日本財団 図書館


2-4 宇治山田港の位置的な優位性と問題点・課題の検討、整理
(1)伊勢神宮への海からのゲイトウェイとしての位置づけ
[優位性]
宇治山田港は、古来、伊勢神宮・内宮への海の玄関口であった二見浦の隣に位置し、歴史的にも地理的にも伊勢神宮への海から拠点としての性格を有している。
 また、近年、伊勢市における観光動向の傾向は、先にもみたとおり内宮界隈と瀬田川界隈での集客力が強くなっており海岸側への展開がみられる。さらにこれら拠点と海岸までの間に点在する多くの各種資源とを結びつけていくことにより宇治山田港と各拠点のネットワーク強化の可能性を有している。
 
(2)近隣港湾に比較して高いプレジャーボート等の受入可能能力
[優位性]
 宇治山田港周辺は、津松阪港や五ヶ所港に比べ、プレジャーボート等の受入可能能力が高い。また、伊勢湾口に位置することから伊勢湾内外へのゲイトウェイとしての拠点性を有している。
[問題点・課題]
 プレジャーボート等の新たな係留・保管施設を整備しても既に放置されている舟艇の係留・保管施設への移転は順調にはすすまないのが現状である。このため、施設整備をすすめると同時に新たな施設への放置艇移転に向けた促進対策が必要である。
 
(3)集客力の高い周辺観光資源
[優位性]
 宇治山田港周辺は、伊勢神宮、伊勢戦国時代村、ミキモト真珠島などの集客力がつよく、全国的にも知名度の高い観光資源が集積しており観光地としてポテンシャルの高い地域である。これら観光資源への海からのゲイトウェイとしての拠点性を高め得る可能性を有した地域である。
[問題点・課題]
 これら伊勢市周辺に位置する観光資源と宇治山田港とのアクセスの向上をはかる必要があるとともに、係留・保管施設のより簡易な利用方法を検討する必要がある。
 
(4)豊富な海の資源を活かした海の環境学習などを展開する際の拠点としての可能性
[優位性]
 宇治山田港周辺は伊勢湾沿岸域のなかでも各種水産資源や海にまつわる歴史・文化資源などが豊富に点在している。これら資源を活用することにより、海の環境学習の拠点としての可能性を秘めている。
[問題点・課題]
 漁業関係者などとの利害調整をはかるとともに、海の利用に際してルールづくりをおこない、環境保全をはかる必要がある。
 
(5)既存施設との連携の可能性が高い
[優位性]
 民間マリーナである「ゴーリキ・マリンビレッジ」が平成12年4月に造船所跡地を利用して開業しており、民間のコンサルティング会社との連携により単なる舟艇保管施設だけでなく海をテーマとした各種事業の展開により集客をはかっている。このような先行する事業者との相互補完関係の構築をはかることによりさらなる展開の可能性がある。
 
 
【参考】ゴーリキ・マリンビレッジの活動概要
  掲載日:2001/05/25
  媒体:日刊工業新聞
 ゴーリキ(三重県伊勢市大湊町1125の10、強力修社長、0596・36・2104)が造船所跡地に4月にオープンしたマリーナやレストランなどからなる「ゴーリキマリンビレッジ」が人気を集めている。
 ボートを係留するだけでなく、ボートの貸し出しやフィッシングガイドなどマリンレジャーの支援サービスも行っており、自然を満喫できる施設として、夏休みに向け、全国から集客を図る計画だ。
 ゴーリキは造船業が主力事業だったが、造船不況で業態転換し、造船業から撤退。岸壁に面して3万平方メートルと広大な敷地の造船所跡地にこの4月、ゴーリキマリンビレッジを本格オープンした。船で20分以内に伊勢湾有数の漁場が多くあり、マリン事業には打ってつけの場所。しかし、マリン事業のノウハウがないため、自然をテーマにした事業開発のコンサルティング会社、桜自然塾(三重県伊勢市)に運営を委託している。
 ここを訪れる顧客の6割は東京、大阪、名古屋など三重県外からの団体や家族連れ。フィッシングガイドの助言を得てボートで釣りをし、魚を調理、バーベキューにして食べるのが一般的な楽しみ方。 フィッシング・バーベキューコースは大人1人5000円。
 「自然の中で1日楽しめ、食事もできるという割安感が受けている」(同)という。
 同ビレッジではこのほか、ボートを使っての上陸キャンプ、ボートの操船体験、シュノーケリング、干物づくり教室などを行うこともできる。
 ビジネスというよりも遊休地活用の意味合いが強く「お金はなるべくかけない」(強力社長)。 レストランのテーブルは船台のまくら木を再利用、レストランはテント方式にするなど低コストに徹している。このため、ボートの保管料は格安。7メートルまでのボートの保管料は年間15万円で「周辺の施設の半分程度」(同)という。今年度は1000万円を投資、マリーナの拡張を図り、保管能力を30艇と倍増する計画だ。
 
【参考】係留・保管施設整備と放置艇
  掲載日:2001/08/01
  媒体:朝日新聞
 伊勢市大湊町でプレジャーボートを預かっている「ゴーリキマリンビレッジ」が昨年4月開設され、保管船は3 1日現在で15隻になった。近くの勢田川、宇治山田港には不法係留船が200隻を超えるが、ここから移し替えられたボートは今のところゼロ。1隻も依頼がないことに、関係者は複雑な表情だ。
 マリンビレッジは、同じ敷地内で以前船を造っていた強力造船所に関連する「ゴーリキ」が開いた。同社の強力修社長は「不法係留は目に余る。受け皿をつくり、ここを海にちなんだ食と遊びの基地にしたかった」と話す。現在、預かっているのは全長7〜10メートルのボートで、所有者は伊勢をはじめ津、四日市、奈良や大阪、名古屋の人たちという。
 強力さんが以前、調べた勢田川下流、宇治山田港湾沿いに係留されたボートは260隻を超えたという。川を管理する国土交通省中部地方整備局三重工事事務所(津市)でも、河川法に違反するほか、増水時に流される心配もあるため、看板を立てて持ち主に注意を促したりしているが、これまでのところ目立った効果は出ていない。
 マリンビレッジを運営している伊勢市河崎3丁目の「桜自然塾」の大塚隆さんは「まだ、知られていないのかも知れないけど、所有者のモラルが問われていると思う。もっと利用してほしい」と話していた。








日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION