などが出資している。なお、ハチソン・ワンポアは世界18の港湾でターミナルを運営し、全世界のコンテナ取扱総額の約10%を掌握している。
 
[2]ジョホール港
 ジョホール港とは実際にはジョホールバル東の郊外にあるパシルグダン港と西の郊外にあるタンジュン・プルパス港(PTP: Port Tanjung Pelepa)の2港を総称して指している。パシルグダン港は1977年に開港し、第2期工事が終了した1985年には年間600万トンの貨物を扱えるようになった。
 パシルグダン港に続いて、ジョホール州第2の港であるタンジュン・プルパス港は主にコンテナ積替港として建設された。1999年10月に試験運転を開始し、2000年1月から2カ所のバース(貨物取扱能力:年間130万TEU)が全面稼動した。2001年半ばに第一期開発計画が終了し、計6カ所のバースが完成、貨物取扱能力は年間380万TEUになった。同港での貨物取扱実績は、2001年1年間で205万TEU(20フィート・コンテナ換算)に達し、操業を開始した2000年の41万8,000TEUからは5倍近くに増加、入港したコンテナ船の数は2001年通年で2,286隻に上った。また、第二期開発計画は2002年に着工される予定となっており、新たに6ヶ所のバースが追加され、取扱能力を1年当たり450万〜500万TEUに拡大する計画である。PTPはシンガポールとジョホール州を結ぶ第2連絡道路にも近く、港湾の使用料はシンガポール港に比べ30%も安いことから、将来、シンガポール港を脅かす存在になるとの見方もある。
 実際、2000年10月に海運大手マースク・シーランドが同港に30%出資し、同社の積替拠点をシンガポールからタンジュン・プルパス港に移転している。これにより、同社のシンガポール港における積荷の85%がタンジュン・プルパス港に移管され、シンガポール港は取扱量の1割強を占める180万TEU(20フィート標準コンテナ換算)のコンテナ取扱業務を失うこととなった。その他、台湾海運最大手のエバーグリーン・マリーン(長栄海運)も、コンテナ積み替え拠点をシンガポールからジョホール州のタンジュンプルパス港(PTP)に移管することを検討中である。エバーグリーンのシンガポール港でのコンテナ積み替え量は、子会社のユニグローリー・マリーン(立栄海運)を含めると年間約120万TEU(20フィートコンテナ換算)に上る。
 タンジュンプルパス港の建設工事費用は第1期開発計画分で2億リンギ(約60億円)であり、資金は同港の運営会社であるポート・オブ・タンジュンプルパス社の銀行から借り入れで賄われており、政府からの資金は投入されていない。PTP社は政府から60年(更に30年の更新条件付)の運営権を獲得している。
 さらにジョホール州では第3の港となるタンジュン・ラングサ港を建設中である。同港は主に石油化学製品等の産業貨物を取り扱う予定となっている。
 
図4 タンジュン・プルパス港の所在地
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図5 タンジュン・プルパス港のレイアウト
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[3]ペナン港
 ペナン港はペナン島と対岸の半島部双方に埠頭を持ち、1985年に完成したペナン橋が双方を結んでいる。半島側の北バタワース・コンテナ・ターミナルは現在、3億リンギ強を投じて拡張工事が進行中であり、2004年に完了すると年間コンテナ取扱能力は100万TEUに拡大する。
 ペナン港はペナン・ポート社(PPSB)により運営されている。同社は1993年に創立され、94年1月から同港を運営している国営企業であり、ペナン港は唯一民営化されていない港である。現在は民営化のために有力企業数社と大蔵省との間で売却が検討されている。有力企業の中で特に有望視されているのが大手造船ペナン・シップビルディング&コンストラクション・インダストリーズ(PSCI)である。
 
[4]クアンタン港
 クアンタン港湾局は半島東海岸唯一の港湾局で1974年に設立された。管轄する港はクアンタン港およびクママン港である。
 クアンタン港は1980年から一部運用が開始され、84年から全面稼動(7バース)が開始された。同港はゲベン工業団地の石油化学プラントを後背地に擁し、主に化学品等の輸送基地となっている。1998年に港湾運営が民営化され、民間企業のクアンタン・ポート・コンソーシアム(KPC)により運営されている。
 クママン港はクアンタン港の北50kmに位置し、全天候型の大水深港である。主に、液体化学品や液化石油ガス(LPG)などを扱っている。
 
[5]ビンツル港
 ビンツル港は1982年に開港し、沖合いで採取される液化天然ガスの積出港として利用されている。その他の取扱貨物には、パーム油、工業用炭酸ソーダ、建材、液体化学製品等がある。
 ビンツル港を運営するのは政府所有のビンツル・ポート・ホールディングス社(BPHB)である。1992年の運営機関民営化に伴いBPHBは子会社であるブントゥル・ポート(BPSB)を通して、2022年までの30年に亘る同港運営権を取得した。BPHBは2001年2月に株式をクアラルンプル証券取引所に上場し、完全民営化を果たし、2億RM以上の資金調達を行った。








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