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新事業・新産業の創出について
 名古屋市総務局企画部企画課長
 入倉 憲二
1 はじめに
 名古屋の人々は、ものづくりの歴史の中で、生活文化に根をおろした産業を育んできた。産業技術の蓄積は、江戸時代にからくり人形と和時計という職人の技の粋を集めた傑作を生み出すとともに、明治時代以降に近代産業に転用された。
 まず、江戸時代の綿織物業を継承する繊維産業の隆盛は、豊田佐吉による自動織機の発明などにより織機工業の発展を促し、その中から自動車産業が生まれた。また、古くからの陶磁器産地である瀬戸や常滑などで蓄積された技術を基に近代窯業が発展し、これがファインセラミックスにつながった。さらに、木曽の杉や檜などの材木の集積地であったことから、建具、家具、仏壇・仏具などの生産が盛んとなり、これらは、時計、鉄道車両、合板、楽器などの近代工業に発展し、その中から航空機産業が生まれた。また、和時計の技術は、からくりの技術に引き継がれ、工作機械など産業用機械製造業の基礎となり、これらは産業用ロボットヘと発展している。
 こうして、名古屋を中心とする圏域は自動車、精密機器、電子機器、航空宇宙やファインセラミックスなどの先端的な産業・技術が集積した「世界的なレベルの産業技術中枢圏域」といわれるようになった。
 現在、名古屋大都市圏は、東京圏、大阪圏とともに日本における3大経済圏のひとつを形成しており、総面積、人口、県内総生産などで、おおむね全国の約1割を占めている。特に都道府県別の製造品出荷額等において、愛知県の全国比は11.3パーセントで、全国第1位であり、製造業を中心とした生産機能の強さが突出している。
 また、これまでのものづくりを支えてきた道路や港湾などの整備された産業基盤についても、国際・広域物流機能をより一層高めるため、名古屋環状2号線や第二東名・名神高速道路の整備、名古屋港の航路拡幅・増深、中部国際空港の建設などが進められている。
 今後は、このようなものづくりの厚い集積をふまえ、情報通信技術との融合を進める中でさらなる高度化をはかり、21世紀に対応した産業技術を確立することが求められている。
3大都市圏の主要経済指標
  全国 名古屋圏 東京圏
対全国比(%)
大阪圏
対全国比(%)
  対全国比(%)
総面積
 (平成12年・km2)
377,864 21,530 5.7 3.6 4.9
人口
 (平成12年・千人)
126,919 11,008 8.7 26.3 14.5
県内総生産
 (平成10年・億円)
4,980,169 463,271 9.3 30.7 14.8
  第1次産業 71,179 5,345 7.5 8.4 4.0
第2次産業 1,597,515 192,435 12.0 26.6 13.8
第3次産業 3,513,121 280,703 8.0 33.6 15.5
県民所得
 (平成10年・億円)
3,925,750 366,403 9.3 30.5 14.9
製造品出荷額等
 (平成11年・億円)
2,914,496 455,922 15.6 22.1 13.6








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