日本財団 図書館


3 水上村の集落の現状と集落対策
(1)水上村の集落の現状
[1] 大字は岩野、湯山、江代の3つ、旧村の単位と同一である。この3つの大字に22の集落(農業集落は26)が存在(岩野8集落、湯山7集落、江代7集落)、集落一っ当たりの戸数は30〜80であり、10戸未満の零細集落はない。
[2] 22の集落のうち高齢化率が50%を超える集落は、千ヶ平(57.5%)、古川(51.5%)でいずれも江代地区に所在している。
[3] 現在小学校は2(岩野、湯山)中学校は1(湯山)。江代地区にも小学校があったが子供の減少により平成13年(廃校時の児童数7名)をもって廃校になった。
[4] 集落(区)の区長は、役場との直接折衝、運動会の代表、神社の総代、隣保班の班長を集めての会議主宰(2ヶ月に1回程度、集落の中には毎週開催するところもある。)を行う。区長の会議は2ヶ月に1回程度。集落の中に、10戸程度で構成する隣保班がある。隣保班はかつての入会仲間の範囲であり、冠婚葬祭等の日常的な相互扶助、回覧板、班長は区費の徴収、祭りの負担金の徴収を行う。
[5] 耕作放棄地、管理放棄林が増加し、自然災害の発生の可能性が増加し、国土保全上問題が生じている。
 
(2)水上村の集落再編の状況
[1] これまでに消滅した集落はない。昭和45年に集落再編整備のための国の制度が出来たときに、移転の話を集落にもちかけたが、希望する集落はなかった。以後も、病気となり通院の問題等が生ずるまで中心地に下りてくる住民はいない。
[2] 高齢化率の高い千ヶ平集落と川口集落の間で移転を伴わない機能統合を図る話が出ているが、祭りの風習等の違いから実現に向けて進捗が見られない。
 
(3)水上村の集落対策
[1] 「卓越のむらづくり」をキャッチフレーズとした地域づくりを展開中。
[2] 上記は平成9年から開始しており、自然環境を活かした体験観光推進を目指している。当初は熊本県内で7町村の実施がみられたが、現在は水上村のみ。
[3] 「水の上の学校」と称し、森林体験、山の工房体験、あそび体験等を実施している。
[4] 事業費は、約2,000万円。熊本県が1/2の補助(地域振興総合補助金)。
[5] 福岡県等北九州の都市圏からの観光客が多い。最近は関西、関東からの観光客も増加しつつある。
 
(4)水上村の集落再編についての考え方
[1] 少子・高齢化等の影響から22ある集落のうち今後10年間で約1/4の集落について機能維持が困難になると予測している(村の見解)。集落の戸数が5戸未満になると集落機能の維持は困難。
[2] 集落再編整備のプライオリティが高いのは江代地区の集落(地区の高齢化率は41.6%で90歳以上の単身世帯が10戸以上ある。現在、郵便局と相談、声かけサービスを実施しているが、急病時の救急対応等を考えるといわゆる「飛び地民家」は地区の基幹集落への移転する方が望ましいと考える(村の見解)。
[3] 村としては、介護保険サービスの提供等福祉の充実、救急対応等の観点から旧村の中心地や役場周辺への移転について住民との話し合いを行ったが、「墓がある」、「農地がある」、「他の隣保に移ることは人間関係が難しい」等の理由から、住民は移転には反対している。
[4] 中山間地域等直接支払制度の適用を受けるための集落協定づくりの中で集落内で話し合いがもたれるようになり、住民に集落の課題を考える機会が生じ、住民意識の高揚につながっている。
[5] 行政としては、集落の課題についての住民の意識も高まりつつあることから、隣保班長会議、区長会議等の場を活用して、集落機能維持についての危機感、集落再編のメリットを住民に説明を行うとともに、今後住民自身の判断で集落の方向性を選択できるよう支援を行っていく必要があるとしている。
水上村における集落の状況
(平成13年4月現在)
集落 昭和35年 平成13年
戸数 総人口 戸数 総人口 うち高齢者
幸野 39 103 137 240 59 82 99 181 14 31 45
高瀬 43 109 115 224 43 53 69 122 18 15 33
覚井 37 92 112 204 53 74 93 167 15 24 39
上楠 82 211 227 438 79 101 125 226 18 41 59
宮田 44 116 116 232 76 119 132 251 30 41 71
里坊 34 92 88 180 43 57 65 122 6 15 21
川内下 52 143 155 298 43 69 73 142 20 26 46
川内上 59 156 169 325 27 31 34 65 16 16 32
岩野 計 390 1,022 1,119 2,141 423 586 690 1,276 137 209 346
馬場 79 225 254 479 61 73 94 167 18 30 48
北目 62 195 195 390 60 89 99 188 24 34 58
覚井 78 212 223 435 67 114 116 230 35 41 76
神揚 49 147 123 270 53 79 106 185 19 30 49
高澄 40 102 108 210 26 41 51 92 10 21 31
船石 38 130 118 248 37 60 53 113 18 22 40
本野 56 149 160 309 48 92 85 177 22 29 51
湯山 計 402 1,160 1,181 2,341 352 548 604 1,152 146 207 353
戸屋野 55 145 156 301 14 16 17 33 2 7 9
古川 41 126 121 247 26 33 33 66 16 18 34
古屋敷下 48 117 94 211 18 21 23 44 9 12 21
古屋敷上 39 89 100 189 22 34 26 60 5 9 14
平谷 55 168 168 336 27 25 29 54 11 15 26
千ヶ平 54 142 130 272 23 15 25 40 8 15 23
川口 45 140 137 277 28 30 38 68 11 14 25
江代 計 337 927 906 1,833 158 174 191 365 62 90 152
村計 1,129 3,109 3,206 6,315 933 1,308 1,485 2,793 345 506 851
4 多良木町の集落の現状と集落対策
(1)多良木町の集落の現状
[1] 旧村単位は多良木、黒肥地、久米の3つ。多良木に23集落、黒肥地に12集落、久米に12集落あわせて全町で47集落(行政区)が存在している。集落の人口世帯規模は比較的大きく最大の集落(多良木地区)で261戸、767人、最小の集落(多良木地区)で15戸、54人である。
[2] 小学校は現在7つで、うち分校が1、休校中1となっている。
[3] 市街地部も含め、特に山間奥地では空家が増加しつつある。
 
(槻木地区の集落の現状)
[1] 町の南部の山間にある久米地区槻木地区(別添の集落一覧では久米10区〜12区に該当)は、高齢化が顕著で地域活力もこれまでのところ停滞気味(役場付近から20km、車で40分の山間地に位置する。中途には対向不可能な狭わいな部分あり。94戸、214名)。かっては林業で豊かな地区であり、活力もあったが近年の林業不振・人口減少・高齢化(高齢化比率46%)によって地域としての活力も低下している。
[2] 平成9年度末に下槻木集落(久米12区:35戸、83人)の下槻木小学校が休校となった。下槻木集落は人口83人のうち高齢者が51人で、一人暮らしが5戸、高齢化率は60%を超え集落の維持について危機感をもっている。
 
(2)多良木町の集落再編の経緯
[1] 昭和30年の町制施行以来、集落の消滅は経験していない。
[2] 行政区の機能統合は1度実績がある(人口減少・高齢化による集落機能の低下のため、昭和50年に多良木11−1(宮ヶ野下)及び11−2(宮ヶ野上)が多良木11−1(宮ヶ野)に統合)。このケースではコミュニティ形成上の問題は発生していない。
 
(3)多良木町の集落対策の事例
(槻木小学校「教育懇話会」)
[1] 今後の集落動向に危機感を持つ40代、50代の住民を参加者として、地区の小学校長の提唱により発足。学校と地域が一つの輪となって、地域の人づくりや、学習・文化、スポーツ活動に対する情報や意見の交換などを行って、槻木地区(上・下)の活性化につなげることを目的としている。平成13年からスタートした。
・「教育懇話会」の名称で活動。事務局は、槻木小学校。
・学校と地域が一体となって地域の人づくりや学習・文化・スポーツ活動等生涯学習に関する情報や意見の交換を行うことを目的としている。
・学期1〜2回程度の情報交換会を開催している(活発な意見は出るものの地域づくりの方向性を導き出すまでには至っていない)。
・合同運動会、文化祭開催等必要に応じて実行委員会を組織。
・かつて林業で豊かな集落であっただけに集落の衰退についての危機意識が希薄であり、地域、集落のことを考える仕組みづくりとして初めての試みである。
・今までなかった、集落のあり方を考えるこうした活動が始まったことは大きな一歩であるため、地区としては、今後とも教育懇話会を継続させていきたいとの意向がある。しかしながら、現状としては学校の問題、教育の問題について話し合う場であると一般には認識されている。
・地域の将来像や方向性等を検討するためには、まず地域の実情を把握することが重要であり、その情報(地域の実情把握段階を含めて)を全地区住民が共有することが必要である。そのために教育懇話会組織を活用することも考えられる。
 
(定住促進団地の整備)
[1] 限界集落の活性化対策ではないが、定住促進団地を整備することにより、定住者確保に努めている。福岡市、関西、関東からの移住者で満たされている。この団地でひとつのコミュニティを形成しているため、他集落住民とのトラブル等は発生していない。
[2] 町への転入者はあるものの、人口減少を抑止することは困難な状況にあり、投資余力、若年労働力、地域活力の低下等は否めないことから、定住促進団地等の開発は継続的に行いつつも産業対策、福祉等の生活基盤整備を積極的に図っていく予定である。
[3] なお、団地は中心地郊外部に開発。現在5つ目、47区画を整備中である。
[4] 対象はできるだけ若者。これまでの実績から神奈川県等の関東、大阪市等の関西圏をはじめ、町内、郡内、県内から広く募集している。
 
(4)多良木町の集落再編に関する考え方
[1] 下槻木集落では既に限界に達しているので、冬は町中心部に住むいわゆる夏山冬里をとの発想もあるが、仕事がある限り集落に住み続けたいとの気持ちが強くなかなか踏み切れない。医療(通院)の問題が心配で里に下りる人もいる。
[2] 槻木地区同様に疲弊した状況となっている集落も町内にあり、また今後増加することも十分に予想される。行政区統合による機能強化等、集落再編の推進対策を早急に検討すべき時期にあると考える。
多良木町における集落の状況
(平成13年12月現在)
行政区 (参考)区内の農業集落名 世帯名
多良木1区の1 中原 44 107 117 224
多良木1区の2 植木 鶴羽 桃畑 80 149 173 322
多良木2区の1 百太郎 赤坂 友 107 190 212 402
多良木2区の2 鴨 葛沢 73 126 149 275
多良木3区の1 上原 180 220 241 461
多良木3区の2 口坪 81 86 112 198
多良木4区の1 平原 口坪 46 57 63 120
多良木4区の2 口ノ坪 上新地 63 56 71 127
多良木5区の1 上新地 中村 69 84 114 198
多良木5区の2 上迫田 土手下 111 159 165 324
多良木6区の1 土手下 上迫田 43 66 71 137
多良木6区の2 寺村 馬場田 74 98 111 209
多良木6区の3 寺村 馬場田 125 149 190 339
多良木7区の1 新村 120 145 163 308
多良木7区の1 迫田 68 87 98 185
多良木8区の1 地蔵堂 東 横馬場 青井手 261 348 419 767
多良木8区の2 古多良木 75 110 133 243
多良木9区の1 下鶴 67 92 108 200
多良木9区の2 牛島 60 94 109 203
多良木10区の1 里城 新山 永平 82 112 132 244
多良木10区の2 馬門 八日 大豊町 岩川内 104 164 183 347
多良木11区の1 宮ヶ野下 宮ヶ野上 41 77 61 138
多良木11区の2 松ケ野 15 32 22 54
黒肥地1区 茂原 蓑田 土屋 130 195 204 399
黒肥地2区 蓮花寺 溝口 72 109 130 239
黒肥地3区 大園下 若木 94 137 142 279
黒肥地東4区 里坊 上大久保 67 111 117 228
黒肥地西4区 大久保 獅原 60 95 104 199
黒肥地5区 大塚 東光寺 熊山 75 126 129 255
黒肥地6区 赤木 柿川 川原山 44 74 70 144
黒肥地7区 小林 脇 是居 186 268 307 575
黒肥地8区 小川 小椎野 小原 100 168 172 340
黒肥地東9区 丸山 増谷 永谷 52 80 93 173
黒肥地西9区 楢山 大野 53 99 91 190
黒肥地10区 千里内 才川内 柳野 58 114 121 235
久米1区 思川 前原 57 100 114 214
久米2区 古城 山渋 小田 覚井 130 173 193 366
久米3区 小田原 葛沢 58 100 115 215
久米4区 伏間田 平松 184 266 315 581
久米5区 野添 堀川 今村 213 286 367 653
久米6区 青木 園田 70 140 148 288
久米7区 六反田 田畑 中山 45 79 90 169
久米8区 馬場 畑中 宮ノ下 前村 76 120 139 259
久米9区 円八重 日代越 29 50 55 105
久米10区 平谷 永谷 28 27 39 66
久米11区 本原 湯原 26 31 34 65
久米12区 下槻木 御大師 35 43 40 83
合  計   3,931 5,799 6,546 12,345








日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION