日本財団 図書館


シンガポール港の概況(99年)
【1】シンガポール港の概要
 シンガポール港は、世界の主要航路の要衝に位置し、世界中の320の船社(うちコンテナ船社124)により738の港(うちコンテナ港509)と結ばれている。
 1999年には、14万1,523隻(前年比 0.4%増)、8億7,713万GT(同 2.3%増)の船舶が寄港し、総トン数において世界で最も忙しい港として14年間連続してトップの座を保ち続けている。このうち、コンテナ船が3億3,201万GTで38%を占め、次いでタンカーが2億7,337万GTで31%、バルクキャリアが1億3,042万GTで15%の順となっている。
 1999年の海上貨物取扱量は、3億2,604万トン(同 4.4%増)であった。このうちの38%は石油ターミナルで取り扱われるバルク・オイルである。また、船舶用燃料は過去最高の1,889万トン(同4.6%増)を積み込み、シンガポール港は世界最大の燃料油積込み基地としての地位も保持している。
 コンテナ取扱量は、1,594万TEUで、対前年比5.3%の伸びとなり、世界第二位であった。シンガポール港は、1990年に初めて世界一のコンテナ港になり、1992年にその座を香港に譲ったものの、毎年激しい首位争いを展開し、1998年には香港を抜いてトップの座に返り咲いたが、1999年は僅差で香港に再びその座を奪還された。
 シンガポール港では、東南アジア地域のハブ港を目指して港湾施設の整備、コンピュータシステムを用いた入出港手続き等の簡略化、港湾サポート機能(タグ、燃料・食料等の補給、船舶修理等)の充実等、顧客サービスの向上に努めてきた。この結果、同港で取り扱われるコンテナ貨物の8割程度は周辺諸国へのトランシップ(積み替え)貨物であると言われるまでになっている。一方、マレーシア、インドネシア、タイ等周辺諸国で自国の貨物を自国の港から直接目的地まで輸送しようとする動きが活発化しており、近年、マレーシアのポート・クラン港、インドネシアのタンジョン・プリオク港、タイのレム・チャバン港等におけるコンテナ取扱量の増加率はシンガポール港を上回る伸びを示すなど、域内の港との競争も激しくなってきている。
<シンガポールの港湾利用状況 (1999年実績)>
入港船舶(トン数) 8億7,712 万GT
(隻数) 14万1,523 隻
貨物取扱量 3億2,604 万トン
コンテナ取扱量 1,594 万TEU
燃料補給量 1,889 万トン
入港船社数 320 社
シンガポール港と航路を持つ港 738 港
 
<シンガポール港の入港船舶の推移>(単位:100隻/100万GT)
(拡大画面: 50 KB)
z0001_39.jpg
<シンガポール港の貨物取扱量の推移>(単位:フレート・トン)
(拡大画面: 93 KB)
z0001_40.jpg
<シンガポール港のコンテナ取扱量の推移>(単位:百万TEU)
(拡大画面: 61 KB)
z0001_41.jpg
<世界の港のコンテナ取扱量>(単位:千TEU)
順 位 港 名 ’99年 ’98年 伸び率(%)
1( 2) 香港 ※16,100 14,582 10.4
2( 1) シンガポール 15,940 15,140 5.3
3( 3) 高雄 6,985 6,271 11.4
4( 5) 釜山 6,440 5,946 8.3
5( 4) ロッテルダム 6,400 6,011 6.5
6( 6) ロングビーチ 4,408 4,098 7.6
7(10) 上海 4,210 3,066 37.3
8( 8) ロサンゼルス 3,829 3,378 13.3
9( 7) ハンブルグ 3,750 3,550 5.6
10( 9) アントワープ (ベルギー) 3,614 3,266 10.7
11(13) ニューヨーク/ニュージャージー ※2,863 2,466 16.1
12(11) ドバイ (UAE) 2,845 2,804 1.4
13(12) フェリクストウ (英国) ※2,700 2,524 7.0
13(13) 東京 ※2,700 2,169 24.5
14(21) ポート・クラン (マレーシア) 2,550 1,820 40.1
15(19) タンジョン・プリオク (インドネシア) 2,273 1,898 19.8
16(16) ジオイア・タウロ (イタリア) 2,253 2,126 6.0
17(17) 神戸 ※2,200 1,901 15.7
17(15) 横浜 ※2,200 2,091 5.2
19(22) ブレーメン/ブレーメルハーフェン(ドイツ) 2,181 1,812 20.3
20(23) マニラ ※2,104 2,690 △21.8
21(19) サン・フアン (プエルトリコ) 2,085 1,990 4.7
22(20) アルヘシーラス (スペイン) ※2,000 1,833 9.1
23(28) レム・チャバン (タイ) 1,828 1,559 17.2
24(24) コロンボ (スリランカ) 1,704 1,714 △ 0.6
25(26) オークランド (米国) 1,559 1,506 3.5
26(29) 名古屋 ※1,541 1,458 5.7
27(40) Yantian (中国) ※1,580 1,038 52.2
28(33) 青島 1,540 1,214 26.9
29(27) シアトル (米国) 1,490 1,544 △ 3.5
30(30) ル・アーブル (フランス) 1,378 1,319 4.5
 
出典: Ports,Containerisation International and Containerisation International Yearbook 2000 Data 他
注1) ※は暫定値
注2) ( )内は'98年の順位 
【2】貨物ターミナルの概要
 シンガポール港におけるバルク・オイルを除く殆どの海上貨物は、97年10月に民営化されたPSAコーポレーション(PSA Corporation Ltd;シンガポール港湾公社)が運営する5つのターミナル、及びJTC(Jurong Town Corporation;ジュロン開発公社)が運営するジュロン・ポートの合計6つのターミナルで取り扱われている。また、バルク・オイルは石油関連事業者の運営する各ターミナルで取り扱われている。シンガポール港全体の管理は、MPA(Maritime and Port Authority of Singapore;シンガポール海事港湾庁)が行っている。
 タンジョン・パガー、ケッペル、ブラニ及びパシール・パンジャン(新ターミナル)がコンテナターミナルであり、パシール・パンジャン・ワーブズ、センバワン・ワーブズ、及びジュロン・ポートが非コンテナ貨物ターミナルである。
 シンガポールはコンテナ取扱い施設を建設した東南アジアで最初の国であり、PSA(1964年設立)が1972年にイースト・ラグーン・コンテナターミナル(現在のタンジョン・パガー)の供用を開始した。ブラニ・ターミナルは、1991年に第1バースが供用開始された。現在、タンジョン・パガー、ケッペル、ブラニの3つのコンテナターミナルには、計31のコンテナバースがあり、総延長8,200メートル、95の岸壁クレーンが稼動している。
 さらに、将来のコンテナ需要に応えるために1993年8月からパシール・パンジャンで埋立工事が始まっており、タンジョン・パガー、ケッペル、ブラニを合わせた能力(16.2百万TEU)に匹敵する18百万TEUの取扱い能力を有する新たなコンテナターミナルの建設が進められている。第1期及び第2期工事により、26のコンテナバースが建設される計画であるが、工事は計画どおり進捗しており、第一期工事のうち先ず98年10月に新鋭の荷役機械を備えた4バースが稼動し、99年にはさらに2バースが完成し供用された。この新しい最先端を目指したコンテナターミナルは極力、自動化・効率運転ができるように計画されており、世界初のリモート制御のブリッジ・クレーンの導入などにより年間75万TEU/バースの取扱い量が可能となり、既存のバースと比較して約25%の能力アップが図られている。
 この21世紀を見据えたコンテナターミナルの建設計画は、30年のスパンで4期に分けて開発され、最終的には49のコンテナ・バースで年間36百万TEUを取り扱うことができるようになる。
 また、これらのターミナルに隣接したフリー・トレード・ゾーン内には、1994年に供用開始した最新の貨物集配センターであるケッペル・ディストリパーク(11万3,000平方メートル)が設置されているのをはじめ、合わせて46万2,000平方メートルに及ぶPSAコーポレーションのディストリパークがターミナルから車で15分以内の距離に設置されている。
<各コンテナ・ターミナルの概要>
  タンジョン・パガー ケッペル ブラニ パシール・パンジャン
面積 80 ha 96 ha 79 ha 84 ha
喫水 11.0〜14.8 m 9.6〜14.6 m 12.0〜15.0 m 15.0 m
バース数 ;メイン 6 3 5 6
フィーダー 2 11 4      −
岸壁クレーン 29 36 30 24
ヤードクレーン 95 117 98 ブリッジクレーン 44
軌道クレーン 15
グランド・スロット数 15,940 19,428 15,590 14,443
リーファー数 840 936 1,344 588
 
 非コンテナ貨物ターミナルのうちPSAコーポレーションが運営するパシール・パンジャン・ワーブズ及びセンバワン・ワーブズは、紙・パルプ製品、自動車、鉄鋼などをはじめ、特殊貨物を取り扱っている多目的ターミナルである。両ワーブズの概要は、合わせて、面積が56.6ha、メイン・バース数が9、コースタル・バース数が9、喫水が6.7〜11.4メートル、倉庫延べ面積が18万8,500平方メートルとなっている。
【コンテナ・ターミナルの港湾計画】
(拡大画面: 62 KB)
z0001_44.jpg
【3】港湾情報システムの概要
 シンガポール港では、ハード面の港湾設備の整備と共に、各種港湾情報システムを導入し、通関手続きのペーパーレス化を図るなどソフト面やサービス面からも港湾業務の効率化を図ってきている。
 主な港湾情報システムの概要は、以下のとおりである。
(1)PORTNET
1989年に導入されたPSA独自のシステムで、海事関係者(船会社・代理店、運送業者、海貨業者、荷主等)を対象に、バースの手配、港湾関連申請書類等の提出、荷役関連情報の確認(出入港スケジュール、コンテナ貨物の搬出入、蔵置き、船積情報等)等コンテナターミナル運営に必要な情報交換・手続きを24時間リアルタイムで可能とする。政府のEDIシステムによる貿易ネットワークであるTRADENETとの接続により、貿易関連政府機関等への通関申請手続きも容易に行える。
さらに、PSAコーポレーションはインターネットによるPORTNET-TMを開発し、1999年に全面供与した。これによって、既にパイロット・タグサービスの申込みができるようになっていた他、利用者が海外のオフィスに居ながらにして請求書等のやりとりや、下記(2)のCITOSとリンクして例えばPSAヤードにある冷凍コンテナの温度監視等も可能となった。
【TRADENET】
貿易業者、税関、TDB(貿易開発庁)等を結ぶ通関システムで、航空貨物、港湾貨物及び陸送貨物のすべての貿易手続き(輸出入貨物の通関書類の申請、審査、認可等)のペーパーレス化を可能とする。本システムの導入により、通常1〜4日要した一般的な貿易手続き書類の処理時間が15分に短縮された。
(2)CITOS(Computer Integrated Terminal Operations System)
ヤード内での効率的なコンテナ取扱い作業の計画・指示を行うPSA独自のシステムで、1990年に導入された。必要とするバース、ヤード、設備、マンパワーを計画し、ヤードの中央制御室より現場の機器類のオペレーターにリアルタイムで作業指示を行う。さらに、PSAは外国のコンテナ・ターミナル向けにCITOSのシステムをパッケージにしたCITOS-1を1997年に開発し、中国大連コンテナ・ターミナルで最初に導入されている。
(3)その他の港湾情報システム
[1]“FLOW-THROUGH”CONTAINER GATE SYSTEM
コンテナ運搬車がPSAターミナルのゲートを通過する際、TVカメラ、トランスポンダーやコンテナ番号自動識別装置等により、ペーパーレスで瞬時(約25秒)に通過することができるシステム。コンテナの積み下ろし位置も自動的にドライバーに通知される。1日に約8,000台、ピーク時には1時間に約700台を取り扱うことができる。
[2]CIMOS(Computer Integrated Marine Operations System)
パイロット、タグ、ランチクルーに港内の船舶通航情報、パイロット・タグスケジュール等をリアルタイムで提供するシステム。
[3]BOXNET
コンテナ・ターミナルと運送事業者の間の調整を行うEDIシステム。このシステムを通じ、船舶の荷役スケジュールや貨物の搬出スケジュールなどの情報が運送事業者に提供され、ターミナルに出入りする車両とコンテナ・ターミナルのスケジュールが調整され、配車の無駄が解消される。
[4]CITES(Computerized Information Telephone Enquiry Service)
港湾利用者の便のため、電話を通じたバース情報、コンテナ情報、貨物情報等の提供、輸出承認番号の更新、紹介等のサービスを可能とするシステム。
[5]CICOS(Computer Integrated Convention Operations System)
非コンテナ・ターミナルでの貨物の積み下ろし作業等の計画を作成するシステム。
【4】海外におけるターミナル共同開発プロジェクト
 PSAコーポレーションは、世界のハブ港を目指し、顧客のニーズに応えるべくサービス網を拡大するため、シンガポール港の運営等で培ってきた経験とノウハウを世界の港湾の開発・管理・運営に活用することにも力を入れており、1996年に中国・大連港のコンテナ・ターミナルの開発プロジェクトに参画したのを皮切りに、既に世界の10の港でターミナルの共同開発プロジェクトを展開している。1999年には新たにブルネイ、ポルトガル、韓国の3つの港でプロジェクトが開始された。これらのターミナルで1999年は、172万TEUのコンテナを取り扱った。
<PSAコーポレーションの海外展開プロジェクト>
国 名 港・ターミナル コンテナバース数 ターミナル容量 コンテナ取扱量(1999年)
中 国 大連コンテナターミナル 4 150万TEU 628,471 TEU
福州港 3 34万 TEU 240,500 TEU
イタリア ボルトリ・ターミナル 4 87万 TEU 495,000 TEU
ベニス・コンテナターミナル 3 30万 TEU 192,500 TEU
インド ツチコリン・コンテナターミナル 2 20万 TEU 11,000 TEU (99年12月供用開始)
ピパバフ港 1 20万 TEU (99年第1期供用開始)
イエメン アデン・コンテナターミナル 2 50万 TEU 80,000 TEU (99年3月供用開始)
ブルネイ ムアラ・コンテナターミナル 1 22万 TEU (99年 3月プロジェクト開始)
ポルトガル シネス・コンテナターミナル 3(計画) 140万TEU(計画) (99年 9月プロジェクト開始)
韓 国 仁川南港コンテナターミナル 3   (99年12月プロジェクト開始)
【5】旅客ターミナルの概要
 PSAコーポレーションが運営するシンガポール・クルーズ・センター(SCC)は、1991年にオープンした初の旅客専用ターミナルで、ワールド・トレード・センターのサイトにあり、3バースを有する国際旅客ターミナル、近海フェリーターミナル(近くのインドネシアの島々及びマレーシア航路)、及び国内フェリーターミナル(シンガポールの南の島々への航路)から成る。さらに、1995年には、近海フェリーターミナル(インドネシアのバタム島・ビンタン島及びマレーシア半島東岸への航路)として、2バースを有するタナメラ・フェリーターミナルがオープンした。これらの他に、パシール・パンジャン・フェリーターミナル、ウェストコースト・フェリーターミナル等がある。
 SCC国際旅客ターミナルの旅客数は、オープン当初の1991年に13万人であったものが、1998年は105万人となり、SCCでは1998年12月、1日当り3,000人、年間150万人の旅客を扱えるように施設を増強し、270メートル級の大型クルーズ船の受入れが可能となった。1999年のSCCの寄港隻数は1,387隻であった。
<国際・国内旅客ターミナルの旅客数>(単位:百万人)
(拡大画面: 49 KB)
z0001_46.jpg








日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION