日本財団 図書館


私のボランティア 活動―その1
子どもたちの笑顔が見たくて
 山道 英樹
 
 私の住んでいるところは,新興住宅地ということもあって,近所に子どもたちがたくさんいて,外で遊んでいます。私は仕事の関係で,午後4時頃には帰宅しますので,近所の子どもたちとキャッチボールをしたり,バイクに乗せてその辺をグルグル回ったりして一緒に遊んでいます。元来子どもが好きで,「おじちゃん」といって走りよってくる子どもたちの笑顔を見ると,一日の疲れが吹き飛んでしまうくらいです。
 平成11年1月,近所の子どもたちを対象にしていた木工教室を他でもできないかと考え,神奈川県西部にある児童養護施設を訪問しました。ほかにもさまざまなボランティアの方が活動されていると先生からお聞きし,こちらの申し出は断られるかと思っていましたが,月1回の木工教室を快く受け入れてくださいました。
 児童養護施設には,幼児から18歳までの70名くらいが在籍し,地元の幼稚園や学校に通っています。私の木工教室では,そのうちの小学校4年以上4〜5名を対象に,話し合いながら簡単なものから複雑なものへと段階を踏んで教えていこうと思っていました。ところが,初日に集まってくれたのは,小学校1年から中学生まで10名もいました。うれしいやら,戸惑うやら。しかし,折角集まってくれたのですから,年齢にあったものを楽しく作ってもらうことからはじめました。
 糸鋸など機械を使う仕事は,小学校の高学年や中学生になれば少しアドバイスをするだけで,上手に動物の型や名前を切りぬいていきます。小学校低学年は,私や手伝いの先生が型を切りぬいたものに色を塗っています。今まで製作したものは,表札,椅子,整理棚,写真入れ,ポスト(施設用)などですが,皆少しずつ上達しているのが分かります。完成品は,「妹や弟にあげる」とうれしそうに話し,帰宅時に持ちかえったり,自室に飾ったりしているようです。
 よく「子どもは遊びの天才」といわれますが,現代では木に触れ,物を作るという機会が少ないのではないでしょうか。ものを作るということは,頭や手を使い,試行錯誤を繰り返しながら,少しずつ完成に近づいていくことで達成感も得られるのです。
 施設の子どもたちは,自分の意志ではなく,さまざまな家庭の事情で集団生活を強いられています。その事情を思うとき,一時でも穏やかな時を感じてもらえるようにと,教室後には4〜5名の児童を連れてファミリーレストランへ行ったり,公園で思いっきり遊んだりもしています。
 私はこのほかにもピースハウス病院で散髪ボランティアもしていますが,なぜボランティアをするのかと考えると,ホスピスにおいては心強いボランティア仲間に恵まれ,患者さんからは「サッパリした」という心からの一言がとてもうれしいからです。また児童養護施設では,子どもが「ヤマちゃん」と迎えてくれる笑顔がうれしいのです。
 今こうして生きていることの感謝の気持ち(社会や両親や妻に対して)をいつまでも持ちつづけて,少しでも長くボランティア活動を続けていきたいと思います。
z0014_01.jpg
活動中の山道さん








日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION