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自然と文化 第68号(ぼくの日記帳は、カメラだった。)

 事業名 観光資源の調査及び保護思想の普及高揚
 団体名 日本観光振興協会 注目度注目度5


◎共有する記録写真◎
勇崎………僕は見て思うのですけれども、だいたい戦時中の写真を見ていると大本営発表だったりだとか、政治的な視点からのものが多いんだけども、飛弾野さんが写した戦時中の写真は全然違うものを見せられたという感じでした。兵隊さんの写真は、僕も兵隊さんになったみたいな感じがしますし、また上海か南京に行く輸送船の中の写真は、昔列車で修学旅行に行った時の様子で、みんな暑くてやりきれなくボーと寝転がっているような情景でした。個人史と地域史が合わさったような写真でしょうか。家族のアルバムもその家族がしっかりしていれば、残っていくのだけども、地域の写真の中に記憶された歴史、例えば日本人はこうやって生きてきたんだ、そういうようなものが、どういうふうにしたら、ちゃんと僕たちはうまく残せていけるか問題です……。
山岸………その辺りは、飛弾野さんの写真はものすごく多くの歴史を記録していますよね。
平木………ですから、勇崎さんが言うように、いろんな地域によって、個々に生き方も違うし役割も違うんですけども、その辺をたっぷりと含んで、抱え込んでくれているのが写真ですよね。で、やっぱり写真の読み解きというのは、ちゃんとした蓄積を根拠にして、読み解きの術を僕らが共有することで、もうちょっとましな地域社会の認識だとか、歴史の認識だとかが生まれると思うのですよ。それは誰かがやっていかなきゃいけないですね。飛弾野さんのような例がいろんなところにまだ、眠っているだろうと想像します。確かに、こんなお宝はなかなかないかもしれませんけれども、本当に読み解きができるような状態に整理するのが、僕らの仕事かなと、今思っています。
 風景とか花鳥風月は別として、家庭の記念撮影にせよ、なにかの行事の写真にせよ、それなりに時代の証言性というのはあるんですよね。
 いわゆるアートを目的とした写真でも、時代の証言はあるわけだし、その辺はアートという看板を外して、すべてドキュメントで見てもいいんじゃないかと思う。これは極論なんですが。それから、プライベートというのを外して、みんな、一緒の時代に生きたのだから、同じ地球に生きたんだから、みんなで見ましょうという、そういう共有感覚を持ってもいいんじゃないかなと、それで、すべてに持てるわけではないけど、拠点だとか、意識の要ができてもいいんじゃないかなと思います。今、写真美術館が、アートを柱にしていますけど、アートは何なのかを模索し続けることも大切ですが、写真のヒューマンな機能というものをもっと追求してもいいんじゃないかなと思いました。
岡部………平木さんは、ドキュメントとアートを対立させたと思うのですが、まずこの資料という意味では、民族資料の写真など民族博物館や文明博物館に入っている所蔵品もあるわけですが、そういうものに対して、現在大きな見直しが行われています。つまりそうした写真を今まで資料としてしか見ていなかったのは間違いではないかということです。また最近アートそのもののコンセプトが変わってきて、アートが非常に資料に近くなっている。だから、アートとドキュメントという二つの面に分けないで見ることも必要になっています。彼の写真にも、分けられないところがあると思う。またポストコロニアリズムの見方をとると、かつて資料と言われてきたものは、植民地主義的なまなざしによる評価ではなかったのかという面もある。ですから彼の写真はポストコロニアルな視線を要請する面もあると思いますね。
平木………それも欲しいんですが、やっぱり蓄積拠点が欲しいですね。
勇崎………拠点的な機能としては、アーカイブスという考え方と、ライブラリーという考え方と、それとミュージアムというのがあると思うんです。それに今は、新聞社なんかがデジタルの時代によって、非常に多画像、多情報でもうひとつの流れができてきたと思うんです。例えばある程度みんなが知っている社会的なニュースには新聞社が流すと思うのですが、先ほどの山岸さんがお話されたように、縄をなう選手権は、その地域の中では大事な行事なんです。これは全国的でも世界的でもない、地域的なことを記録している画像については、カイブでもライブラリーでもないミュージアムでもないどの分野にも入らないものです。東川町は写真の町ということで、飛弾野さんの写真を何とかしようということができて、そういう意味ではすごく幸せな出来事だったというふうに思うのですね。
 町の方も展覧会をやると、例えばおばあちゃんが孫を連れてきて本当に楽しそうに、一生懸命になにか話をしている、そういうシーンを見ると、地域にとってこういう写真というものは、本当にやはり大切なことなんじゃないかと思うのですね。東川がそういうモデルをつくっていくことが望ましいです。
◎発言者◎
長野重一 (ながのしげいち) 写真家
筑紫哲也 (ちくしてつや) ジャーナリスト
山岸享子 (やまぎしここ) 写真キューレーター
平木 収 (ひらきおさむ) 写真評論家
岡部あおみ (おかべあおみ) 美術評論家
佐藤時啓 (さとうときひろ) 写真家
勇崎哲史 (ゆうざきてつし) 東川町写真の町推進企画専門委員
◎2001年10月9日録音








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更新日: 2017年12月9日

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