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9 猪原金物店 
台帳番号67
上の町912
 
概要 明治10年、現当主猪原氏の祖父の代にこの町家に移り住み金物店を営んだ。
 敷地は南北に往来する島原街道の西側に位置し、現在金物店舗となっている建物は街道に東面して建ち、北側を上手とする。
 店舗は上手側の平入建物が1棟、下手側に同じく平入建物が1棟、この裏に妻入建物が1棟、合わせて3棟の建物をつなげてひとつにしたものである。家族の住む住宅は敷地裏側に新築する。街道に面した建物の上手下手とも切妻造桟瓦葺き平入、つし二階建で、正面には半間の下屋をおろす。下手側裏の妻入建物は入母屋造桟瓦葺きで、建物南面は半間の庇を付けこの下を速魚川が流れる。外壁は3棟とも真壁漆喰塗りであるが、後世の改造によるものである。
 店舗の間取りは、一階が上手裏側の1室のみ床板張りの座敷とし床の間・仏壇を南面させるほかは土間で商品が立ち並ぶ。二階は上手側に座敷を整えるほかは物置とする。
 建築年代は、街道に面した上手の1棟のみ棟札から万延2年建築であることがわかった。ほかの2棟の建築年代は明らかではないが、万延の建物より新しく見える。街道に面した下手の建物は和釘を使用せず、明治後期の建物と考えられる。下手裏の妻入建物は、小屋組がトラス造で二階部分も高いことから大正時代以降の建築であろう。
 
特徴 建築年代の異なる3棟の建物のうち年代が明らかになったのは万延年間で、本調査町家で2番目に古い。2階に床の間を構えた座敷をつくっておりこれが当初の仕様なのか後の改造によるものなのかを明らかにすることで、島原町家の変遷に大きな影響を及ぼす。
 また、当家の宗派は日蓮宗不受不施派で、キリスト教同様に隠れ宗教として知られ、隠れキリシタンとの関係も興味深い。
 建物脇には湧水を取り込んだ小川が流れ、飲料水としても利用でき、店舗に並ぶ金物もにぎやかで、道行く人の道草を誘う。古い建物を再生、活用し町内のシンボルとなっている。
 
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猪原金物店屋根伏図








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