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メッセージ
犯罪被害者としてセンターの設立について思う事
被害女性
 
 昨年自宅で強盗に襲われた。中国語を話す外国人らによる緊縛強盗である。事業資金から子供の財布、結婚指輪まで一切奪われ、九死に一生を得た。
 「命があっただけでも良かったと思えば」「早く忘れなさい」「何で狙われたの」「試練だと思って頑張って」―― 一方的に励ましを受ける。全くその通りなのだが事件の直後は慰めにはならない。それらの言葉は、おちつけるようになって初めてこちらが言える台詞なのだ。または遠慮からなのか、事件を当然知っている友があえて触れないようにしてくる。置きざりにされたような孤独を覚える。何故多くの人は傷ついた人への接し方を知らないのだろう。まずはどんなに怖かったかを想像して、魂で共感して欲しいのだ。しかし、自分だって被害を受ける前はそういう事に無知だった。教えられたことがないのだ。被害者になってみないとわからないことがある。身体や財産の被害に加え、極度の恐怖や失望感、強い憎しみの感覚、批評に対する恐れ。それらがパニックとなってさらに自分に襲いかかってくる。この危機状態をどうしたらいいのか。家族と私は有能な専門家の援助を必要としていたが、どこに相談すれば良いのか分からなかった。そんな状況の中、被害者支援センターが神奈川に設立されることを知った。人を傷つけるのは人しかいない。だが、人を救えるのも人だという。ボランティア相談員に募集人数をはるかに越える応募があったと聞いた。センターに関わる全ての人に尊敬と感謝の念で胸が一杯になる。私は元気になりたい。そして、私以上に苦しんでいる被害者・遺族の方々も、センターの人々の強い味方を得て、生きてゆく喜びを取り戻せるようになれることを切に願う。私自身もきっと力になるから。
ボランティア相談員から
「相談員としての抱負と決意」
相談員女性
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 研修を重ねるにつれ、この重たい課題と向き合って、何が私に出来るのだろうかと不安が先に気持ちを抑え、全く自信がないのが正直な気持ちです。専門的な知識もありません。ただ、3年くらい前に息子が心の病にかかり少しでも子供の気持ちを理解したい一心で、昨年、産業カウンセラー初級講座を受講し、合格致しました。学習したからといって、なかなか我が子の気持ちに添うことなど出来るものではありません。
 ましてや、人様のお役に立つなどと、とても恐れ多いことです。しかし、親としてこの切なさ、悲しさ、苛立ち等様々な感情でこの苦しさを味わっております。
 ほんの小さな事しか出来ませんが、相談者の人間を尊重し、私自身も研修を重ねて自己を研鑽し、相談に合った諸問題の情報をお伝えできればと思います。真摯に聴く心を忘れず頑張っていきたいです。
「電話相談員に応募して」
相談員男性
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 いよいよ神奈川被害者支援センターが5月11日に正式に発足することとなった。
 電話相談員のボランティアとして応募し、研修を受けていくなかで、発足に関わった方々の御苦労や熱意がひしひしと伝わり、自分のボランティア応募の動機が、いかに甘いものであったかを恥じているこの頃である。
 必死な思いで電話されてきた方に対し、相談員の声の響きが応対内容と同じように重要なこと、傷付いた家族同士が語り合い癒し合うことが難しいからこそ、外部にその心を受け止めてくれる存在が求められること。簡単に分かるはずがないのに「あなたの苦しさは良く分かります。」と答えてかえって相手を傷付けたり怒りを生じさせることのあること、その地域における支援資源や被害給付などの必要な制度を熟知することなど、講師の方々の1つ1つの言葉が胸に突き刺さるように入ってきた。トラウマを持った人に対するカウンセリングヘの誤解や過大評価と、きちんとした危機介入の修得について深く考えさせられた研修であった。
 電話という目に見えないラインで、相談される方と繋がるには、本当に繊細、かつ、動じない問題処理能力と、それを支える幅広い知識の修得が必要と痛感した。自分の体験した電話相談を学習の場で再検討してもらいながら、少しでもこれらの目標に近付くように励みたいと思っています。どうぞよろしくお願い致します。








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