日本財団 図書館


3 小国町の集落の現状と集落対策
(1)1995農業センサスにみる農業集落の概況
(概況と担い手の確保の状況)
 小国町には54の農業集落がある(別表参照)。
 販売農家数は、1集落当たり平均で11.1戸、専従者のいない農家数が100%を占める集落は25集落(全体の46%)あり、80%以上を占める集落が43集落(同79%)となっている。
 昭和一ケタ生まれの世代のリタイアが始まり、山形県の分析結果によると、担い手の確保の面からみて、危機的な集落が28集落(全体の51.9%)、警戒集落が10集落(同18.5%)、注意集落が7集落(同13.0%)とされている。
 
(耕作放棄の実態)
 1995農業センサスによれば、過去1年間まったく作付けをしていない田が1,697a、畑は374aあり、あわせて2,071a、これは町全体の経営耕地総面積1.041haの2.0%に相当する。これらは必ずしも耕作放棄地に該当するものではないが、従前から積み重ねられてきた耕作放棄地を加えれば、これらをはるかに上回る耕作放棄地が存在していると考えられる。
 耕作放棄には段階があるが、沢筋の農地が全面的に放棄される末期段階になると、数年後には基本的には「山が降りてくる」状態になり、水路、農道等の管理も放棄される。
 こうして耕作放棄は、国土保全上も問題上を生じさせるとともに、集落の道普請といった共同作業の負担を大きくし、また景観面から集落住民に心理的な悪影響を及ぼすなど集落の維持を図るうえで大きな問題を生じさせることとなる。
 
(2)集落の維持・活性化施策
[1]小国町ふるさとづくり総合助成事業補助金
 単一目的の零細補助金を統合し、地域住民が自分達のコミュニティのために企画した事業をバックアップする補助制度。昭和59年に制度化(当時は「むらおこし総合助成事業」としてスタート)され、平成元年からはふるさと創生事業の柱として充実、平成3年からは「ふるさとづくり総合助成事業補助金」として展開されている。補助率は2分の1以内で補助金額の上限は500万円である。
1995年農業センサス分析結果 小国町資料
(拡大画面: 270 KB)
z1021_01.jpg
 この事業を展開することにより、集落やサークル、団体等の活動の熟度を測定し、コミュニティ施策や社会教育活動などそれぞれの集落の熟度に応じた振興対策を進めている。
 手続き的には、「圏域」:いくつかの集落等からなる地域コミュニティ組織、「職域」:産業や文化等の振興を目的として組織されら住民の自主的なコミュニティ組織の2つのパターンからなる補助事業者が、あらかじめ、3年間の活動方針及び事業計画を定め町長の承認を受けることから始まる。結果やる気のある集落には助成されるが、計画を策定しない場合には助成を受け取れないこととなる。
 昭和59年度以後平成12年度までの補助件数は312件で事業費ベースで延べ669,236千円の事業が実施されている。
 
[2]小玉川コミュニティスクールの整備
 町の南部の拠点的な集落玉川の町立小玉川小中学校として義務教育機能を担うとともに、町内の他の小中学校のセカンドスクールの機能を果たす。
 また、むらづくりの拠点としてコミュニティカレッジの機能を、さらには都市住民、インドネシアの子供たちとの都市・国際交流拠点施設としての機能も果たしている。
 
[3]観光ワラビ園と仕事の場の創出
 奥地集落にある生産性の低かった山を活用し、観光ワラビ園として整備。
 町内に現在大小あわせて約30のワラビ園があり、採取期間は1年のうちわずか1ヶ月であるもののシーズンには県内外から1日に数千人の観光客が入り込み集落住民の仕事の場を創出するとともに奥地集落に緑の公民館、土のコミュニティと呼ばれる交流基地を形成している。
 
 (ワラビ園による集落の維持・活性化の事例〜樽口集落)
 樽口集落(現在10戸)は、小国町の南部、飯豊山麓の沢筋に存在するが、昭和45年当時の居住限界要移転集落の要件にすべて該当した集落であり、滝集落の次に移転するのは樽口集落だと当然のようにいわれた集落であった。
 しかし、話し合いの結果移転という選択肢をとらず居住を継続した。その後、一人の住民のアイデアによりワラビ園を設営、昭和52年に当初5haでスタートした。料金はいわゆる釣り堀方式で単位時間当たりの料金を設定した。開設当初より県内外の観光客から大変な好評を博し、3年後の昭和55年には20 haと集落の山全部に拡大、1ヶ月間に2、000人の観光客が訪れるようになり現在まで続いている。
 ワラビ園を営む以前は集落から出るという声が住民から聞かれたが、ワラビ園を始めてからは集落を出るという声は聞こえなくなったという。
 なお、既に滝集落の跡地管理を行っている集落として紹介した河原角集落においても約60haのワラビ園を運営、集落の維持・活性化が図られている。
 
(3)小国町の集落対策の考え方
・現実には再編を進めざるを得ないことはわかるが、打つ手が尽くされたのかを考えると踏み切れない。
・山が下りる現象が目に見える。
・農家の「家」としての存続の可能性を検討していかないと集落の再編整備は難しい。
・農林産物の市況変動によって、農林地の利用状況が変化し、集落の存立が左右される現象が続いている。
・農村地域政策の目玉であるグリーンツーリズムやアグリビジネスの振興が容易に進展していない。
・地形的に末端にある集落に意識的に公共施設等を集中して整備、限界集落という意識が変化してきた。
小国町:現在の移転団地(幸町団地)
z1025_01.jpg
小国町:滝集落の夏山冬里の様子[1]
z1026_01.jpg
小国町:滝集落の夏山冬里の様子[2]
z1026_02.jpg








日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION