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4 バリアフリー化促進に向けた各関係主体の役割
[1]旅客船事業者
 旅客船事業者においては、船舶の新設時に交通バリアフリー法に基づく「移動円滑化基準」への適合が求められるが、バリアフリー化による需要拡大の効果も踏まえつつ、利用者の視点に立って、既存船舶も含めたバリアフリー化に積極的に取り組んでいくことが求められる。
 その際には、施設整備によるハード面だけでなく、職員(船員・地上係員)の研修、対応マニュアルの整備等により、ソフト面での対応も併せて進めていく必要がある。また、船舶の建造にあたっては、発注先選定にプロポーザル方式を採用するなど、造船業界の技術開発や創意工夫を促進することも期待される。
[2]市町村
 市町村においては、住民に最も身近な行政機関として、地域の実情に即したバリアフリー化の実現に向けて、各関係主体の取り組みを牽引・調整していく役割が求められる。
 これに関連して、交通バリアフリー法では、市町村は、区域内の
「重点整備地区注)」について重点的かつ一体的なバリアフリー化を進めるため、「移動円滑化基本構想」を作成することができるとされている。各市町村は地域の実情を考慮し、必要に応じて旅客船ターミナルを含む地区を重点整備地区に設定して「移動円滑化基本構想」を作成し、重点的かつ一体的なバリアフリー化を推進していくことが期待される。
 また、市町村が旅客船ターミナルや周辺道路等の整備・管理主体となる場合には、既存施設も含めてそのバリアフリー化に積極的に取り組んでいくことが求められる。
注)「重点整備地区」は「特定旅客施設」を中心として設定される一定の要件を満たす地区であり、「特定旅客施設」は1日あたり利用者が5千人以上であることが基本であるが、それ以外でも一定の要件を満たし必要性が特に高いと認められる施設が該当する。
[3]長崎県
 長崎県においては、海上旅客輸送の大半の航路が複数の市町村にまたがることから、そのバリアフリー化に際して、関係市町村と協力して、広域的な観点から各関係主体の取り組みを牽引・調整していく役割が求められる。さらに、他県にまたがる航路に関しては、当該県・市町村との調整機能も求められる。
 また、各事業者や市町村等の取り組みを支援するため、公的支援制度の一層の拡充を図っていくことが期待される。
 さらに、国レベルでの情報を事業者・市町村等へわかりやすく提供するとともに、県内のバリアフリー化について、その進捗状況を把握して利用者への情報提供を行ったり、事業者・市町村や一般市民等への意識啓発を行っていくことが求められる。
 一方、港湾管理者(佐世保港を除く)としての立場からは、旅客船ターミナルを中心とする港湾のバリアフリー化に向けて、関係市町村と連携を図りつつ、積極的に取り組んでいくことが求められる。
[4]国等
 国においては、海上旅客輸送を含む交通バリアフリー化の促進に向けて、公的支援制度の一層の拡充を図っていくことが期待される。また、国が厳しい財政事情にあること等に鑑み、日本船舶振興会等の公益法人においても、交通バリアフリー化の促進に向けた財政的な支援が期待されている。
 また、低コストで安全性確保とバリアフリー化の両立が図られるような船舶の実現に向けて、試設計の実施や技術開発の促進を図るとともに、船舶安全法等と同様に、交通バリアフリー法についても各地域レベルでの運用体制の整備が求められる。船舶の構造基準等については、交通バリアフリー法に基づく「移動円滑化基準」との整合性に配慮しつつ、適切な見直しを行っていくことが求められる。
 さらに、法規制や公的支援制度、技術開発動向、国内外の先進事例等に関する情報を各地域にわかりやすく提供すること、各地域の取り組みに対して適切な指導・助言等を行っていくこと、国民全般に対してバリアフリー化の重要性や高齢者・身障者等の移動を支援する際の配慮事項などについて意識啓発を行っていくことが求められる。
[5]バス事業者等
 バス事業者やタクシー事業者など旅客船ターミナルヘのアクセス交通手段を提供する事業者においては、当該交通手段のバリアフリー化に積極的に取り組んでいくとともに、海上旅客輸送とのダイヤ調整や船舳・旅客船ターミナルとの各種案内表示の統一など、旅客船事業者・港湾管理者等と連携してバリアフリー化に取り組んでいくことが求められる。
[6]造船業界
 造船業界においては、低コストで安全性確保とバリアフリー化の両立が図られるような船舶の実現に向けて、船舶の設計上のさまざまな工夫や新技術の開発に積極的に取り組んでいくことが期待される。
[7]関係団体
 高齢者・身障者等の関係団体(社会福祉協議会、身体障害者関係団体、高齢者関係団体、ボランティア団体等)においては、海上旅客輸送のバリアフリー化に向けて利用者ニーズを適切に反映させていくため、事業者・行政等の取り組みに積極的に参画し、利用者あるいは今後利用者となりうる人からの要望のとりまとめや意見具申を行うとともに、バリアフリー化に関する研修活動への協力等を積極的に行っていくことが求められる。
[8]一般市民
 一般市民においては、バリアフリー化に関する理解を深め、必要に応じて高齢者・身障者等の移動に対する適切な支援を実践していくことが期待される。特に、海上旅客輸送は、他の交通手段と比較して船舶の構造特性に起因するバリアフリー化の制約が大きいこと、小型船舶や離島港湾では船員・地上係員等を十分に確保できないことなどから、高齢者・身障者等の移動に対する一般市民の協力がより重要である。








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