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4 都市づくりと連携した産業政策
(1)東京の未利用地の現状
 経済のサービス化の進展に伴い、我が国は産業構造の転換に直面している。通商産業省の「大都市地方自治体に対する工場跡地に関するアンケート調査」(1997年)によると、1985年以降の10年間で、全国で約1,900ha、首都圏で約900haの工場跡地が発生した。また、東京都区部の低未利用地は、1996年で約5800haで、そのうち都心4区は370haである(図9)。今後も産業構造の転換により、大規模工場の閉鎖に伴う新たな低未利用地の増加が見込まれる。
 産業の活力を促す観点からは、工場跡地等の低未利用地を有効に活用し、良好な都市空間を形成していくことが必要である。
図9 都心4区及び区部全体における低末利用地の推移   出典:東京都
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(2)職住近接の都市づくりの推進
 わが国では20世紀後半の急激な都市化の進行により、郊外スプロール、長時間通勤、道路混雑が進み、一方、都心及びその周辺においては人口の空洞化の諸問題が生じた。
 都心及び周辺区(10区)の職住比は、ニューヨークなどの大都市に比べて非常に高く、職住のバランスを欠いている(図10)。このため都心にあっても夜間はゴーストタウンとなるような地区もあり、既成市街地の活力や魅力を乏しくさせている。
図10 職住比の比較   出典:東京都
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 今後は、都市基盤整備の促進などにより土地の有効利用を図り、民間を主体とした良好な住宅ストックの形成による都心居住を推進し、便利で多様な魅力にあふれる都市型コミュニティの再生を図る必要がある。
 
(3)都市づくりと連携した新たな産業集積の形成
 東京は、都市の中に多様な産業を擁することが、都市の活力を支える強みとなってきた。しかし近年では、新たな事業所の開業率が廃業率を下回るなど産業の新陳代謝機能の低下が懸念されている(図3)。これに対応し、都市づくりと産業政策との連携を強化することで、産業構造の変化に適切に対応しつつ、世界に通用する高い技術力を備えた新しいリーディング産業を育成する政策を推進しなければならない。
図11 ソフト系IT産業の都道府県別集積(事業所数と構成比)   出典:国土交通省
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 特に、東京は、次世代のリーディング産業として成長が期待できるI T関連産業の集積が進んでいることから、大都市の知的集積を活かした新たな産業活力を創造することは、東京の都市づくりの戦略的課題である(図11)。このため都市づくりにあっては、地区計画を変更するなど、都市計画諸制度を活用して情報関連産業の集積を誘導する必要がある。また光ファイバーの敷設により、高速で信頼性の高い情報・通信ネットワークの整備を促進することが不可欠である。 このように、東京では新たな産業活力を創出するため、都市づくりとの連携による産業集積の形成に取り組むことが求められる。 
 また、産業立地を促し魅力ある都市づくりをすすめるためには、その整備手法について、民間のアイディア等の積極的な活用を図りながら、公共と民間が互いに協力・協調して進める必要がある。このため企業や住民組織など民間セクターの意欲やノウハウに基づき、まちづくりを積極的に推進していかなければならない。








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