底質評価における検討課題への対応・見解(案) 参考事例集
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参考事例 |
参考-1:オランダの例 |
(国レベルの過去10年の浚渫土砂データの見直しと新しい浚渫物評価枠組みの検討) オランダにおける新しい浚渫物評価枠組みの検討は1998年より実施された。検討ステップは以下のとおり。 1. 過去10年における化学分析データの見直し:多くの化学物質濃度は低下しており、一部の物質(有機塩素系農薬等)に関する近年の分析結果は定量下限値未満であった。追加分析も実施した結果、多くの港湾の堆積物ではTBT濃度が上昇しており、クレゾール等の化合物や地殻元素については特に問題なしと判断された。(多くの堆積物は汚染されていないか多少汚染されている程度であり、10〜20%の堆積物が高濃度の重金属、PCB、TBTを含んでいたか、バイオアッセイで高い毒性反応を示した。) 2. 浚渫物の毒性評価検討のため、浚渫物に関するバイオアッセイ標準手法の開発・検証が行われた。最終的に、4種のバイオアッセイがルーチンワークに適しているとして採用された。 3. 1999〜2000年にかけて多くの港湾及び参照地域でモニタリングプログラムを実施し、浚渫物に対して化学試験、TBT調査、並びに4種のバイオアッセイを行った。 4. 最終段階において、浚渫物の新しい評価区分に従って定量化を行う意思決定サポートシステム(コンピューターシステム)を作成した。このコンピューターシステムにより、浚渫物の汚染の程度や毒性、浚渫土量等の情報、底質に係る基準等が統合され、新しい区分に分類される。(注:詳細内容についての記述は出典資料中になし) 新枠組みの実施や発効時期についての政府レベルの方針は、2001年末に出される予定である。
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(ロッテルダム港における影響シナリオの作成)
ロッテルダム港港湾区域からの浚渫土砂処分地点の新規選定にあたり、総合的な環境アセスメント (Integrated Environmental Effect Assessment) を実施し、5つの異なるシナリオについて検討。これらの検討結果により想定された環境影響と、事前調査結果に基づき、5ヵ年のモニタリング計画を作成。モニタリングにあたっては、下記の具体的な仮説が想定されている。 1. 処分地点としての使用開始から1年以内は、投棄地点から1〜5kmの範囲におけるマクロベントス群集は投棄による著しい影響を受ける 2. 処分地点としての使用開始から1年以内は、投棄地点から1〜5kmの範囲において化学物質と生物圏内の汚染物質の濃度は上昇 3. 処分地点としての使用開始から1年以内は、投棄地点から2km以内の範囲におけるカレイ・ヒラメ類及びヒトデ類は生物学的影響(生態毒性的)を受ける また、古い投棄地点においても、以下の仮説に基づきモニタリングが行われた。 1. マクロベントス群集の再形成には4年かかる。 2. 生物圏及び堆積物中の化学物質濃度の復活(以前の状態に戻るまで)には2年かかる。 3. ヒトデ類とカレイ・ヒラメ類の生態毒性影響からの回復には2年かかる。
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参考-2:OSPAR 条約 GL5.2項、13.1項、技術的附属書I |
(GL5.2項、技術的附属書I) ・基本的に、全案件に枠組みを適用。ただし、適用除外もあり、「砂」は以下のとおり適用除外される可能性がある。 (GL5.2項⇔ロンドン条約議定書4.2項) −浚渫物がほとんど砂、礫、または岩で構成されている場合は、物理的特性分析(浚渫量、処分地点における予定あるいは実際の投入率、目視で判定した浚渫物の粒度組成〔粘土/シルト/砂/礫/岩〕)以外は免除しうる。(技術的附属書I) −GL5.3項に該当する浚渫物は適用除外であるが、浚渫物の全部あるいは一部を有効利用に用いる場合、通常は、その用途を決定するため、最低ここに示される物理的特性の把握は一部なりとも行うべきである。
物理的特性把握項目…粒度組成、固相の割合(乾燥%)、密度/比重、有機物量(TOC) −有効利用の場合は調査可能な範囲で工学的特性を把握しておくべし。(例:浸透率、沈降特性、可塑性、鉱物分 等) (GL13.1項⇔対応箇所なし) ・OSPAR条約における予防的アプローチの原則から総負荷量について留意しているが、適用除外分の浚渫土砂に含まれる汚染物質に対しては、以下のとおり「微小」なものとして考慮に入れていない旨を記述している。(以下、GLより抜粋) 特性分析を免除された浚渫物に対しては汚染物質の負荷は微小であるとし、(投棄された汚染物質量の)計上には入れていない。
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参考-3:OSPAR 条約 GL技術的附属書I |
(評価体系の考え方(⇔対応箇所なし):以下、GL技術的附属書Iより抜粋) 2. 浚渫物分析における階層的アプローチの必要性 ・試験の階層的アプローチの奨励 4. 特性分析の階層構造
階層的評価は、以下の順に行う。
物理的特性の評価→化学的特性の評価→生物学的特性及び影響の評価
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参考-4:アメリカの例 |
アメリカでは、段階別に化学試験と生物試験を統合した形で、浚渫土砂に係る階層的評価体系を作成。グリーンブックにおける評価体系のフロー図は別図-1のとおり。 ・階層I:既存情報整理、化学試験。 ・階層II:
(1)水柱への影響…階層Iの化学試験結果を用いた水柱における汚染物質濃度の計算、計算結果と海域の水質基準(LPC)との比較。
(2)底生系への影響…非極性有機物の生物蓄積量の計算。
・階層III:
(1)水柱への影響…水柱の浚渫物懸濁状態の計算、計算結果と半致死濃度(LC50)との比較。
(2)底生系への影響…毒性試験と生物蓄積試験の実施。生物蓄積性では、重金属については10日、有機汚染物質または有機金属汚染物質については28日間の暴露試験。FDA(食品薬品局)の食品としての魚介類に含まれる毒性あるいは有害物質に関する行動基準濃度との比較。 ・階層IV:長期的な暴露試験(毒性試験・生物蓄積試験)
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注)
1.LPC:許容限界濃度
2.WQC:海域の水質基準
3.図中に(○○章)とあるのは、グリーンブックにおける詳細記述箇所を示す。
別図−1(1) アメリカにおける浚渫土砂の評価体系
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注)
1.LPC:許容限界濃度
2.WQC:海域の水質基準
3.LC50:供試生物の半数致死濃度(急性毒性試験)
4.図中に(○○章)とあるのは、グリーンブックにおける詳細記述箇所を示す。
別図−1(2) グリーンブックにおける浚渫土砂の評価体系
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注)
1.LPC:許容限界濃度
2.WQC:海域の水質基準
3.図中に(○○章)とあるのは、グリーンブックにおける詳細記述箇所を示す。
別図−1(3) アメリカにおける浚渫土砂の評価体系