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第3章 看護記録ガイドライン
 ここでは、日本看護協会の看護記録開示に関するガイドラインを基に看護記録の指針を述べた。
I.看護記録の概念
 看護記録とは、看護実践の過程を記述したものである。(日本看護協会看護業務基準)
 看護実践の一連の過程の記録は、看護職者の思考と行為を示すものである。日本看護協会が明確にしたこの看護実践は、保健婦助産婦看護婦法に規定された看護業務(療養上の世話および診療の補助)をも含み、業務記録としての意義をもつと考える。すなわち、診療録の概念に準ずるなら、「看護記録とは、適正な看護を行ったことを証明するものである」とする業務記録でもある。
 また、医療の担い手である看護婦・士が記述した看護記録は、診療記録の一部に含まれるものであり、ここでいう「看護実践」とは、看護職の責務を記述した「看護業務基準(社)日本看護協会1995」で明らかにされた下記の内容を意味し、これらの看護実践の過程が記載されたものである。
看護実践の内容
1)看護を必要とする人に身体的、構神的、社会的側面からの手助けを行う。
2)看護を必要とする人が変化によりよく適応できるように支援する。
3)看護を必要とする人を継続的に観察、判断して問題を予知し、対処する。
4)緊急事態に対する効果的な対応を行う。
5)医師の指示に基づき、医療行為を行い、その反応を観察する。
看護実践の方法
6)専門的知識に基づく判断を行う。
7)系統的アプローチを通して個別的な実践を行う。
8)看護実践の一連の過程は記録される。
9)全ての看護実践は看護職者の倫理規定に基づく。
II.看護記録の目的
 看護記録は診療記録の一部でもあり、診療情報の概念をも包含し、その目的とする。
1.患者の健康状態やそれらに対する評価および医療・ケアの提供の経過、観察結果に関する簡潔な情報を提供する。(診療情報の提供の意味)
2.患者に生じた問題およびそれに対する行為(医療行為も含む)の記録を提供する。
3.必要とされたケアの証拠、および看護職者による看護の実践と、患者の反応を提供する。
4.健康状態がどのように改善したか、あるいは悪化したかを判別する基礎となる記録を提供する。
5.患者や他のケア提供者との情報の共有や、ケアの連続性、一貫性に寄与する。
6.ケアの評価やケアの向上開発の貴重な資料とする。
7.施設がその設立要件や診療報酬上の要件を満たしている事を証明する。
8.医療事故や医療訴訟の際の法的資料とする。(事実認定)
 なお、この目的には、日本看護協会が挙げた下記の看護記録の機能をも包含する。
1)看護記録の機能
看護記録の機能としては、次の3つがあげられる。
○看護の実践を明示する。
○患者に提供するケアの根拠となる。
○医療者間および患者・医療者間の情報交換のための手段となる。
 また、次のような役割も担う。
○施設がその設立要件や診療報酬上の要件を満たしている事を証明する。
○ケアの評価やケアの向上開発の貴重な資料となる。
○医療事故や医療訴訟の際の法的資料となる。
III.看護記録の重要性
1)協働・Collaborationの時代、医療従事者間のケアを統合し、ケアの一貫性・継続性を維持する上でケアを提供するチームメンバー間のコミュニケーションおよび情報の伝達を効果的にする。
2)ケアにおける看護職者の役割・看護業務の適切な遂行を証明する。
3)患者ケアに関して、ケアの根拠を示す。
4)将来おこるかもしれない訴訟に対して、医療従事者を保護する。
IV.看護記録の構成要素
1.看護記録の枠組み
 医療、看護の特徴ならびに看護記録の概念から看護実践の一連の過程を記録の枠組みとする。診療記録として標準化されたPOSとの関連をも考慮する。
2.現在および今後を予測した記録に関する法的規定
1)保助看法・看護職者の責務と看護記録
2)健康保険法、入院基本料の規定、近い将来看護必要度
3.看護記録の構成要素
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図−3【看護記録の構成要素】
 [1]1)〜5)迄のリンケージと一貫性が課題 [2]問題点・問題リストが鍵 [3]看護計画は実行するシステムを [4]経過記録の中心 問題の経過・評価、医療行為
 1)基礎情報から問題を2)解決するべき問題を3)問題解決のための計画を4)問題の経過を5)必要な場合にこれらの要約を
 
 これらは、横軸もプロセスであり、また、縦軸もプロセスである。
4.看護記録の構成要素と概念(日本看護協会)
1)基礎情報とは
患者についての個別的な情報が記載されたもの。現在あるいはこれから必要とされるケアや患者の問題を判別するためおよびケアを計画し、実行する上での基礎となるものである。
2)問題リストとは
問題とは、看護を必要とする人が健康生活を営むうえでの心身の機能・能力を妨げるような事項である。
問題リストとは、医療保健チームメンバーが解決すべき患者の問題を列挙したものである。
3)看護計画とは
看護を必要とする人の問題を解決するための個別的なケアの計画を記載したものである。
4)経過記録とは
看護を必要とする人の問題の経過や治療・処置・ケア・看護実践とその結果を記載したものである。
5)サマリーとは
看護を必要とする人の経過・情報を簡潔にまとめたものであり、必要に応じて作成する。(継続看護に必要な情報をまとめたもの。)








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