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資料1:調査研究委員会討議要旨
第1回 国土保全等の観点からの農山漁村集落の維持・再編に関する調査研究委員会(討議要旨)
平成13年7月18日(水)
於:霞山会館霞山の間
(本年度の調査の視点について)
○限界集落については、住民の合意によっては移転というそういうシナリオの選択もあるのではないか。
○集落の存在そのものを目的化するのではなく、国土保全に結びつく形での集落の存続を考えるべきである。
 
 今現在非常に厳しい1集落当たり5戸あるいは4戸となっている限界集落については、ほとんど10年後、15年後という存続がかなり厳しくなってきている。多分そういう中では恐らくこれから集落のビジョンを語る中では、再編だけではなくて、住民の合意によっては移転という、そういうシナリオの選択もあるのではないか。(本委員会が)集落の個々の持っているビジョンの場づくりみたいな、そういうふうな一つの場になれば、去年の調査結果を踏まえて、ことし何か期待できるのではないかと考えています。
 
 国土保全という観点からの検討ですから、農林業がそこで営まれることが可能な形での集落の存続ができるのかどうか。そういうことを十分考慮しながらやらないと、集落の存在そのものが目的化してしまったのでは、国土保全には結びつかないのではないかというような気がします。
 
(集落対策に関する制度について)
○集落の維持に関する制度・施策は尽きていると考えられる一方、既存の施策を一度点検してみる必要があるのではないか整理が必要である。
 
 ある意味では集落の維持に関する制度、施策というのは、この報告書を見てもそうなのですけれども、10年間企画事業にかかわっても思いましたけれども、制度、施策とすればあらゆる手だてを尽くしているのではないかというふうに考えています。
 実はかなりの施策というものはあるのだというお話があったわけです。これは国なり県のものなり、あるいは市町村の単独のものにあると思うのですけれども、それを一度点検してみるということも必要かなという気がいたします。過剰なものがあるいはあるのかもしれませんし、今もこれは最善のお金の使い方であったかどうか疑問な点もあるという話もありましたし、もう少し使い勝手のいい形に直すようにするということができるものもあるかと思います。その上で、これが現在の政策の衣がえで十分可能なものなのか、あるいは新しく必要なものかというあたりを見極める上でも、今のいろいろななされていることについての整理が必要かなという感じがいたしました。
 
(その他)
○集落からの移転ではなく、集落への移転という、非常に興味深い議論について、これはしっかり考えてみる必要があるのではないか。
 
 ある意味では「集落への移転」という置きかえもうちではやりたいなというように思っています。集落から出るのもいいのですけれども、個々にはIターン、Uターンということでやっていますけれども、例えば都市部の若者を国の制度で一定期間その集落崩壊寸前のモデル地区を想定して、それは良識ある若者という条件もつきますけれども、派遣をしてそこで一定期間住まわせるとか、そこで今のいわゆるデカップリングに近い集落維持活動、保全活動とか地域の企画運営みたいなのにかかわるようなことでも、できるようなことをやったらおもしろいのかなというふうに思うのです。ばらばらでなくて1集落に5人とか家族連れの移転を、所得補償を何らかの形で見るようなことでもできないのかなというふうに思いました。
 
 集落への移転の話は、実はどういう方が集落の中に入っていくかということにもよると思うのですけれども、ある意味で共同体的な機能というものが不可欠だというふうに言われてきて、ある意味では私もそうだと思いますけれども、これを新しくつくることができる、あるいはそんなに無理のない範囲でつくることができるものかどうかという話になってくるだろうと思うのです。
 つまり、新しく都会なり、一足飛びにいくかどうかは別として、2段階ぐらいでその集落に定住していただくというようなケースがあったとして、従来からの行政なりのサポートがあれば、そこで新たなコミュニティというものをつくり出すことがあるいはできるのかなという感じもいたしました。これはもちろん条件にもよると思いますけれども、その意味でも、今の集落がそれなりに維持されているメカニズムといいますか、それを支えている構造といいますか、そこを冷静に見る必要があるのだろうと思うのです。
 
○小田切委員からの報告
 
高齢化率の上昇により集落協定の締結率は低下。畑作地帯では締結率低い。

 今回の直接支払制度、昨年度の実績につきまして集落ごとに、山口県は4,000集落、うち対象集落は1,700でございますが、その1,700の中で集落ごとに集落協定が結ばれたのかどうかということを調べてデータをいじっております。例えば、高齢化率が高まれば高まるほど集落協定の締結率というのは低くなってくる。
 また、畑作地帯ではなかなか締結が進んでいない。畑作の共同作業がなかなか存在しないという状況の中で、山口県の場合は主として樹園地でございますが、そういう状況の中で今回の集落協定のはなかなか入りづらい。つまり、高齢化が進むと、そして畑作地帯では集落協定というのは進みづらいということがわかる。
 
 集落における地域リーダーの存在の有無が集落協定の締結率に結びつくのではないか。

 さまざまなデータの相関をとって、正直言って大変驚いたのが集落規模が大きければ大きいほど集落締結率が高いという、これもかなりはっきりした傾向が出ております。
 そして、この解釈をどうするのかということで、いろいろな県の方々に意見を聞いている段階ですが、実はこれを大分県の県庁の職員に見せたところ直ちに反応が返ってきたのが、多分リーダーの有無がこの規模によってかなり規定的だろうということを言われました。いずれにしても、この集落の規模、それが地域リーダーの存在を媒介として集落協定の締結率に結びついているということがどうも言えそうだということです。

 集落における農家減少率にターゲットを当てたうえで集落再編のあり方を考えるべきではないか。

 もともとの零細集落はそれなりの仕組みを持っていて、集落協定の締結に至るようなそういうふうな実体があるのに対して、比較的大きな集落が離農が激化して小規模になったとき、そういうところでは集落協定がまとめづらい、そういうふうな結論が出ております。つまり端的に申し上げれば、この農家戸数の減少率が論点であった。一つの集落協定が締結できるかどうかの一つの要因であったということになります。
 つまり農家減少率が高いところで締結が進まないというふうな結論、つまり現在小規模かどうかという問題よりも、動態に着目すべきだろうというおおむね結論が出てきたと思います。
 零細集落あるいは零細化した集落、そういうものにターゲットを当てることによって、今回のこの仕事の輪郭がよりはっきりするのではないか、そのようなことを考えております。なお、このことから、したがって集落再編が、つまり複数集落での再編が必要だということには直ちに結論には至らないだろうというふうに思っております。








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