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6 京都起業家学校
 (1)前記の京都市地域プラットフォーム事業の一つと位置付けている取組に「京都起業家学校」がある。
これは、京都の産学公挙げて起業家を育成するシステムであり、ベンチャー企業目利き委員会と同じく、前記の京都市産業振興ビジョンで提唱された取組である。ASTEMが京都市の補助(地域プラットフォーム事業として国がその2分の1を補助)を受けて推進母体となっており、財団法人大学コンソーシアム京都(京都市と大学関係機関とが共同で設立した公益法人。京都市が基本財産の50%を出えん)に委託して実施しているもので、同財団が事務局を務めている。
 京都起業家学校は、平成12年9月に開校し、堀場雅夫堀場製作所会長が校長を務めている。約半年間に渡るプログラムが組まれており、このプログラムは、全体として起業に当たって必要な経営知識の習得を目指すものである。
 受講対象者は、明確なビジネスアイディアを保有している者で、1、2年内に京都市内での起業・創業を考えているものとしている。年齢、性別、職歴などは、一切問われない。
 第2期である平成13年度については、初年度のプログラムに改良を加え、次のようになっている。

 経営・ITスキルアップ講習(オプション。3日間)
  ↓
 入校式・基調講演
 分野別セミナー
  ↓
 ビジネスプラン作成講習(8回)
 アントレプレナー経営講座(7回)
  ↓
 起業・創業のための個別指導
  ↓
 修了式
  ↓
 修了生への支援(融資制度の適用・修了生ネットワーク(OB・OG会)など)

 経営・ITスキルアップ講習は、オプションであるが、起業に必要と思われるIT研修を行うものである。
 入校式は、平成13年度の場合、8月5日に行われた。
 ビジネスプラン作成講習では、実際にビジネスプランを作成する。アントレプレナー経営講座では、経営知識を学ぶ。
 起業・創業のための個別指導では、各受講者が「京都起業家学校アドバイザリーグループ」の講師に経営指導、技術指導などを受け、問題を解決していくこととしている。
このアドバイザリーグループは、京都起業家学校を支援するアドバイザーの総称であり、五つのグループから成っている。第1グループは地域プラットフォーム支援機関(ASTEM)、企業、第2グループは大学(研究者・研究室)、第3グループは京都市(工業試験場、染織試験場など)、第4グループは専門家(コンサルタント、弁護士、税理士、弁理士など)、第5グループは資金調達サポート機関(VC、エンジェルなど)で構成されている。アドバイザーは、100機関300名に及んでいる。
 約半年間のプログラムを修了すると、修了式が行われる。全プログラムの3分の2以上の出席と、ビジネスプランの作成・提出が修了の要件とされている。
 修了後の支援としては、「新事業育成支援融資制度」を用意している。これは、京都起業家学校の修了者で、市内で新たに事業を開始する具体的な事業計画を有するものを融資対象としており、融資限度額1,000万円で、融資利率年2.0%、融資期間は運転資金5年以内、設備資金7年以内の無担保、無保証融資である。その他の支援としては、修了生ネットワークヘの参加などがある。

 (2)平成12年度の第1期生は、40名程度募集したところ、160名の応募があり、書類選考の結果、63名が受講することとなった。男女比は、男性8割、女性2割で、年齢については、20代及び30代が6割を占めた。第1期は、53名が修了した。
 平成13年度は、第2期生40名を募集したところ、46名が応募し、事業プランの書類選考及び面接の結果、40名が入校した。やはり20代及び30代で6割を占めるものの、最年少は何と16歳の高校生、最高齢は72歳の自営業という幅の広さである。学生・大学院生は、3割を占めている。京都市内からが6割、市外からが4割となっている。男女比は、女性がわずか4名で、1割に過ぎない。やはり現実社会において男女の置かれた創業環境にはまだ大きな差があると推測される。
 受講料は、63,000円(学生・大学院生は、その半額)である。ただし、前記の経営&ITスキルアップ講習は、オプションプログラムであるため、受講希望者は、別途10,500円の受講料が必要である。

 (3)京都起業家学校の取組は、まだ始まったばかりである。第1期生の応募の多さ(163名)に比べ、今期(第2期生)は、募集のハードルを高くしたこともあり、46名の応募にとどまった。今後、まだどれだけのニーズがあるのか、また、学生などの中からどれだけ新しいニーズが生まれてくるのか予測し切れないが、大学の講義や単なる講演会とは違った実務的なニーズの充足に徹した試みであり、既に第1期生の中から10名弱が実際の起業化に着手している。
今後、受講生の中から、起業家学校で得た知識や人のつながりを生かして、大きく飛躍する起業家が続々と生まれることが期待できるのではないかと考える。








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