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天からの贈り物
−第95回−
野村 祐之 (青山学院大学講師)
地球村, 食事のマナー(3)
 
 日本は食料だけでも6割以上を外国からの輸入に頼っています。これは先進国の中でもダントツで,国際化なしでは国も命も1週間ともたず,日常生活が崩れてしまうような国家を形作ってきたということです。
 これはひとつのユニークな選択であって,決して悪いとか弱みだとは思いませんが,国際社会あっての日本なのだ,ということは肝に銘じておくべきでしょう。
 そこで問われるのは,日本が「地球村」の一員として自らを真に開いて行けるかどうかです。
 国際的であるということは,外国語を上手にあやつれる人が何人いるかではなく,一人ひとりが異文化のマナーを尊重する心を持てるかどうかにかかっています。いくら外国語がペラペラでも,相手の気持ちを理解せず,心に届かないおしゃべりは紙のように薄っぺらな,ペラペラでしかありません。相手の文化や常識,マナーヘの配慮を欠くと,時には失礼では済まされない事態になりかねません。お正月にインドネシアで起こった「味の素問題」がその典型です。
 事件の発端は,味の素の製造プロセスで豚を触媒とする製品が使われていたことがイスラム教の委員会に指摘され,9月に改善を求められたことでした。味の素はなぜか直ぐに対応せず10月,11月, 12月と経過し,1月に入るや社会的大問題に発展したのでした。
 その後,味の素は真剣に対処し,イスラム教指導者の審査を受け,商品に「お墨付き」の印を印刷して販売再開する許可を得たと2月20日付けの新聞に出ていました。
 もっとも問題解決のニュースは,新聞紙上では国際欄の片隅に小さく載っただけでしたので,よっぽど注意深い読者でなければ気づかなかったでしょう。当初は連日の大騒ぎだったのに,いつの間にか尻つぼみになって立ち消え,という日本のジャーナリズム毎度のパターンです。そんなことでは,今回の出来事から学ぶべき「地球村」のマナーを学び損ねてしまいます。そこでその辺りを少し整理しておきましょう。
 問題の前提にあったのは,豚は不浄な動物で口にするなんてとんでもないという戒律でした。同じ戒律はユダヤ教にもありますから,今回たまたまインドネシアで問題になっただけで,同じことは欧米でも起こり得るのです。
 イスラム教だ,ユダヤ教だというときにはっきり知っておかなければならないことは,これらは別々の宗教ではなく,兄弟同士だということです。これにキリスト教を加えて,僕は「団子三兄弟」と呼んでいます。三つの団子を一つにまとめている串は「天地の創造主なる唯一絶対の神」への信仰です。アラビア語版のキリスト教の聖書を見ると「神さま」は「アッラー」となっています。「アッラー」はイスラム教の独占特許ではないのです。
 「それにしてはこれらの宗教間には紛争やトラブルがよくあるじゃないか」と思われるかもしれません。あれはいわば兄弟喧嘩。残念なことに,他人なら許せることでも肉親となると我慢できないということがありがちなのです。
 「三兄弟」の中ではユダヤ教が長男です。そしてユダヤ人の歴史の中から生まれた旧約聖書が「三兄弟」共通の土台となっています。
 さてインドネシアで問題になった豚の件ですが,これは旧約聖書のレビ記11章と申命記14章に出てきます。これは命懸けで守るべき「律法(神の命令)」です。
 さあその箇所のポイントだけ省略して見れば次のようになります。「主がモーセ達に仰せられた清いものと汚れたものに関する規定」
 食べてよい動物はひずめが分かれ,反すうするもの。らくだ,岩狸,野兎はダメ。豚,猪はひずめは分かれているが反すうしないからダメ。死骸にふれてもダメ。
 海,川の魚でヒレと鱗があるものはよい。貝類,タコ,イカ,エビ,カニは鱗がないからダメ。
 鳥類で汚らわしくてダメなのはハゲワシ,タカ,トビ,カラス,コウノトリ,サギ,コウモリ(!)
 昆虫は羽と地面を跳ぶ後脚を持っていないとダメ。イナゴはいい。爬虫類は全部ダメ。
 といった具合です。ご参考までに。
(つづく)
 
3月の新入会員をご紹介いたします
一般会員 年会費 4,000円
鈴木 春野 並木 郁子 星野 キミ子  
医療職会員 年会費6,000円       医学生3,000円
倉井 由加 三澤 文代   吉松 美佐子
お名前は50音順,敬称は省略させていただきました。
私の簡単料理 5月のお料理
ガーリック,パセリ,おかかチャーハン
 
●材料2人前
ごはん 2カップ
にんにく 1かけ(縦半分に切り,芯芽をとりみじん切り)
パセリ 大さじ2〜3(みじん切り)
かつおぶし 1パック
太白ごま油 大さじ1 1/2(オリーブ油でもよい)
塩,こしょう 各少々
醤油 大さじ1
 
●作り方
[1]フライパンに植物油を熱し,にんにくをきつね色に炒め,パセリを加えてさっと炒める。
[2][1]にご飯を加えて炒め,塩,こしょうをふる。
[3][2]に鍋肌まわしで醤油を加え,少し焦がして香ばしい香りをたて,混ぜ合わせる。
[4][3]にかつおぶしを加え,さっと混ぜる。
 
とっても簡単で美味しい嫁より伝授のとっておきレシピ。
料理紹介 松尾 素子
 
 
花大根 旅立つ里の 雨上がり
春惜しむ 父子揃い立つ 由比ヶ浜
木下 陽子
 
黎明や花より蜜に群れる鳥
張戸越笹鳴きの音目覚めかな
黒澤 公夫
 
纜のきりきりと泣く春の潮
あたたかや十字刻みし墓拝む
我が影を離したがらぬ物芽かな
杉山 いはを
 
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南の島 H.A








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