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6.構想推進にあたっての課題
●IT関連企業の多様性と希薄な相互連携
 前述のように、ITアベニューと言っても、そこに集積している企業は多種多様であり、そこで求められている支援施策の内容も様々なものである。これに対し、これまでの仙台市におけるIT産業の支援施策やその体制は、新産業創出や中小企業支援といった従来型の枠組みで構成されており、こうした多様な支援ニーズに十分対応できるものにはなっていない。
 仙台ITアベニュー構想の推進にあたっては、こうした多様さを踏まえ、様々な支援ニーズに対応できるようなきめ細かい支援の仕組みづくりがまず求められる。
 相互連携の希薄さに対しては、交流拠点を中心としてIT関連事業者間のネットワークの構築を進めるほか、「フォレスト・アレー」のような東北全体におけるネット系ベンチャー企業の交流活動を進めている団体との交流・連携を進めることも必要となってくると思われる。既に、ITアベニュー地区でもネット系企業を中心に共同で自主セミナーの開催を行うなどの企業間の連携の動きも見られ、ホームページやメーリングリストの開設も始まっている。
 しかしながら、ITアベニュー地区の多数を占める受託開発型のIT企業群に関しては、系列ごとの下請間での連携以外の横の連携はほとんど見られていない。これらの企業は、お互いに競争相手にもなり得る関係であることから、連携を後込みすることもあると推測されるが、事業の拡大のためには、しがらみに縛られず、新たなビジネスの可能性に向けて他の企業と積極的な連携を進めていく必要がある。その一つの可能性として、IT化が遅れている地元商店街等と連携し、商店街のIT化の推進や、ITを活用した新たなビジネスの開拓などに向けた努力も心要となってくると思われる。 

●仙台ITアベニューを支える人材の育成
 仙台市には東北大学、県立宮城大学、東北工業大学など国公私立大学と、コンピューター技術者養成のための専門学校が多数存在する。しかしほとんどの卒業生が首都圏などの大手メーカなどに流出している。地元就職の意向は強いものの、仙台地域には魅力ある就職先がないために、首部圏の企業に就職しているのが実態である。その一方で、地域の企業では慢性的にIT技術者が不足しているのが実態である。
 東北には会津大学や東北芸術工科大学などの新しいタイプの大学もあり、仙台市に隣接する県立宮城大学も含めてネットやコンテンツ関連企業を中心に地元で新規創業する卒業生が多数出現している。ITアベニュー構想の推進にあたっては、このような技術者の地元定着の促進や、技術者の地域における新規創業を支援していくとともに、企業が必要とする高度な技術者の養成を行い、地元企業に対して供給していくことも必要である。 








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