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LPクリニクだより
生活習慣改善奮闘記
その9 禁煙と私
 伊藤 勝
 
 この世に生を受けて55年になりますが,思い起こしてみると喫煙の歴史は18歳から55歳まで実に37年間,随分長い付き合いでした。
 ゴルフの後半になると疲れがひどく,自分の実力以上にスコアが悪くなるのは,なんとなく煙草のせいだとは思っていても,友人にはたったの一度も挫折することなく煙草を続けたことを自慢し,「俺はそれほど意志は弱くない」とうそぶいたものでした。ただやめようとか,やめなくてはということを一度も考えなかったことも事実です。考えてみると,それだけ世の中とか,健康とかということを無視していたのかもしれません。
 昨年の4月,ひよんなことから南アフリカ連邦へ行かなければならないことになりました。地球の反対,どこにあるのかも分からない国です。驚いたことには,飛行時間が25時間。気の遠くなるような話です。この間禁煙をしいられるわけですから,1日30本のヘビースモーカーの私にとっては,正に晴天の霹靂です。とても我慢ができないと断るつもりでしたが,そこは悲しいサラリーマン,「社命」の一言でアフリカ行きの返事をさせられました。
 そんな時,LPクリニクの井上看護士から禁煙の資料を見せられ,禁煙をすすめられました。最も印象に残ったのは,喫煙を止めることはないから,どんな時に吸っているのか,なぜ吸いたいのかを考えてみてくださいという言葉でした。
 ともかく25時間吸えないなら,これを機会に挑戦してみようかとぼんやり思い立ちました。ひょっとしたら神が与えてくれた試練かもしれないと思い始めたのです。
 しかし,人間いざとなると意地汚いものです。5月6日の出発ですから,5月5日までは煙草が吸えると最後まで吸いまくりました。切れることなく10本吸い続けて,口の中はヒリヒリ状態,まるで死刑囚のようでした。
 5月6日,キャセイ航空に乗り込み,煙草に代えてウィスキー,アルコールのおかわりです。口の中はしびれが続き,睡眠はもうろうとして,ふと気がつけばマダガスカル上空でした。アフリカは目の前です。不思議に煙草のことは考えません。何しろ周りも誰も吸っていません。10日間の旅の間,何度かつばを飲み込むことはありましたが,ついに煙草を吸うことなく成田に帰ってきました。その間,井上看護士の言った「どんな時に吸いたいか」という言葉の答えを考えていました。それは「何もすることのない時」です。旅空の下でしみじみ人間としての空しさを感じました。そして,禁煙程度のことができないわけがないではないかと思いました。また一方で,そんなに力んでもしょうがない,吸いたくなったらまた吸おうという思いもありました。それにつけても,井上看護士の適切なアドバイスには感謝をしたいと思います。そして,自分をほめるなら,がむしゃらに禁煙しないという考え方もよかったと思っています。禁煙バッチに世話になったのは,アフリカの大地で1週間,残りは日本に帰って後輩にあげました。心は晴れ晴れ,ちょっとした勝利者の気持ちです。
 私は今マラソンランナー,ゴールはありません。このまま走り続けたいと思います。
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