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6 成果をまちづくりに活用する
 島原には、武家屋敷の町なみ、街道筋の町なみ、豊富な湧水群、そして街道周囲のまちにも、寺院が集中する地区にも、港の近くのまちにも、海辺の集落にも、湧水の水場を囲んだ集落にも、周辺の農村集落にも、多くの伝統的な建物や伝統的な姿を残す小集落が津々浦々に点在している。これらは祖先たちが築いてきた高い建築文化のあらわれであるが、そのなかには、埋もれた大いなる遺産にとどまっているものがある。これらのうち、今回は中心市街地の街道筋のまちと町家を取りあげた。この意図は島原城、武家屋敷の町なみ、湧水群などの遺産に、さらにもう一つ大いなる遺産「キリシタン弾圧の痕跡を残す町家と町なみ」を加えたかったからである。
 今回の調査を通じて、わたくしは島原の住民・市民の方々とお付き合いすることが出来た。これらのなかには、まちの活性化を一生懸命に考え、それを実行に移している方々が相当数おられることがわかった。市内の津々浦々に数多く点在するこれらの遺産を、きちんとした問題意識のもとに調査研究し、まちづくりの武器として活かしていかない手はないと考える。
 明治6年(1873)キリスト教弾圧が解禁されてからほぼ130年が経過する。現在、市民の間ではキリシタン弾圧はすでに記憶から遠のいている。しかし、建物はその記憶を今に伝えているのである。今回の調査研究は、キリシタン弾圧としめなわ、仏間の特殊なあり方がどう関わっているか検証する基礎的な資料にもなるだろう。これらのことを考慮しながら島原に多くある文化遺産自然遺産の価値をさらに再発見し、島原の発展に活かしていきたい。わたくしたちは、過去を捨て去るのではない、既成概念を捨て去り過去から学ぶのである。
 
〔注〕
 民家の編年研究は昭和30年代にすでにおこなわれており、今回の研究は方法論としては新しいことではない。しかし、九州地方で、一定の地域で編年研究を詳しくおこなった例として、青山賢信の佐賀の「くど造り」に関わるもの、このほか一定地域で詳しい調査を実施したものとして佐藤正彦によるものなどがある。
 
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歴史のまち島原からの交通
島原から長崎空港への直行バス
島原から福岡への高速バス
島原外港から大牟田三池港へ、さらに西鉄で福岡へ
島原外港から熊本へ
島原鉄道で諫早へそして長崎空港へ
島原鉄道で諫早へそしてJRで博多へ








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