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領海外発生の廃棄物への対応
横浜国立大学教授 田中 利幸
1 はじめに
 わが国の領海外から潮流に乗って、プラスチック製品を含む大量の廃棄物が、わが国の沿岸に漂流・漂着することが報告されている。そして、その廃棄物には特定の民族文字(ハングル文字)が記載されていることから、わが国が廃棄の原因となったものではなく、当該文字を用いる特定国において廃棄された物ではないかと合理的に推測されている。また、漂流の時期・態様などから、事故による流出ではなく、投棄によるものではないかとも推測されている。
 このような大量の廃棄物がわが国の沿岸域に漂流・漂着することは、わが国の海洋環境にとって好ましいことではない。また、その除去に予期せぬ人的・物的な費用を発生させることになる点も問題である。そのため、事態が反復されるとしたら、看過できないことであろう。国際海洋環境の保護という観点からも問題となる。そこで、このような事態が発生した場合の処理と発生防止のための、法的枠組みの検討が必要となる。この場合、廃棄物がわが国の領海外で発生していることから、わが国国内法限りの問題としてではなく、国際環境法の問題として、国際環境規制法、国際環境刑法(1)、国際賠償責任法を視野に入れることが必要となる。








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