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天からの贈り物
−第99回−
野村 祐之(青山学院大学講師)
いま,「いのち」をかんがえる
 命のありかたを真剣に受け止め,考えること,それが日本社会を健全で,夢と希望に満ちた未来のあるものに生まれ変わらせるカギとなるのではないでしょうか。
 そこで命について真正面から考えてみることにしましょう。
 い・の・ち……。なんだか不思議な響きを秘めていませんか?
 マシュマロみたいにふわっと軽くて,その真ん中にゆで卵みたいな黄身があって,さらにその真ん中には柿の種みたいな核がある。でもその核は堅い殻には覆われておらず,深海で生まれた小さな生き物の心臓のように鼓動している。そんなイメージを僕は抱くのですが,みなさんはいかがですか。
 太古以来,日本語が形作られる中で「いのち」という3文字の響きに,どんな思いと意味とが託されてきたのでしょう。1500年以上の時を超え,「いのち」という和語のタイムカプセルを開き,古代人の心根に迫ってみることにしましよう。
 まずは「いのち」の「い」からです。大和言葉の古語の「い」は,漢字を当てれば「息」のことだそうです。そう,現代でも「息吹き」と書いて「いぶき」と読みます。その「い」です。
 人が生きている。その,いちばん確かな証左は息をしていること。これは昔も今も変わりません。人も「いきもの」である以上,これは当然のことといえます。
 「生きる」と「息する」はもちろん同根,同語源の言葉です。
 さて,つぎに「いのち」の「の」ですが,これは格助詞の「の」。現代語で「僕の本」「井戸の水」というときの「〜の」と同じです。
 そして最後に「いのち」の「ち」ですが,これが何とも不思議な力を秘めた言葉なのです。
 残念なことに現代の日本語ではその深い響きがほとんど失われてしまっており,日常,気にも止めずにいるのですが,それでも全く忘れ去られたわけではなく,まるで盲腸のように現代語に痕跡を残している古代語の「ち」の世界を覗いてみることにしましよう。
 結論から先にもうせば,「ち」とは,命のもつ不思議な霊力,人やものを活かす,生命の根源から吹き出すエネルギー,とでもいったようなもののようです。
 われらのご先祖は,もしかすると弥生,縄文の昔から,そうした霊力を「ち」という響きの中に聞き取っていたかもしれません。
 闇にとどろく雷鳴に心を震わせながら古代人達は「あれは神様が鳴り響く音だ」と感じたのではないでしょうか。彼らはそれを「神鳴り=カミナリ」と呼びました。そう,歌舞伎十八番にも「なるかみ=鳴神」がありましたっけ。
 地方によっては,雷は稲を豊作にすると言い伝えられ,闇を切り裂く閃光を「稲妻」と呼びます。
 昔の人のこの直感はたいしたもので,実は稲妻が空中の窒素を電気分解し,それが田畑に降り注ぎ肥料となることが知られています。
 鳴り響く「いかづち(巌ヅ霊)」には,確かに降り注ぐ命の霊力「ち」が秘められていたのです。
 蛇の姿に只ならぬ霊力を感じたのはエデンの園以来,洋の東西を問いませんが,日本ではそれを「おろち(降ロ霊)」と呼びました。
 また,草木を育て豊饒をもたらせるのが「つち(土)」。外界とつなぎ,文物の恵みをもたらしてくれるのが「みち(道)」です。
 さらにまた,海路をゆくときには風を読み,その力を借りることが大切になります。そうした風は「こち(東風)」「はやち(疾風)」などとも呼ばれます。
 風は古代中国でも生き物の命に影響を与えると考えられ,それで風の中には「虫」が居るわけです。
 現代人の生活にもっと身近で,はっきりした形で残っている「ち」もあります。
 人体を巡り命を保つのが「ち(血)」ですし,母から子へと命を育むのが「ちち(乳)」。そうして育つ幼児が「ちのみご(乳飲み子)」です。乳を授けることはできませんが,世代の受け渡しに伝統的役割をになうのが「ちち(父)」の存在です。
 「いのち」とは「息の霊」のこと。息吹を授け,生き物を活かす,不思議な霊力のことを指す言葉なのです。
(つづく)
天からの贈り物は次号100回をもちまして最終回とさせていただきます。
7月の新入会員をご紹介いたします
医療職会員  年会費6,000円
緒方 京子     川井田 都      
一般会員  年会費4,000円
重見 ゆかり 田中 昇 松永 健治 安川 寿美江  
ご寄付いただきました
お名前は50音順,敬称は省略させていただきました。
私の簡単料理 9月のお料理
肉みそを使って
でき上がり約カップ1/2
 
●材料
牛ひき肉 100g
しょうが 1かけ
みそ 大さじ3
A 砂糖 大さじ3
大さじ1 1/2
ごま油(出来れば太白)又は植物油 小さじ2
 
●作り方
[1] しょうがはみじん切にする。
[2] 鍋にごま油を熱して[1]をさっといため,ひき肉を加えて汁けを飛ばしながらパラッとするまでいためる。Aを加えて混ぜて合わせ,みそがなじむまで軽く煮てさます。
 
〔肉みそのレタスご飯〕
 ご飯とレタス(サラダ菜)適量。一ロで頂ける手軽さが楽しい。
 洗ったレタスまたはサラダ葉にご飯を一ロ分と肉みそを適当にのせて包んで頂く。
〔茄子とレッドピーマンのいため煮〕
 茄子を5cm位に切り六ツ割に切り,レッドピーマンは細切りにして少量のごま油でいため,肉みそを適量からませる。
 あれば,パセリのみじん切を散らすと見ためにも栄養的にもよい。
 
〔きうりのスティック〕
 きうりのスティックに少量つけて頂くとさつばりとして美味しい。
肉みそを作っておくと何もない時でも本当に便利です。
冷蔵庫で5〜6日は保存できます。
料理紹介 松尾素子
 
哀惜もプラス志向に夏の雲
水中歩リハビリの日々夏聞けて
木下 陽子
キリギリス炎暑の大気震はせて
老鶯の声欲して夏盛り
黒澤 公夫
駅毎に客入れ替へて風涼し
鬼やんま駅の待合室覗く
カメラ据え風待ってゐる蓮の花
杉山 いはを
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ドイツシュツットガルトの老人ホームの庭








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