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3 現地調査
 島原の民家に関してはこれまでに幾つかの調査成果がある。しかし、町家の歴史に視点をあてた調査研究はおこなわれていない。今回の町家の編年研究は歴史的調査の最初の試みである。このような現況にあるので、まず最初に、従来おこなわれた調査資料を参考にして、町家の外観を観察しながらまち中を歩いた。町なみを構成している古い町家はみな瓦葺きである。土蔵造り、平屋建てか二階建てか、主屋主体部の軒高、主体部前面に付く下屋の長さ、主体部の正面上手に張りだす小部屋の存在、塀や不浄門(路地門・中門・ゾウジ門などとも呼ばれる)の存在、二階の窓の大きさなど、時代とともに変化し建築年代に関係ありそうな形式や細部手法を注意深く探しだした。
 次に、外観にくわえて建物の間取りや構造形式を知るため、建物の内部の調査をおこなった。家々にお願いして、平面や断面などの実測図面を作成し、また写真を撮った。図面を作り写真を撮りながら建物の造り方を知るのである。ここでも、時代とともに変化し年代をあらわす構造や形式、技法などの特徴を探しだすのである。各家々を比較するためにも図面や写真はどうしても必要である。離れたところに建つ建物を直接みくらべることは出来ないのだから。また、図面の作成とともに家の方々に建物がいつ建てられたかなどのことをお聞きし、棟札や普請帳など文献資料の有無を尋ねた。棟札や普請帳などがあれば多くの場合、建築年代が確定できる。上記のような詳しい調査は、結果として14軒についておこなった。
 これらのうち、棟札が二階の梁などに打ちつけてある家が8軒あった。また、江戸時代末期の普請帳を所蔵する家が1軒あった。これら建築年代が確定する建物は、編年のさいに基準となる。建築年代が明確になる建物が多くあればあるほど、精度の高い物差ができる。精度のよい物差を用いることによって、建物や町なみの変遷を読みとる精度も高めることができる。








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