日本財団 図書館


III. 舶用機器内需予測
1. 予測の方法
(1) 予測のフレームワーク
[1] 予測対象機器
 舶用機器予測の対象品目は前掲表のとおりである。
 単位が価格の場合は、将来の価格は2001年価格とし、将来の価格変動を見込まないものとする。
 さらに、前述のように、内需の定義は「内需=生産−輸出+輸入」とする。
[2] 予測期間
 予測は短期、長期の双方を行う。具体的な予測年次は次のとおりである。
 短期:2002、2003、2004年
 長期:2005−2010年平均
(2) 予測のステップ
[1] 代表船型の設定
 新造船1隻当たりに搭載される舶用機器の数量、金額を「舶用機器搭載原単位」と呼ぶ。機器搭載原単位は船種のみならず、船型によっても異なる。そこで、船種ごとに最も代表的な船型を「代表船型」とし、それぞれ設定した。さらに、新造船建造量実績・予測値(DWTベース、ないしG/Tベース)を代表船型で割った値を「代表船型隻数」とし、隻数と原単位の積により舶用機器搭載量を算出する。このように算出される「代表船型隻数」は、実際の建造隻数とは異なることに留意する必要がある。
 なお、代表船型で算定した舶用機器の需要量はあくまでも代表船型の船舶に搭載した時の需要量であるため、後述するカバー率を利用して実際の需要量を推定するという方法を取っている。p25にもあるとおり、カバー率を利用して実際の需要量を推定する方法は、予測手法で確立された考え方であり、代表船型が現実の需要船型と一致しなくても舶用機器の需要量推計には大きな影響は与えないということが確認されている。
表:代表船型一覧
区分 船種 代表船型
外航船 タンカー 4.1万DWT
9.5万DWT
15.0万DWT
26.0万DWT
バルクキャリア 4.0万DWT
7.0万DWT
16.0万DWT
コンテナ船 1.2万DWT
4.5万DWT
その他貨物船 2.0万DWT
LPG船 4.8万DWT
LNG船 6.8万DWT
近海船 乾貨物船
 (一般貨物船)
4,000G/T
油送船
 (ケミカル船)
5,000G/T
区分 船種 代表船型
内航船 一般貨物船 199G/T
499G/T
自動車運搬船 2,999G/T
砂利運搬船 499G/T
セメント船 749G/T
4,999G/T
油送船 199G/T
499G/T
699G/T
2,999G/T
特殊タンク船 699G/T
RO/RO船 7,000G/T
コンテナ船 499G/T
フェリー 699G/T
1,500G/T
11,200G/T
曳船 150G/T
押船 120G/T
区分 船種 代表船型
漁船 イカ釣り船 19G/T
沖合底びき網 80G/T
まき網 135G/T
かつおまぐろ船 439G/T
官公庁船 317G/T
[2] 舶用機器別内需実績試算
 1999−2000年について、Σ(代表船型隻数×原単位)によって得られた舶用機器内需規模と、実際の内需規模(生産−輸出+輸入から算出)を比較し、カバー率を計算する。舶用機器の将来需要については、1999−2000年におけるカバー率平均値をそのまま活用する。
 
[3] 新造船需要予測
 新造船需要は前章の値を採用する。
 
[4] 舶用機器将来内需規模予測
 上の結果から舶用機器内需を予測する。
 計算方法は、船種・船型ごとに((代表船型隻数×原単位)/カバー率)を算出し、それらの総和によって予測値を得る。
 以上のうち、ここではカバー率、舶用機器内需予測の順序で説明する。
図:舶用機器内需予測のフレームワーク
z1023_01.jpg
注:網掛け部分が内需予測の対象
2. カバー率の算出
 舶用機器生産と新造船竣工との間には、時間差が生じると考えられる。即ち、当年度に生産された舶用機器は必ずしも当年度の新造船に全て搭載される訳ではなく、一部は次年度以降の新造船に搭載されることとなる。そこで便宜上、当年度に生産された舶用機器の内、1/2が当年度新造船に、残りは次年度新造船に搭載されると考えることにする。このように両者間にラグを導入した上で、船種・船型ごとに代表船型隻数×原単位を算出し、それらを合計すると、理論上内需実績と合致するはずである。しかしながら、業界慣行の製品定義と生産・貿易統計上の製品区分が厳密には一致しない可能性があり、また、在来船に対しても機器の増・換装需要あるいは交換需要があるため、「新造船の需要×原単位」のみではカバーできない面がある。従って、試算値と実績値の間に差異が生じることが予想される。
 次表は1995−2000年における試算値と実績値を比較したものである。カバー率(試算値/実績値)は従前の予想のとおり100%未満となっており、多くの品目で試算値が過少評価となっていることが指摘できる。そこで、過去の平均カバー率(加重平均)を算出し、将来にわたってもカバー率は一定と仮定した上で、Σ((代表船型隻数×原単位)/カバー率)により舶用機器内需を予測することとする。(試算値と実績値の差異はそのまま予測の限界を示すものではあるが、カバー率を用いた予測手法は現状では最善の方法である。)
調査対象品目分野 1995 1996 1997 1998 1999 2000 採用値 (参考)前回値
ディーゼル
機関
主機関 (500PS-) 89.6 97.4 96.3 83.5 86.8 116.6 100.9 92.3
補機関 79.6 86.5 90.0 93.0 79.3 94.0 86.7 88.7
ポンプ 40.1 44.8 43.9 39.1 46.0 66.1 54.6 43.0
電気機器 発電機 70.1 70.5 74.9 75.0 67.6 78.0 72.9 84.5
電動機 58.4 58.0 53.3 56.5 60.9 82.5 70.8 57.4
クレーン 110.1 116.3 108.0 122.4 147.5 219.9 219.9 117.9
ハッチカバー 151.6 122.0 111.6 95.4 107.9 161.1 161.1 118.9
プロペラ 固定ピッチプロペラ 89.1 73.6 95.3 75.9 78.1 85.5 82.0 83.3
可変ピッチプロペラ
(CPP)
61.7 63.3 34.3 35.2 67.6 41.3 50.7 47.3
航海用機器 航海計画・保持 122.1 202.2 139.5 138.6 - - 139.1 122.2
航行・航路監視 101.8 153.6 138.1 104.6 - - 119.2 55.1
無線機器 61.0 48.4 48.5 43.2 86.3 - 86.3 49.9
漁労用機器 28.6 23.4 24.8 33.8 42.7 47.4 44.9 37.9
機関室補機 128.9 158.8 133.4 129.2 136.6 196.8 163.9 138.6
注1:試算値は、Σ(代表船型隻数×原単位)により算出。実績値は生産−輸出+輸入により算出(一部推計値)。カバー率=試算値/実績値(%)
注2:カバー率は1999−2000年加重平均値を採用。但し、クレーン、ハッチカバーについては、近年、製品価格の下落等の変化が激しいため、直近の2000年のカバー率を採用した。また、航海計画・保持、航行・航路監視は1997−98年、無線機器は1999年のカバー率を採用した。航海計画・保持、航行・航路監視、無線機器については、採用したカバー率をベースに直近の輸入並びに内需を推計しており(前述のとおり)、直近のカバー率は意味をなさないため、「−」と表示している。
注3:一部機器のカバー率が100%から大きく乖離している理由については、[1]定義上の問題(即ち生産統計上と原単位設定上での定義の格差)、[2]原単位上の問題(単位が金額ベースのため、価格変動により生産統計と試算値の間に格差が生じる可能性がある)、[3]新造船のみならず現有船に対して増加・代替的に搭載される、が考えられる。
注4:「(参考)前回値」は前回調査(1999年度)時に使用したカバー率で、参考値として掲載した。








日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION