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3 提案を実現するために
 上にしめした提案1「島原市で登録文化財100件に」、提案2「白土町を中心とした町なみを保存地区に」、提案3建築マップ「島原まんだら」の作成、を実現するためには、それなりの準備と手順が必要になる。
 提案1の登録文化財登録への作業は今すぐにもできる。というのも、建造後50年を経ており、所有者が登録する意向がある建造物であれば、所有者の意思で登録できるからである。それには所有者は、建造物の位置がわかる配置図、建造物の規模、構造および形式の要点、所見、それに建造物の所有者の証明、承諾書があればよい。このために簡単な調査が必要になるのだが、登録の作業それ自体は1件ごとに進められる。この積み重ねによって登録文化財は100に達する。
 提案2の町なみ保存地区にもっていくためには、地区内に居住している人々が、文化財を活用するまちづくりについてよく理解し、多くの人々がこのまちづくりに合意することが大切である。この文化財保護法にもとづくまちづくり、つまり、「伝統的建造物群保存地区」は、住民と行政との両者の約束事である保存計画を策定して、それにしたがって文化財を活かした特徴的なまちづくりを目指すのである。
 今回のわれわれの調査は、町なみ保存地区のための十分な調査はしていないので、今後、町なみ保存を目的とした調査を実施する必要がある。
 提案3の建築マップ作成は、アイデアが勝負であり、個人でもできる仕事である。したがって、今すぐにも取りかかることができる。上に提案している建築マップ「島原まんだら」はその1案である。これにさらに手を入れて練りあげたのもが印刷に付され、多くの方々に広く求めてもらえるものになることを期待したい。
 
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 上の3つの提案には、個人レベルのものから、地区住民レベル、さらに市をあげて取り組まなければならないレベルのものまでが含まれている。いずれにしても一つ一つ実践してゆけば、文化、文化財を活かしたまちづくりは一歩一歩進んでいく。
 一つ一つの実践とは、具体的に何をどうすればよいか。
 現代社会では、同じ地域に住む人々であっても勤め先が違い価値観が違っているのが普通である。共通目標をかかげて、みなが心を一つにして協力しあって行動することは少ない。このようななかで文化的な「まちづくり」を具体的に進めることは難しい。しかし、今回調査対象地区とした上の町の森岳商店街は、お祭りや各種のイベントを積極的にやってきた経験がある。お祭りやイベントに加えて、まず、「島原市で登録文化財を100に」を共通の目標にかかげて実践してみてはいかがであろうか。
 この共通目標をかかげ、みなが協力しあうには、登録文化財とは何かを良く理解することがまず大切である。夜なべ談義は効果的である。そしてこの共通目標を「祭り」に仕立てあげて元気をつけるのである。元気な森岳商店街であるならばそれは可能であると考える。「白土町を町なみ保存地区に」は登録文化財よりは難しい課題である。まずはやさしいほうから手掛けてみよう。
 「まちづくりは人づくりである」といわれている。目標がハッキリした実践のなかで人はお互いに刺激しあって育っていく。あたりまえのことであるが、まちは人がつくるのである。








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