日本財団 図書館


天からの贈り物
−第100回(最終回)−
野村 祐之(青山学院大学講師)
 
 「いのち」は漢字で書けば「命」。でもこの字、「命令」の命でもあります。生命と命令、この両者には何か関連があるのでしょうか。
 そこで「命」という字の源をたどってみると面白いことがわかりました。もともと二つの漢字が合体してできた字だというのです。
 さてその二字とは何と何でしょうか。「命」という字をじっくりながめ直してみてください。
 そう「口」があります。そして「口」を除くと、残るのは「令」。つまり生命の命は、本来、命令の命だったということになります。
 ではその「令」という字は元々どういう意味だったのでしょうか。
 上部に「」の形があります。これは「人やものを集める」という意味で「会」や「合」にもこれが見えます。下の「卩」はお辞儀をする人の横姿。左に向かって深々と頭を下げ、湾曲した背中から腰が右の曲線で、縦の直線は肩から真直ぐに降ろした腕です。
 こうして見ると「令」の字は、一つ屋根の下に集められ、礼儀正しく深々とお辞儀をする人の姿を写していることがわかります。
 これで「令夫人」や「令嬢」の「令」の意味…おっと失礼!これは余計なお世話でした。
 「命」とは「口」で発せられた「令」のことだとわかりました。
 さて、その命を発しているのは一体、誰なのでしょうか。上役か、師か、皇帝か。いや、古代中国で最上位、究極の存在、「天」です。
 これに気づけば「天命」といういいかたも納得です。いのちは偶然の所産でも、自分の所有物でもなく、天からの授かりものであって、およそ命あるものはすべて、天の「生きよ」という「命」を帯びている。それが「生命」です。
 天から命を受け、生命授けられこの世に使わされたわれわれには、それぞれに果たすべき「使命」があるのではないでしょうか。
 それに気づき「使命感」をもって生きるとき、人は喜びに満たされ日々の生活にときめきと命の充実とを感じることができるのです。
 人には預け与えられた時があり、その生は無限ではありません。
 自分に与えられた時がどれ程のものかは、人智では計り知れず、また知り得たとしてもきっと承服しがたいでしょう。しかしそれが一人ひとりに天が授けた「寿命」というものであり、天命を受けて生まれた以上、この世を去るのもまた天命によるのです。
 早晩、誰もが「はいご苦労さん。ここまでよ」という天命の下る日を迎えることでしょう。その日がその人の「命日」というわけです。
 「命」という漢字に秘められた深い命(いのち)の理解、これは古代中国のものですが、聖書の考え方とも驚くほど共通しています。
 聖書でも、究極の存在、神の名をみだりに唱えることをはばかり、「天の父・天の国」などと「天」と呼びならわすことがあります。
 洋の東西を問わず、命は天からの授かりもの、人間の勝手で侵してはならないもの、という理解があったことがわかります。
 この命の真実は今日でも変わりなく、現代科学をしても遺伝子操作、クローンなどすでにある生命をいじくることは出来ても、まつさらに無から命を創造するなど夢にも及びません。また、人は命を抹殺し得ますが、死を取り除くことは全く叶わぬ夢のまた夢です。
 古今医学に出来ること、それは命が本来授かっている寿命を全うするお手伝いではないでしょうか。
 しばらく前にテレビで高校生が「どうして人を殺しちゃいけないの?」と質問したことがありました。命は天からの預かりものだから、そして定められた時が来たらそっくりお返しすべきものだから大切にしなければならないのです。
 そしてそれまでの時、共に支えあい助けあって、授かった命を輝かしつつ安らかに和やかに生きること、それがわたしたちに託された使命なのではないでしょうか。
 たとえどんなに小さくても命はすべて「天から贈り物」なのですから…。
 (この連載も今回で100回という節目を迎えました。足元おぼっかぬ命の旅路の繰り言におつきあい下さりつつの御同行、心より御礼申しあげます。どこかで、再びお目にかかれる時を楽しみに…。)
 
「ことば一つ一つを味わいながら読ませて頂きました」平谷邦子様ほかお便りありがとうございました。
 
8月の新入会員をご紹介いたします
一般会員 年会費4,000円
平井 妙子 松田 真奈美 沓木 孝子 椋尾 薫
学生会員 年会費3,000円
平瀬戸惠理
維持会員 年会費50,000円(LPCの活動に賛同し支えてくださる会員です)
新井 亜由美
お名前は50音順、敬称は省略させていただきました。
私の簡単料理 10月のお料理
たこと大根の梅干し煮
 明治の頃に出されたという料理本に、たこと梅干しを煮るとやわらかくなると載っていたとのことでチャレンジした料理です。
 
●材料2人分
大根 1/4本
たこの足 2本
梅干し 大きさにより2〜4個
だし汁 1 1/2カップ
A 酒 大さじ1
砂糖 小さじ1/2
みりん 大さじ1
しょうゆ 小さじ1
 
●作り方
[1]大根は乱切りにする。
[2]たこは4cm位のぶつ切りにする。
[3]鍋にだし汁、[1]、[2]、梅干しを入れ中火にかける。沸騰したらAを加え、ふたをして弱火にし50分間煮込む。
[4]好みで粉山椒をかける。
 
塩分はほとんど梅の塩分で、酸っぱ味でさっぱりとした味です。
 料理紹介 松尾 素子
 
蜩の声けたたまし子等家路
台風の過ぎたるを待ちて秋の蝉
黒澤 公夫
 
流星やいづこに在す父と母
星流れ我が来し方をふり返る
藷車道を存譲れば会釈する
杉山 いはを
z0015_01.jpg
落ち葉








日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION