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新総合物流施策大綱の概要
平成13年6月
国土交通省
経済産業省
I 新大綱の策定について
(1) 新総合物流施策大綱とは
 政府は、平成9年4月に、平成13年までにコストを含め国際的に遜色のない物流サービスを実現することを目指して具体的施策をまとめた「総合物流施策大綱」(平成9年大綱)を閣議決定。
「新総合物流施策大綱」(新大綱)は、平成9年大綱の目標年の到来を迎えるに当たり、これまで実施してきた施策の成果を評価し、平成9年大綱策定以降の情勢変化等を踏まえて新たな目標を定め、その達成のための具体的施策をまとめるもの。

(2) 平成9年大綱の評価と新大綱の必要性
 平成9年大綱の下で、以下の3つの目標実現に向けた諸施策が実施され、一定の効果を上げてきたものの、さらなる取組みが必要。
1 アジア太平洋地域で最も利便性が高く魅力的なサービス
・各種インフラの整備、規制緩和の推進、貿易手続きの短縮化、標準化、情報化等による物流システムの高度化により、物流サービスの利便性の向上はみられる。

 例 : 輸入手続全体に要する平均時間が約95時間 (平成8年3月)→約87時間 (平成10年3月)

・しかし、アジア地域において先進的な国際港湾等の整備が進む中、我が国の国際港湾のコンテナ取扱量の伸びは低位。船舶の大型化への対応、港湾のフルオープン化、輸出入手続の電子化・ワンストップ化の実現等の必要性が指摘。

・グローバル化の一層の進展に対応していくため、より一層のハード・ソフト両面の改善が必要。
2 産業立地競争力の阻害要因とならない物流コスト
 物流コストはわずかながら低下傾向にあり、米国と比較しても必ずしも高い水準にはないが、例えば、港湾関連のコストについては、アジアの先進港湾に比べれば高い水準にある。国際的な競争激化の中、引き続きコストの低減に努めていくことが重要。
コンテナ取扱量の推移
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対GDP総物流コスト比率の推移
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3 エネルギー問題、環境問題及び交通安全等への対応
 都市内交通の円滑化のためのインフラ整備や交通事故抑制策等を推進。
 平成9年12月のCO2削減に向けた京都議定書(COP3)の採択、平成12年6月に施行された循環型社会形成推進基本法に基づく循環型社会の構築といった新たな課題へ対応していくため、より一層の取組みが必要。
 さらに、企業間での情報共有化が進んでいない現状を踏まえた情報通信技術の飛躍的進展への対応、災害等の緊急時対策など国民生活を支える物流という観点からの取組みも必要。
II 新大綱のポイント
1 新大綱の目標と視点
(1) 目標
 21世紀を迎えた我が国経済社会にふさわしい新たな物流システムの形成を目指し、遅くとも平成17年(2005年)までに、以下の目標の達成を目指す。
[1]コストを含めて国際的に競争力のある水準の物流市場の構築
[2]環境負荷を低減させる物流体系の構築と循環型社会への貢献
(2) 施策推進の視点
ア 各主体の適切な役割分担(政府・民間、国と地方公共団体)
イ 公正かつ競争的な物流サービス市場の構築
ウ 物流インフラの重点的・効率的な整備や既存インフラの有効活用
2 今後の施策の方向性
上記目標を達成するため、新大綱においては、我が国の物流システムが目指すべき以下の3つの方向性を明確化した上で、具体的な数値目標を設定。
(1) 国際競争力のある社会実現のための高度かつ全体効率的な物流システムの構築
[1]高度かつ全体効率的な物流システムの構築
○共同化、情報化(3PL等)等の民間の取組みの促進。規制改革や行政手続の簡素化・効率化、技術開発等の推進。
○標準パレットによる一貫パレチゼーション(発送から到着まで積み替えを行わす同じパレットで一貫輸送する方式)を中心としたユニットロード化の推進。
目標 : 平成17年までに、パレット輸送が可能な貨物のパレット化率を約9割とする(現在 : 77%)とともに、標準パレット比率を欧米並に引き上げ。
(現在 : 日本約4割欧米約5〜6割)
○地域間物流において、トラック、海運、鉄道等の競争と連携の下、利用者の自由な選択を通じて適切な役割分担がなされる交通体系を構築。そのための連携事業の推進。
目標 : 21世紀初頭までに、複合一貫輸送へ対応した内貿ターミナルへ陸上交通を用いて半日以内で往復できる地域の人口ベースでの比率を約9割へ上昇させる。
(現在 : 約8割)
目標 : 21世紀初頭までに、自動車専用道路等のICから10分以内到達可能な空港・港湾の割合を約9割にする。
(現在 : 空港46%、港湾33%欧米約9割)
○都市内物流において、環状道路整備、踏切改良等による交通容量拡大と、交通の需要面に働きかけ、需要の分散・調整を図る仕組みであるTDM施策(交通需要マネジメント)を推進。
目標 : 21世紀初頭までに、3大都市圏における人口集中地区の朝夕の平均走行速度を25キロメートル毎時に改善するとともに、トラック積載効率を50%まで引き上げる。
(現状 : 平均走行速度21キロメートル毎時トラック積載効率約45%)
[2] 国際物流拠点の機能強化等
○国際港湾等の国際物流拠点やこれらへのアクセス、海上ハイウェイネットワーク、幹線道路ネットワーク等の重点的整備。
目標 : 21世紀初頭に、輸出入コンテナの陸上輸送費用を平成9年大綱策定当時の施設配置を前提とした場合と比較して約3割削減することを目指す。
 (現状約1割削減)
○港湾の24時間フルオープン化、輸出入・港湾手続きの電子化・ワンストップ化等を進め、国際港湾物流の効率を大幅に改善。
目標 : 平成17年度までに、船舶が入港してから貨物がコンテナヤードを出ることが可能となるまでに必要な時間を2日程度へ短縮。(現状3〜4日)
(2) 社会的課題に対応した物流システムの構築
[1] 地球温暖化問題への対応
○「京都議定書」のCO2排出削減目標達成のための排出抑制策の強化。
○トラック等輸送機関の燃費の向上、車両大型化・共同化等によるトラック輸送の効率化及び鉄道・内航海運の活用(モーダルシフト)の推進。
目標 : 2010年までに、長距離雑貨輸送分野のモーダルシフト化率(全輸送機関に占める鉄道・内航海運の利用率)を50%に向上させる。(現状 : 約43%)
[2] 大気汚染等の環境問題への対応
○排出ガス規制の強化、低公害車の開発・普及、環状道路整備等の交通容量の拡充に加え、TDM施策等による都市内交通の円滑化
○環状道路周辺等への物流拠点の立地促進
○都市内におけるトラック通過交通需要の船舶・鉄道輸送への転換策の検討等
[3] 循環型社会実現のための静脈物流システムの構築
○鉄道、海運の活用を含め、循環型社会実現に貢献する効率的な物流システムの検討・具体化。
○広域リサイクル施設等の整備に対応した港湾施設等の整備
[4] 事故防止等物流の安全問題への対応
○トラックの速度抑制装置(90キロメートル毎時)装備の義務づけ、輻輳海域における新しい通航方式の検討等、事故防止対策の強化や安全基準の適時適切な見直し。
(3) 国民生活を支える物流システムの構築
[1] 物流事業規制の緩和後においても安定した物流サービスと消費者保護の確保。
[2] 街づくりにおける物流の円滑化への配慮(都市内建築物等への荷捌き施設の付置等)
[3] 安定的な物流システムの構築(既存インフラの耐震性等の向上、緊急時の代替手段・ルートの確保)








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