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2 道路交通環境問題の現状
 運輸部門の地域環境問題として現在最大の問題となっているのが、自動車から排出される窒素酸化物(NOx)や粒子状物質(PM)等によって生じる大気汚染の深刻化です。
 NOxは、酸性雨や光化学スモッグの原因となるばかりでなく、このうち二酸化窒素(NO2)は人間の呼吸に悪影響を与えると言われています。また、PMのうち、ディーゼル車から排出されるディーゼル排気粒子(DEP)については、肺や器官への付着による発ガン性や、気管支炎、喘息等の健康被害が発生することが懸念されています。
 こうした中、NOx全体の約5割を排出する自動車を抱える運輸部門において、道路交通環境対策を積極的に推進することが重要です。
(1)大都市圏における大気汚染問題の状況
 大都市圏において排出される窒素酸化物(NOx)の52%、粒子状物質(PM)の43%はそれぞれ自動車部門からのものであり、そのうち、NOxに関しては約8割が、PMに関しては全てがディーゼル車からの排出となっています。
 
●自動車NOx法特定地域における窒素酸化物の発生源別排出量(平成9年度)
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自動車NOx総量削減方策検討会報告書(平成12年3月)より作成
●関東及び関西における粒子状物質の発生源別寄与濃度割合
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平成6年度関東自動車排出ガス測定局平均
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平成6年度関西自動車排出ガス測定局平均
 
 2000年度の二酸化窒素(NO2)の環境基準非達成局の地域別の分布状況をみると、一般大気環境測定局については干葉県、東京都、神奈川県及び大阪府に分布しており、自動車排出ガス測定局については、自動車NOx法の現行特定地域に加え、北海道、愛知県、三重県、京都府等の9道府県にも見られます。自動車NOx法の特定地域全体における自動車排出ガス測定局の基準達成状況をみると、1996年度に33.3%を記録して以降、1998年度の35.7%まで3割台で推移した後、1999年度59.1%、2000年度62.8%と改善しているものの、依然として厳しい状況にあります。なお、高濃度のNO2が観測された地域は、関東、関西地区の都心部に集中しています。
 一方、浮遊粒子状物質(SPM)の自動車NOx法の特定地域全体における達成状況をみると、1996年度には一般大気環境測定局の30.6%で基準を達成したのを皮切りに、1999年度74.9%、2000年度85.5%と改善の方向にあります。一方自動車排出ガス測定局における達成率は相対的に低くなっています(1996年度16.7%、1999年度63.4%、2000年度52.0%)
 
●自動車NOx法の特定地域における二酸化窒素の環境基準の達成状況
(拡大画面: 62 KB)
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●自動車NOx法の特定地域における浮遊粒子状物質の環境基準の達成状況
(拡大画面: 60 KB)
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(2)大気汚染問題の解決に向けた動き
 (1)で述べたように、自動車による大気汚染が深刻な状況にある中、地域住民の健康を守るためにも、今後も地域環境全体の解決を推進させることが重要です。
 こうした中、2000年12月に尼崎公害訴訟が和解し、また、2001年8月には名古屋南部公害訴訟が和解しました。国、地方公共団体、民間企業、地域住民が一体となって、より一層の地域環境の改善に向けた取り組みを行うことが喫緊の課題となっています。








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