7.2 東京湾周辺の大気環境について
東京湾周辺で観測されているSO2、NOx、NO2、NO、SPMについて、拡散計算の対象年である1999年の年平均値の整理を行った。
1. 硫黄酸化物SO2
SO2濃度は、主に海側からの風向で極大値があり、有力な港湾の周辺ではその傾向が特に著しく、港湾が風上になる場合に濃度の極大値が見られる。このことから、東京湾周辺地域では船舶が主なSO2排出源になっていると考えられる。
2. 窒素酸化物NOx、NO2、NO
NOx、NO2、NOに関しては東向きと西向きの風向に対して濃度の極大値が見られる。
NO濃度は多くの地点で西側に極大値が見られ、東京湾の西側では特にその傾向が強く、西風による濃度のピークは極端である。しかし、東京湾の東側では、東西方向に極大値があるものの、東京湾の西側ほど極端ではない。NOは比較的近傍の発生源からの影響が強いため、地点ごとの特性が強く現れているものと考えられる。
一方、NO2濃度に関しては、東京湾の西側では東向きの風向に対する濃度の極大値が比較的大きくなり、東向き・西向きの風の双方に同じような濃度の極大が現れる。一方、東京湾の東側では海側である西向きの風によってのみ濃度の極大が表れている。NO2は陸上・海上の発生源から満遍なく排出されているが、東京湾周辺では東西向きの風速が比較的小さいために、高濃度が現れやすいものと解釈することができる。
また、NOとNO2の風向別濃度比に関しては、東京湾周辺の多くの地域で南西方向からの風向でNO2/NOの比が高くなっており、地上・海上の発生減から排出されたNOが東京湾南西海上でNO2に変化した上で吹き戻されている現象があると考えられる。
3. 浮遊粒子状物質SPM
SPMの風向別濃度はNOx、NO2、NOに類似して西向きの風向によって上昇している。
4. 風向・風速
東京湾周辺では、東京湾の長軸に沿った南北方向が主風向であり、平均風速もこれらの主風向で高くなっており、東西方向の風速は比較的低くなっている。大気汚染物質の風向ごとの平均濃度が、南北方向で低く、東西方向で高いことは、南北方向と東西方向の風速の違いに主な原因があると考えられる。
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グラフ表示がないのはSO2濃度の観測を行っていない地点である。
図7.2-2 風向別平均NOx(NO+NO2)濃度 (1999年、最大:200ppb) |
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図7.2-3 風向別平均NO2濃度 (1999年、最大:60ppb) |
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