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7.今後の展望と新たな展開
 最近になって、ITアベニューを取り巻く環境にも、以下に掲げるような本構想推進にとって追い風となるような変化が見られてきている。前述したように、仙台ITアベニュー構想は、企業の自然集積を活用した政策型の集積促進策であることから、他の集積地と同じアプローチ以外にも、このようなアドバンテージを活用し、IT企業の集積を加速し、産業クラスター形成に結びつけていくための独自の施策が必要となる。
 そのためには、他の集積地には見られないような高速回線の整備といったIT企業立地のための基盤整備や、コーディネーターとなる人材や支援団体の育成、中小企業支援センターや仙台ソフトウェアセンターといった支援機関と連携し、IT関連企業の新たな事業分野の開拓に対する支援策などのソフト事業といった、政策型特有の支援環境整備を行っていくことが今後必要となると思われる。
 また、新たに設置される交流拠点を中心に、IT関連企業と既存産業との出会いの場を創出することにより、IT需要の発掘や既存産業のIT化の推進、新たなビジネスモデルの創出を図ることや、産学官連携を推進する中でIT産業と大学等の連携を深めていくことや、JAVAなど最先端のIT技術を身につけた高度なIT人材を養成していくことが必要であると考えられる。 

●「みやぎマルチメディア・コンプレックス構想」(MMC構想)
 地域におけるIT革命の推進力とするとともに、東日本における発展の原動力として貢献していくため、情報通信インフラの整備に加え、人的基盤の強化などに関する施策を一連のプロジェクトとして取りまとめ、県、市、経済団体、民間企業の強い連携の下で、他地域に先駆けた強烈な取り組みとして打ち出していく戦略的プロジェクト。[1]東日本の情報通信ハブの形成、[2]21世紀の東北経済の牽引力となるIT関連産業及び高度IT技術者の集積、[3]IT企業・技術者の集積及びインフラ整備による県内産業構造の変革、[4]IT環境の充実による全県的ITバリアフリー社会の実現の4つの目標を掲げ、グローバル・インターネット・エクスチェンジ(IX)の立地、インターネット・データ・センター(iDC)やアプリケーション・サービス・プロバイダー(ASP)の集積と活用促進、電子認証基盤の整備、高度IT人材育成・支援センターの整備、ベンチャー支援インキュベーターの集積などの施策からなり、これらの施策を有機的かつ迅速に立ち上げることにより、「ブロードバンド時代のITプラットフォーム」の形成を進めることとしている。仙台エリアを構想重点地区と想定しており、その中でも特に仙台駅北部地区、仙台駅東地区をIT産業振興のための「IT特区」として位置づけていることから、ITアベニュー構想とも連動するプロジェクトとなっている。 

●「(仮称)フィンランド健康福祉センター」プロジェクト
 平成13年11月に、フィンランド共和国との間で、「フィンランド型の高齢者福祉施設」と、「フィンランド企業と地元企業を中心とする国内企業との共同研究施設」から構成されるフィンランドの国家プロジェクトである「(仮称)フィンランド健康福祉センター」の仙台市内への建設について、基本合意に達した。本プロジェクトは、産学官連携を基本コンセプトとしており、今後、IT先進国であるフィンランド企業と、仙台市を中心とした国内企業とのビジネスマッチングを支援し、産学官連携によりITを活用した福祉機器の国際共同研究開発を進めていくこととなっており、東北大学などを始めとする工学系の技術力とともに、東口に集積するIT関連産業の力にも大きな期待が寄せられており、この分野でも新たな展開を検討しているところである。

●ベンチャー投資機関の設立
 情報通信を専門とする東北大学の名誉教授らが中心となり、新たに設立された地元発のベンチャーキャピタル。同社は6億円の基金をもとに東北の有望なベンチャー企業に対して投資を行うこととしており、東北最大の基金(ファンド)となる予定である。同社では、ITアベニューの底上げを事業展開の一部として予定している。 

●無線LAN環境の整備
 大手家電メーカーが、ITアベニューの企業集積に着目し、ITアベニュー地区のインテリジェントビルを中心に、無線によるインターネット高速接続サービスを既に行っている。これにより面倒なビル内配線工事なしに、高速にインターネットに接続できる環境整備を進めている。さらに、東北総合通信局では、インターネットなど情報通信の高度化に向け、無線LANの調査研究会を設けることとし、本年5月には、ITアベニュー地区において公共スペースやホテルに無線LANの基地局を設置するなどして、実証実験を進めることとしている。ノートパソコンにLANカードを差し込むことにより、 10Mビットでネットに接続できる環境を整備し、ITベンチャーなどを対象にモニターを募集することになっている。この他にも、民間事業者において、無線LANサービスを提供する構想が進んでおり、ITアベニュー地区は、無線LANのホット・スポットとなりつつある。








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