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ごあいさつ
 ピースハウスが開設されたのは1993年9月,私たちの財団ライフ・プランニング・センターが東京都千代田区の砂防会館内に誕生してからちょうど20年目に当たります。当財団が1973年に設立の目標として掲げたのは,日本の医療・医学・看護のパイロットプランを実験的に実践するということでした。そして最初に取り組んだのは,いまでいう“生活習慣病”にならないようにするための健康の自主管理,つまり健康教育と教育的診療でした。その後20年の財団としての活動を展開していく中で,日本にもホスピス的医療を根付かせる必要を感じ,その実現を試みました。1985年に準備室を設置し,募金活動に取り組み始めて93年に完成,開院してから本年で9年目を迎えます。
 私はかねてより,新しい事業を展開するには少なくとも10年,20年先を念頭においたビジョンを描く必要があると思っておりますが,ピースハウスについてもわが国ではじめての独立型ホスピスであるということ,そして教育研究所を併設したこともそのひとつです。
 ピースハウスの設計にあたっては,世界各地のホスピスをいくつも視察した上で,西オーストラリアのパース市にあるコテージホスピスをモデルにしました。コテージホスピスとピースハウスとは姉妹関係にあります。
 ピースハウスのある神奈川県中井町の2000坪の敷地は,湘南観光開発株式会社の大森正雄会長とあとを引き継がれた大森茂充社長に提供していただいたものです。設立してから9年,ピースハウスは所在する中井町にしっかりと根を下ろしました。利用者もそして援助して下さるボランティアも地元の方々が多く,ピースハウスは外来や往診へと診療活動を広げてきました。また,ホスピス教育研究所は,一般の方々への啓蒙活動,ケアに従事するボランティアや専門職への教育活動を積極的に展開しています。1995年に当財団の呼びかけでスタートした「アジア太平洋地域ホスピス緩和ケアネットワーク」は,本年5月に正式な団体として発足し,各国との連絡・協力も教育研究所の重要な役割となっています。
 ホスピスあるいは緩和医療という言葉が一般に知られてくるにつれ,ピースハウスの先駆的な役割もますます重くなっていることを自覚しつつ,職員とボランティア,そして外部から応援して下さるみなさまの活動の成果を本誌によってご報告いたします。
 
理事長 日野原 重明
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シンボルツリー:花水木








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