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LPクリニクだより
生活習慣改善奮闘記
その7 栄養補助食品から解放されて
山田 伸子
 
 年1回LPCで健康チェックを受けはじめて,もう20年以上になります。去年11月の検査の後,日野原先生がデータをご覧になってこうたずねられました。「肝臓の数値が3倍近く上がりましたが,今何か薬を飲んでいますか」。私は栄養補給食品を10種類ほど飲み続けてけていることをお話しし,その内容を申し上げました。
 先生は目を丸くして「どうしてこんなに沢山飲んでいるのですか」と驚かれました。
 私はアメリカで分子栄養学を研究した先生の健康講座を月1回受け,血液検査の数値が標準値範囲内であっても,下限に近い場合には補給食品で補い数値を上げていくという考えに賛同して,どんどんこの補給食品を取り入れるようになりました。92年からですから,もう9年間になります。その結果として,今までスタミナがなく疲れやすかった私が,みるみる元気になりました。私は得意でもあり,補給食品のおかげと喜んでいました。ところが,この2年ぐらいは以前のような画期的なききめはあまり感じられなくなり,それどころか,次々に病にかかりました(例えば,眼底出血,激しいめまい,吐気を伴う偏頭痛,ヘルペス等々)。
 何か体の変調のきざしが感じられ,補給食品が原因ではないかと不安に思っていたちょうどその時期,日野原先生にお会いしたのです。先生は「サプリメントを取ることが悪いとはいわない。現に今はビタミンEは抗ガン作用があるという研究も出はじめている。しかしこんなに沢山とる必要はない。貴女は1カ月に5万円ぐらいはこれに費やしているでしょう」と金額をピッタリ当てられました。そしてこう続けられたのです。「食べ物だけで生きるに必要なものはとれる僕の場合,非常に忙しいので朝は野菜ジュースに植物油をスプーン1杯入れて飲むだけ。昼はビスケット2枚と紅茶。夕食だけは家でしっかり食べる。豆類を多くとるように心がけている。僕は年齢から割り出して,1日1400kcalで十分。月に2〜3回は徹夜するし,「葉っぱのフレディ」の戯曲もアメリカに行く飛行機の中で一気に書き上げた。僕はね,自分でこんなものが書ける人間だと今まで思っていなかった。今まで脳の中で眠っていたものが急に出てきた感じで,楽しく夢中で書いてしまった」。さらに「人間は自分にとって楽しいと思うことをドンドンやると脳からプラスのホルモンが出てきて元気にしてくれる。貴女も楽しいことを見付けてどんどんやってごらんなさい。きっと元気になる」。私もそういうものかも知れないと直感しました。
 
新しい自分への挑戦
 
 まず先生のアドバイス通り,栄養補給食品を一日一日,少しずつ減らすようにしました。その代わり食事に関しては今までより野菜を多くとり,魚も週3回に増やし,お米には五穀をまぜ入れて炊き,納豆,豆腐もよく食べるようにしました。
 一方,自分にとって「本当に楽しいことは何か」を探す日々が始まりました。楽しいことを探すなんてこれ以上ワクワクすることはないはずです。新聞は隅々まで注意深く目を通し,センサーを高くして面白そうな芝居,音楽会,美術館,映画,講演会,本の批評,人物等の情報を切り抜き,片っぱしから出かけて見に行きます。帰ったらどう感じたかメモをつけます。近くの区立図書館を利用して本を3冊ずつ借りて来ます。パラパラ見るだけでも楽しい本も多く,プレッシャーにならないようにします。テレビのインタビューの番組は必ず見ます。世の中にはいろんな人がさまざまなことをやっていて,つくづく感心して見てます。
 今までも楽しいことはあったはずです。でもこのように意識して積極的に楽しく生きようと試みたことはありませんでした。オリヴァー・サックスのいう「自然で意味のある行為をみつけること。それをすることが楽しく感じられる行為,意志の表現としての行為,それが行為である限り楽しく,しかも真剣で衝動的,自然発生的,音楽的,演劇的であるべきだ」(注)という文章を感激をもって理解しました。
 栄養補給食品をどんどん減らしてから2カ月半です。自分の体が変わったと思うことは三つあると思います。
[1]食事を以前より食べるようになった。
[2]柑橘類は見ただけで,すっぱそうで寒気がするほどきらいだったのに,ある日主人が食べているピンクのグレープフルーツが美味しそうに見えたので,食べてみました。夢中で丸1個食べてしまい,われながら不思議で仕方がありませんでした。それから毎日食べながら「奇跡だ」を連発しています。
[3]背中,肩,首がかたくなって困っていたのですが(実際マッサージに通っています),最近筋肉の中の繊維のようなものが軟らかくなったように思えます。漠然とですが,不思議なほど背中,首が楽です。
 体が子供のように自由に楽になりたいと自分の体の観察を注意深くはじめました。もっと楽になりたい一心でです。すると,徐々に体の感じ方が分かってきました。重い荷物を片方の手だけに持つと背中が痛む。電車でつり革にぶらさがると背骨が曲がる感覚がある。道路を歩いている時,左下りの地面,右下りの地面は不快感がある。デコボコの道のほうが体の重心を移動しながら歩けるので悪くない。目の使い方も,たとえば映画を観る時は字幕が右側に出ることを想定して,客席の中央より右側に座ります。こうすると,字を読んで映像に視線を移すとスムーズな流れになるように思うのです。
 今後私自身どのように変化するのか見当もつきませんが,精神的,肉体的に心地良ければ,次へ進める気がしています。物事を当たり前と思うのはやめようと思います。
(注)オリバー・サックス著「左足をとりもどすまで」「晶文社」
ホスピスワークショップ 終末期患者との対話 PartII
−死に行く人々からの危機的,実存的問いと援助者のあり方−
日時 2001年6月11日(月)10:00〜16:00
会場 ピースハウスホスピス教育研究所
 〒259-0151 神奈川県足柄上郡中井町井ノ口1000-1
 TEL (0465)81-8900 FAX (0465)81-5521
講師 賀来 周一先生(キリスト教カウンセリングセンター相談所長)
 
参加要項
定員 60名
対象 看護婦,保健婦,ソーシャルワーカー,その他終末期ケアに関心をお持ちの医療福祉関係者
参加費 ホスピス教育研究所会員5,000円・非会員6,000円(含む昼食代)
申込方法 ホスピス教育研究所までお問い合せ下さい。
申込期限 2001年5月31日(木)ただし,定員になり次第締め切ります。








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