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(2)条約の締約国・非締約国と投棄の法的性質
 条約は締約国を拘束するが、非締約国にはその効果は及ばない。ここで問題となっている民族文字を使う国は、関連条約の締約国と非締約国とに分かれている。また、海洋投棄規制条約は、第3条3項で、条約上海洋には内水を含まない旨定義している。国連海洋法条約第216条も、内水についての規定を置いていない。そこで、2で区分した原因行為である投棄のうち、外国の内水での投棄に関するイとヘについては、当該国が条約の締約国・非締約国のいずれであっても、国際法の規制から外れていると理解される。
 ロやハ、すなわち外国の領海や排他的経済水域・大陸棚上での、当該国の国内法上適法な投棄、およびニ、すなわち公海での、積出国の国内法上適法な投棄は、締約国にあっては、海洋投棄規制条約第4条1項(b)、(c)所定の許可を得た投棄であり、国際法上も適法な投棄である。非締約国にあっては、国際法上の義務の対象としての規制を受けない投棄であり、海洋投棄規制条約と異なる内容であったとしても、国際慣習法として形成されていない限り、国際法上違法とされるものではない。
 ホの、積出国の国内法上適法な投棄は、締約国にあっては、排他的経済水域の沿岸国であるわが国の許可も必要とすることになるから、それを得られた投棄ということになり、国際法上も適法なものであるが、ここでの問題はこのような場合から発生しているものではないので、現実には当てはまらない。また締約国間では、積出国はその排他的経済水域内での投棄に許可をとどめている。非締約国にあっては、海洋環境の保護に関する排他的経済水域制度が国際慣習化しているとは言えないのであれば、国際法上規制の対象となっているとはいえず、したがって、わが国の許可のない場合でも、また条約と異なる基準であったとしても、国際法上違法となるわけではない。
 ト、チ、すなわち外国の領海や排他的経済水域・大陸棚上での、当該国の国内法上違法な投棄、およびリ、すなわち公海での、積出国の国内法上違法な投棄は、締約国にあっては、海洋投棄規制条約第4条1項(a)所定のブラックリストの廃棄物の投棄、あるいは同項(b)、(c)所定の許可を得ていない投棄であるから、締約国の場合は、国際法上も違法である。非締約国の場合は、当該国の国内法上規制の対象となっている国内法上の違法な行為だが、国際法上直ちに違法とはならない。
 ヌの、わが国の排他的経済水域での違法な投棄としては、締約国にあっては、海洋投棄規制条約第4条1項違反の投棄、あるいはわが国の許可のない投棄であるから、国際法上も違法であるが、非締約国にあっては、条約の枠内には入らないから、当該国の法令に違反した違法な投棄であっても、そのことから直ちに国際法上違法なわけではない。








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