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5.市内企業の活性化・企業誘致
 市内の中小製造業で組織する神戸市機械金属工業会は、1999年11月に「医療用機器開発研究会」を設けるなど、その高い技術力を医療機器などの開発に積極的に活用しようとしている。MRIでも使用できる非磁性の手術用具の開発や画像診断機器の付属装置の特許申請など、具体的な製品開発に向けた研究も始まっている。さらに2000年5月には、市、同工業会、先端医療振興財団、新産業創造研究機構、神戸市産業振興財団、キメック(株)で構成する「神戸医療機器技術実行委員会」が設置されて、医療機器メーカーや大学等との情報交換も活発化している。
 1999年度に実施した「神戸医療産業集積形成調査(ベクテル社、スタンフォード・リサーチ・インスティチュート他に委託)」では、米国の成功クラスターの事例に基づき算出した結果として、本構想による神戸への経済波及効果は、[1]約20年後に市内に115社の企業進出、[2]約18,000人の雇用、[3]約3,300億円の生産効果、をもたらすと予測されているが、実際、医療関連企業等の進出は活発で、16社が進出済みあるいは進出を決定しているほか、現在、20数社の企業から進出の意向をいただいている。(2002年1月20日現在)
医療関連企業等の進出状況
企業名 業種 備考 進出先
メディカルインフォ - マティックス(旧クインタイルズ) 臨床研究支援 世界最大級の治験支援会社。本社は米国・ノースカロライナ州。 キメックセンタービル
国際診断病理センター 病理診断 検体より迅速に病状を診断するNPO。ハーバード大学とも連携。 キメックセンタービル
エムズサイエンス 創薬ベンチャー ウィルスベクターを用いたガン遺伝子治療法の開発、新規薬剤開発のベンチャー。 KIBC第1期
オステオジェネシス 骨再生ベンチャー 骨再生法の実用化を目指すベンチャー。名古屋大学上田先生の研究成果の実用化。 KIBC第1期
アレックス・ジャパン 製薬企業向けソフトウェア開発 フランス系製薬企業向けコンサルティング、トレーニング、及びソフトウェア提供。 KIBC第1期
日本ベクトン・ディッキンソン 医療検査機器・試薬 培養機器・検査機器、医療器具等の輸入製造・販売。本社は米国・ニュージャージー州。フロサイトメーター(細胞解析装置)の世界のリーディングカンパニー。 H14.4先端医療センター研究棟レンタルラボ入居予定
バイオリサーチ バイオべンチャー 主に皮膚疾患の遺伝子治療、放射線治療の研究開発等を行なうベンチャー。 KIBC第1期
ベイ バイオサイエンス バイオ研究用試薬・機器の開発、製造、販売 ライフサイエンス研究領域で使用される試薬・機器等の開発、製造、輸入販売。 KIBC第1期
日本バイオカルタ バイオ研究用試薬の輸入販売 研究者の情報収集支援・情報交換のサイトを運営。バイオカルタ社(米)100%出資。 KIBC第1期
新日本科学臨床薬理研究所 臨床研究支援 SMOを中心とする臨床研究支援及び医療機関へのCRCの派遣並びに臨床薬理試験、臨床試験の受託。 キメックセンタービル
シーシーティー 臨床研究支援 医療機関のCRC及び臨床開発における治験モニターの教育・研修 キメックセンタービル
ワークデーターバンク 医療・バイオ研究職の人材派遣 バイオメディカル、再生医療等の分野の研究職・技能職の人材派遣、人材紹介事業 キメックセンタービル
ビーブリッジ バイオ試薬・機器販売 先端的バイオ研究用試薬・機器の販売・コンサルティング及び日米共同研究の仲介事業 キメックセンタービル
プロジェクトフロンティアジャパン 医療産業開発に関する業務等 バージニア大学特許財団が保有する知的所有権の移転、都市開発・インフラ開発に関するプランニング キメックセンタービル
イーピーリンク 臨床試験支援 元中国人留学生が起業。関西支社を移転。パソナと提携。上海・中国にも拠点。 キメックセンタービル
アイビーテック 医療機器開発支援 医療機器の研究開発やトレーニング等を動物実験により技術支援する企業 キメックセンタービル
この他、現在仮契約及び交渉中20数社

[神戸国際ビジネスセンター]
 先端医療センターの南側には、外国・外資系企業や医療関連企業等に対して、オフィス、WAM(Warehouse:倉庫、Assembly:組み立て、Manufacturing:製造)スペース、研究開発用のラボ等を賃貸する「神戸国際ビジネスセンター」(1・2期計延床約2万m2)の整備が進められている。企業進出も順調で、2001年7月にオープンした第1期はほぼ満室で、第2期も2002年6月完成予定である。
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神戸国際ビジネスセンター(第1期棟)
[ポートアイランド第2期における優遇措置]
 ポートアイランド第2期を「神戸起業ゾーン」に指定し、賃料補助や固定資産税減免等の優遇措置を実施するとともに、新制度として、2001年度から2005年度までの期間限定で、普通借地、定期借地制度に加え、賃料の減額(傾斜減額)を盛り込んだ賃貸借制度や、土地譲渡代金の長期分割納入制度を導入し、これらを積極的にPRして企業誘致活動を展開している。
 これらの優遇措置を具体的に挙げると以下のとおりである。
(1)神戸起業ゾーン条例等による優遇措置
[1]税関係
 ・固定資産税・都市計画税:3年間1/2を控除
 ・不動産取得税:取得時1/2を控除
[2]補助関係
 ・進出調査費
 国内企業:補助率3/4、限度額300万円
 外国企業:補助率11/12、限度額550万円
 ・オフィス賃料補助
 補助額:2,500円/m2・月、期間:3年間
 限度額:500万円/年・1社

(2)賃貸借制度
[1]定期借地制度(借地借家法第24条による事業用借地 ※地上権の設定はない)
 ・期間:10〜20年
 ・権利金:なし
 ・賃貸料:約450円(m2あたり月額)
 ・保証金:借地期間に応じて、月額賃貸料の12〜18ヶ月
[2]普通借地制度
 ・期間:30年
 ・権利金:分譲価格の25%
 ・賃貸料:約270円(m2あたり月額)
 ・保証金:月額賃貸料の6ヶ月分
[3]賃貸料の減額(傾斜減額)制度 進出する場合の施設の建設期間等に配慮し、次のとおり賃借料を減額する。
 ・減額期間:貸付開始日から4年間
 ・減額率:1年目→4/5、2年目→3/5、3年目→2/5、4年目→1/5

(3)土地譲渡代金の長期分割納入制度
 分譲の場合にも新たに次の制度を導入した。土地譲渡代金の一部納入で、土地の引渡し(所有権の移転)が可能となる。 (分譲価格はm2あたり214,000円)
 ・分割回数:10回の均等払い(契約締結時の即納金を含む)
 ・分割納入額:各回とも土地譲渡代金の10%
 ・延納利息:公定歩合の利率を適用(平成13年4月1日現在0.25%)

[神戸バイオメディカルファンド等]
 2000年9月に先端医療振興財団に20億円の「研究開発支援基金」を創設、2001年1月には、国内でも数例しかないバイオ関連のベンチャーキャピタルである「神戸バイオメディカルファンド」を地元金融機関と共同で創設する(2001年9月現在、民間企業も含め23団体出資総額13.1億円)など、幅広く進出企業に対する支援策の充実にも努めている。
(1)研究開発支援基金
[1]出捐額 20億円
[2]設立趣旨
 先端医療振興財団の活動を通じて、医薬品、医療機器、再生医療等の先端医療の技術開発への支援とともに、医療関連の起業支援、人材育成及び市内企業の参入促進など新事業創出への支援を行い、医療サービス水準の向上、医療関連産業の集積を図る。
[3]運用方法
 先端医療振興財団で行う研究開発事業への支援、研究開発成果の産業化の促進、研究開発に資する公益的事業等への支援など弾力的な運用を行う。
<基金の運用例>
ア)財団の研究開発事業への支援
 ・世界的水準の研究者の確保、公的受託研究・民間企業との共同研究への支援 →知的所有権等の商業化による収益確保を目指す。
イ)研究開発成果の産業化の促進
 ・財団との共同開発による医療機器、医薬品、治療方法等にかかる実用化支援 →共同研究企業への融資等、バイオベンチャーファンドヘの拠出
ウ)その他公益的事業への支援
 ・人材育成のためのトレーニングセンター、臨床研究データセンター、情報ネットワーク整備システム等への支援

(2)神戸バイオ・メディカルファンド
[1]目的
 神戸医療産業都市構想における、バイオベンチャー企業誘致への支援スキームの中核として、投資事業有限責任組合(注)によるファンド組成を行う。 (注)投資事業有限責任組合は、出資額以上の債務を負担するリスクのある民法上の任意組合と異なり、有限責任組合員のリスクは出資額の範囲内に限定される。
[2]投資対象
 投資対象は医療産業分野に特化し、バイオ・医療・介護・健康を投資対象とする。 具体的には、神戸市が誘致を計画するバイオ・医療関連VB企業のほか、再生医療・先端医療関連の全国的なバイオ関連企業を対象とする。
[3]概要
 ・設立年月日  平成13年1月29日
 ・出資金総額  8億円で設立、現在13.1億円
 ・出資申込単位  1口1000万円単位
 ・出資期間  10年間(2年間の延長可)








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