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ホスピスケアの姿勢
ピースハウスの理念
 
 ピースハウスはやすらぎの家である。ここで時を共にする人は皆それぞれの生き方を尊重する。
1. 痛みなどの心身を悩ます不快な症状が緩和され,患者と家族がその人らしく時を過ごすことができるように,患者と家族の希望する場において,全人的ホスピスケアを提供する。
2. 愛する人を失う悲しみや,その他の心身の反応は自然なことと考え,ケアを始めたときから死別後まで,患者の家族への支援を行う。
3. 患者と家族のニードに応えるために,多職種の職員とボランティアでチームを構成し,互いに協力してケアを提供する。
4. 日本の実状に即したホスピスのモデルとなるように,より良いケアの実践,研究,教育を進める。
(1998年10月改定)
 
 ホスピスケアの目的は,終末期にある患者が自ら進むべき道を選択し,生活・生命の質quality of life(QOL)を自律できるようにすること,つまり,できるかぎり人間らしく快適な生活を送れるようにすることである。具体的には日常性の回復維持であるといっても過言ではない。家にいるときと同じに,家族と共に自由に過ごせるように,できるだけ家庭的な雰囲気を醸し出す配慮,工夫が求められる。生活上の制約は最小限にとどめたい。
 しかしながら,これらの目的を達成することが金科玉条というわけではない。ケアの方向を示しているだけである。スタッフやボランティアは,患者・家族に最善と考えられることを,押し付けにならないよう,求めに応じてさりげなく提供するのがよい。
 能や,狂言,歌舞伎などで,役者の後に控えてその世話をする人を後見,後見役という。黒装束・黒頭巾を着けるので黒衣(くろご),黒子(くろこ)などともいう。その働きは役者が円滑に演技できるようにすることにある。早変わりなぞは黒衣なしにはとうてい不可能である。そうでありながら,上手な黒衣は舞台の上にいながら目立つこともなく,背景に溶け込んでしまう。
 人生という舞台の最終局面での主役は患者で,家族・友人は脇役である。スタッフ・ボランティアは黒衣あるいは縁の下の力持ちではなかろうか。
 
院長 西立野 研二








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