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3 自然巣の構造
 自然状態の巣の作りは基木的にセイヨウミツバチの場合と同じで、巣房は六角形のハニカム構造(図[11])をとり、共通の底板をもつ両面巣板である。この巣板が九ミリ前後の間隔をあけて五〜十枚ほど、天井からぶら下がる形で並ぶ。ただ全体の形は営巣空間の形にあわせて自在に変化する(図[4])。
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[4]巣板が何枚もぶらさがる巣。形は自在に変化する
 巣板は大部分が働き蜂の育児用と蜜や花粉の貯蔵用であるが、繁殖期には雄用の巣板や、女王育児用の王台(図[16])も作られる。巣全体の容積は一〇から二〇リットルで、総重量は五〜一〇キログラムくらい、最大級の巣の総重量は時として三〇キログラムを越える。
 巣の構築材料は自ら生合成したワックスで、ロウ腺から分泌される。ワックスは炭化水素のほか、高級アルコール、脂肪酸、各種のエステルなどから成る(吉田・佐々木一九九五)。疎水性が高く、腐食もしないが、強度的には十分とは言えず、幼虫が蛹化する前に吐く絹タンパクと排泄物の一部が単板の補強に役立つ。蜂が被いきれない部分の巣板は可塑性を失って劣化するが、蜂はそういう部分をかじり落とす。つまり単板は必要に応じて再構築しながら繰り返し利用される。中央天井部の再構築は困難と思われるが、常に蜜が貯められていて、ワックスの酸化を防ぎ、長期使用に耐えられるものと考えられる。ニホンミツバチはプロポリスは利用しないが、そのために巣内の抗菌環境が劣っているということはない。








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