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体験記
パーキンソン病の妻とともに−その1−
大井上 滋
 
 私は現在76歳,妻は73歳で,私が妻の介護をしています。妻はパーキンソン病と骨の病に悩まされています。パーキンソン病だとLPCで指摘されたのは,もう20年近く前のことで,お薬を頂いていました。それ以前も妻は58歳位から足,脚の手術などを受けていました。しかし,平成5年頃は毎週病院通いをしてはいましたが,自分で何でもできる状態でした。介護といえる状態になったのは平成6年(1994年),妻が66歳のときからです。
妻の主な病歴とその介護
−介護器具,住宅改修,公的ヘルプの変遷−
 
1回目の手術
 
 最初の大手術は背骨が曲がってきて立っていられなくなり,次いで腰掛けてもいられなくなって,寝たきりになるというギリギリのところへきて,決断しました。13時間かかりました。入院は2カ月間,慈恵第三病院でした。その後リハビリのため清瀬病院に転院して,7カ月お世話になりました。平成7年4月に帰宅し,在宅療養をはじめました。
 四つん這いで這う練習をしたり,椅子から掴まり立ちをして,二階への階段を上り下りする練習をしました。買い物車を押しながら,誰か側についていれば外も歩けました。また車の助手席に乗ることもできました。家の中の改造も考え,居室の模様替えと,廊下,階段に手摺をつけました。その頃は市の助成のことは知らなかったので全部自費でした。
 妻は少しずつよくなっていたのですが,パーキンソン病のせいか,気をつけていても,何回か転びました。5月には台所で尻餅をつき立ち上がれませんでした。6月には届け物があって玄関にでたとき,ドアに手をかけたまま倒れ,そのまま起き上がれず,私が帰宅するまで3時間くらいコンクリートの上に倒れたままの状態でいました。そのとき初めてワイヤレスのペンダントブザーを購入しました。骨折まで計4回転びました。それまでは上手に転んで,打ち身程度ですんだのですが,5回目の転倒で骨折してしまいました。
 この時期に財団法人「調布ゆうあい福祉公社」の利用会員になりました。「ゆうあい」が,もと調布市の福祉会館にあった頃,私は二度訪ねています。12月に「ゆうあい」からソーシャル・ワーカー(MSW)と看護婦が私宅にこられました。数日後, MSWは協力会員の方を連れてこられました。それから週1回,その方に来ていただくことにしました。今でいう家事手伝いの仕事を2時間お願いしました。
 
2回目の手術
 
 2度目の手術は大腿骨骨折です。入院3カ月,転院9カ月,前回同様手術は慈恵第三病院,リハビリは清瀬病院でした。また清瀬病院を退院するときは,在宅療養の体制をしっかりするようにという医師のすすめで,「ゆうあい」と市の高齢福祉課からそれぞれMSWと看護婦が病院まで行って話をつめてくださいました。退院は4月末でした。
 リハビリの理学療法士の紹介で出入りの介護用品を扱う業者に電動ベッド,車椅子,エアマット,ポータブルトイレなどを注文し,浴室のすのこも誂えました。このときは業者が市の補助金のことを知っていて手続きを教えてくれ,市からかなり補助をうけました。妻が障害者手帳(2級)をもっているということもあります。
 この入院中,寝返りができないので,褥そう(床ずれ)に悩まされ,その治療には1カ月以上かかりました。これが退院の時エアマットを購入しようと思った動機です。その後エアマットのおかげで床ずれはできなくなりました。それ以後入院の時はそれを持っていきます。
 日記を見ますと,病院入院中,協力会員の方に食事の手助けをしてもらっています。鏡を見ながら食物を口に入れるのができなかったからです。しかし病院の規則が変わって,それができなくなりました。その頃は病院通いも「ゆうあい」の車椅子をのせる車両で送迎をお願いするようになりました。調布市には福祉施設の中に「ちょうふの里」というのがあります。そこで週2回の機能訓練を送迎つきでしてもらうことにしました。また配食サービスも受けることにしました。私はまだ週3日勤めていました。これらのことができたのは,市の高齢福祉課との連絡があったからだと思います。この時期ドアの開閉が転ぶきっかけになったので,ドアを引き戸に改造しようとしました。しかしそれでは補助金が受けられないので,段差をなくすことを主にした補助申請をしました。名目も「便所入口改造」となっていました。業者の人はよく知っています。
 
第3回目の入院手術
 
 これは腸閉塞によるものでした。私はよく一歩前進二歩後退といっているのですが,やっと回復してきたと思うと,ガタッと次の事故が起こって,前以上に悪くなります。今度は集中治療室に8日も入っていました。酸素補給のため気管に穴をあけました。一般病棟に移ってからもパーキンソン病が進行し,また院内感染も起こして4カ月かかりました。それから転院した病院は人手が少なく,あまりよい介護が期待できませんでした。そこではストレッチャーでなければ移動できない状態でしたが,お願いして2カ月半で退院,帰宅しました。退院に際しては「ゆうあい」のMSWには大変お世話になり,次のようなプログラムを組んでもらいました。
・巡回訪問介護(30分)1日4回
・入浴週1回
・機能訓練週2回(ちょうふの里)
・主治医を決めて往診をしてもらうこと
 主治医は2週間に1回の往診ですが,宿題があります。朝夕の検温,排泄の回数,食事のメニューなど記録しておくことです。これは基本的には,現在も続いています。
(次号に続く)
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講習日 時間 科目 講師
5/8(火) 9:30〜12:30 在宅看護の基礎知識 石清水 由紀子
13:30〜15:30 健康増進科学 薬の用い方 小口 江美子
5/15(火) 10:00〜12:00 ホームヘルパーの職業倫理 中原 富久美
13:30〜15:30 介護事例検討(1)
高齢者介護の特徴と留意点
紅林 みつ子
5/22(火) 13:30〜16:30 障害・疾病の理解(2)
脳卒中後遺症,精神障害,脳性麻痺,精神薄弱,視覚聴覚障害
林 純子
5/24(木) 10:00〜12:00 介護者の健康管理
リラクゼーションの実習
小口 江美子
13:30〜15:30 介護事例検討(2)
障害者(児)介護の特徴と留意点
中村 敏秀
5/29(火) 9:30〜12:00 住宅・福祉用具に関する知識 片山 蘭子
5/31(木) 10:00〜12:00 家事援助の方法(1) 宇井 美代子
13:30〜16:30 介護概論 井上 千津子
6/5(火) 11:00〜12:00 介護の心構え 石清水 由紀子
13:30〜16:30 障害・疾病の理解(3)
心機能障害等の内部障害,高血圧,糖尿病
林 純子








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