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2 新産業の育成と行政の新たな役割
(1)これまでの産業政策
 都市は産業の成長とともに人が集まり成立するもので、産業政策と都市づくりは一体的に考えられてきた。高度経済成長の基礎ができる1960年代までの都市づくりにあっては、工業団地、産業道路等の大規模な産業基盤整備が行われてきた。1966年から東京都区部では、工場数が一貫して減少するが、これは工業等制限法(1959年施行)の効果とみられる。
 高度成長期から1990年代は、工業からサービス産業に軸足が移り、業務・商業機能や交通インフラ整備に重点を置いた都市づくりが行われた。産業政策では中小企業の保護・育成に重点を置く政策がとられたが、都市づくりとの連携は必ずしも充分なものではなかった。
 右肩上がりの経済成長時代が終わると、東京の魅力を高め、成長が期待される環境、情報・通信等のリーディング産業を中心に、創業支援等のソフト面に配慮して産業政策の重点が置かれるようになってきた。
(2)創業・起業を阻む要因と行政の産業支援
 創業者の目からみた東京は、「交通の便が良く、業務活動上便利」など国内外から集まる企業や人々によって活発な経済活動が営まれ、情報が集中する魅力ある都市である。しかし反面、建物の賃貸借コスト、賃金、交通コストが高いなど、立地環境にやや難点があると映っている(図4)。
 また、開業にあたっては、開業資金、経営ノウハウ及び仕入先や販売先の確保が大きな課題であることがわかる(図5)。
図4 東京立地のメリット、デメリット(99年度)   出典:東京都
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(3)民間の潜在力を引き出す産業政策と行政の役割
 東京の産業政策にあっては、中小企業が自ら経営革新を図り、また意欲ある企業や起業家が東京にビジネスチャンスを求めて集まれる環境を整備することが求められている。すなわち高い潜在力を持つ「人」(教育水準、人材育成)、「物」(技術、土地)、「金」(民間資金、制度融資)を結びつけ、また大学や企業のネットワーク化を進めることで技術やノウハウの有効な活用を図るなど多様な施策が必要である。 これらの課題に対応し、東京都では、創業・ベンチャー企業に対して、次のような支援を行っている。
図5 開業時に苦労した点(全国99年度)
出典:国民生活金融公庫総合研究所
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表 東京都の創業・ベンチャー企業への主な支援
  支援策
資金面 創業支援融資、創業助成事業、東京都投資事業有限責任組合の設立
技術面 産学公連携事業など
経営面 TOKYO起業塾、新産業育成総合支援事業、マーケティング道場
場の提供 創業支援施設の賃貸
 
平成13年版東京都中小企業経営白書(製造業編)より作成








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