3 新産業育成方策【具体例紹介】
黎明期にある環境産業は、市場原理の中で非常に厳しい立場である。
リサイクルの理想型といわれるマテリアルリサイクルは、再生して原料に返すという処理作業を行うが、その際に不純物の混合をゼロにするか、割合を極端に低くする必要がある。
そのためには、不要物質を除去する技術が重要な位置を占めてくるが、これらの技術は、試行錯誤の中で細かく対応していくものが多い。
本市は、大規模な製造業を中心とした企業城下町として発展した経緯から、大工場の下請けを行う中小企業も多く、工業技術を担う裾野が広がっている。
このため、様々な技術が連携しながら蓄積していることも、環境産業には必然的な要因であったと考えられる。
以下、総合環境コンビナート及び響リサイクル団地において展開されている幾つかの事業概要について説明する。
(1)西日本ペットボトルリサイクル株式会社
〈設立経緯〉
平成7年に制定された容器包装リサイクル法に基づき、平成9年4月からペットボトルのリサイクルが始まった。
消費者、市町村及び事業者の三者が共同してリサイクルに取り組むもので、最終的には事業者(特定事業者)がリサイクルする任を負っている。
そのため、特定事業者は、再商品化を日本容器包装リサイクル協会に委託しており、その指定法人から更に委託を受け、実際に再処理を行う西日本ペットボトルリサイクル株式会社が設立された。
〈業務(工程)内容〉
[1] 選別
圧縮されて搬送されてきたペットボトルの束をバラバラにして単品とする。
異物・不純物を専用装置で除去する。
[2] 粉砕・破砕
アルミキャップを取り除き、選別された透明ボトルを破砕する。
[3] 洗浄
破砕されたものを洗浄し、汚れ等を取り除き、乾燥する。
[4] 最終処理
熱で溶かしたものをチップ状に細かくカットし、再生PET樹脂ができ、リサイクルが完了する。
〈リサイクルの状況〉
●年間処理能力20,000t
●リサイクル製品の比率
フレーク(容器などに再生する最終製品):約90%、
ペレット(繊維などに再生する中間生産物):約10%
(2)西日本オートリサイクル株式会社(自動車リサイクル事業)
〈設立趣旨〉
1997年に通商産業省(当時)が使用済み自動車から発生するシュレッダーダストを低減(リサイクル率の向上)するための指標「使用済み自動車リサイクルイニシアチブ」を定め、年限によって事前に設定された具体的目標値を達成するため、自動車リサイクルに取り組んでいる。
全国的な取り組みの中において、全国で約4〜5000あると言われている自動車解体業者との差別化を図る必要があった。 そこで、製鉄所の協力会社が鉄スクラップに関するノウハウを生かし、[1]不純物なる非鉄金属が増えた車体から高品位の鉄スクラップを回収、[2]自動車のリサイクル率の向上を掲げ、西日本オートリサイクル株式会社が設立された。
〈業務(工程)内容〉
[1] 前処理
鉛、バッテリー、オイル、水を回収する。
[2] ボディーパーツ回収
事故車及び老朽車の交換部品としてリサイクル使用される車体外装パーツを回収する。
[3] 機能パーツ回収及びスクラップ回収
リサイクル使用パーツ、製鋼原料として再利用される使用パーツ、公害源になる鉛を含んだパーツを回収する。
[4] 非鉄回収
銅、ステンレス、鉛などを使用しているパーツを回収する。
[5] 車体圧縮
車体を50×60×70cmに押しつぶす(輸送効率の観点)。
〈リサイクルの状況〉
(3)北九州食品リサイクル共同組合(おから・食品残さリサイクル)
〈設立趣旨〉
食品のリサイクルについては、平成13年5月に「食品循環資源の再生利用等の促進に関する法律」が施行されるなど、食品の再利用に関する意識も広く国民の間に醸成されてきたところである。
全体機運の高まりの中で、市内の電気工事事業者と豆腐製造業者が、生おからのリサイクルを共同研究し、再利用に必要となる水分除去のための乾燥機を開発した。
その開発成果を踏まえ、平成12年8月から北九州エコタウン・実証研究エリアにおいて、廃棄処分されていたおからや焼酎かすのリサイクルについて、事業化を見据えた実証研究・技術開発が行われた。
平成13年1月に北九州食品リサイクル共同組合が設立され、平成13年10月から操業を開始した。
食品のリサイクル施設としては、北九州エコタウンで初めての施設である。
〈リサイクルの予定〉
  |
処理量
(t/年間) |
リサイクル製品 |
おから |
6,000 |
菓子、てんぷら粉の代替材料 |
焼酎カス |
1,500 |
家畜用飼料等 |
水産食品残さ |
おから |
【おからリサイクルフロー図】