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ホスピスニュース 2001.10 No.185
財団法人ライフ・プランニング・センター
ピースハウスホスピス
〒259-0151 神奈川県足柄上郡中井町井ノ口1000-1
TEL(0465)81-8900(代) FAX(0465)81-5520
「ピースハウスホスピス・セミナー」レポート
「いのち」と向き合う−生と死を教え、学ぶものとして−
 近年、緩和ケアやターミナルケアヘの関心が高まるとともに「死への準備教育」が注目され、さまざまな場での試みが行なわれています。では、教育の場における「死の教育」とは…。教える立場の教師に求められるものは…。そういう視点から、高等学校教諭を対象としたセミナーがピースハウスホスピスにて開催されました。セミナーの概要を紹介すると、「若者の生と死」と題して、心病む若者たちに焦点をあてた平山正実氏(東洋英和女学院大学大学院教授)の講演、「生と死の教育の現状」について桜内正美(東海大学付属相模高等学校教諭)の講演、そして私は「子どもや若者たちの生と死の学び、医療者の死の教育」を通して「死生観と教育」について、お話させていただきました。以下、私の講演の要旨をご紹介いたします。
 
○死生観と教育
 「2000年度は3万1,957人、交通事故死の約3.7倍」、これは自殺者の数ですが、いま自ら命をたつ人が急増し、大きな社会問題になっています。とくに、40代、50代の働き盛りの死がクローズアップされていますが、大学生など若者たちの自殺も見逃せません。では、なぜ、若者たちは死を選んだのでしょうか。その心理と背景をさぐると、心の葛藤や悩みが即、死にむすびついてしまう−自殺は決して縁遠い選択ではなくなっているのです。そういう状況をみても、生きることの意味や人のいのちの大切さなど、生と死の教えが大事でしょう。
 また、自殺者の増加にともなって、遺児たちの数も交通遺児の約4倍といわれるほど増えています。遺児や残された家族は、さまざまな思いを抱きながら、胸の内を誰にも話せず苦しんでいるケースが少なくありません。でも、そういう「親の死」という辛い体験を経て、人間の生と死、いのちを考え、学んだともいえます。このように、子どもや若者たちをとりまく「生と死」の実情をみると、「子どもに死を教えるのはかわいそう、必要ではない」というのでなく、「死の教育」を通して「いのちの教育」をすることが「生きる」ことを考えるためにも大切です。そして、そのとき、「人の生と死を教える」立場・教師自らの「人間の生と死」についての考えや姿勢が問われてくるのです。
 一方、「人の生と死を担う」立場・医療者への死の教育として、ホスピスナースの育成が本格化しています。では、ホスピス・緩和ケアの場で働く看護者たちは、どのように学んでいるのでしょうか。「患者さんの死生観を知るためには、自分の死生観がないと話が聴けない。それを現場で突きつけられる毎日です」「多くの死に接して、自分はどう生きていくかを考えさせられます。死を知って生を知るということを実感しています」。これらの現場の声からも、看護者は患者の死に戸惑いを覚え、葛藤しながら、生と死のあり方を学んでいく。そして医療者自らが死生観をもつことと同時に、生と死に対する認識が問われてくるといってもよいでしょう。
 「死」は誰も避けることができない命題であり、死をみつめることは、決してネガティブなことではありません。どのように生きていけばよいかを考えることにつながります。つまり、「死の教育」や「死生観を育む」ことは、単に「死」について教えるのではなく、「生の教育」であり「いのちの教育」なのです。いま、そういう「生と死の学び」が学校教育や家庭、医療の場でも必要です。そして、生と死を教える、担う立場自らの学びが求められているのです。
ノンフィクションライター 斉藤 弘子
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2001年度(2001年4月〜2002年3月)
8月の募金額 258万2,542円
8月の募金件数 12件
2001年度募金総額 1,292万1,859円
お振り込み先
郵便振替口座 00130-6-407939
加入者名 (財)ライフ・プランニング・センター
 ピース・ハウス募金口








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