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(2)TACの設定期間の変更
 新法では、従来暦年を単位で設定されることになっていた漁獲可能量について、漁業時期を考慮したものとするための改正がなされた。このため、資源管理法2条2項におけるTACの定義が、「海洋生物資源の種類ごとの暦年の数量の最高限度」から、「海洋生物資源の種類ごとの年間の数量の最高限度」へと改められた。
 この改正は、暦年方式のTACでは、日本で魚価が高くなる年末の時期に操業ができなくなる、というおそれが指摘されたことの反映とされる。この点、もともとTAC制度とは、暦年の数量設定という定義を前提とした、グローバルな概念ではなかったのか、日本が独自の期間設定でTACを設定することが、余剰分の他国への割り当てということを困難にするのではないか、という素朴な疑問がある。また、魚種ごとにTACの設定期間が異なってくると、きめ細かなTAC管理を行おうとした場合に、非常に複雑なシステムになるのではないか、といったことも考えられよう。
 この点、政府の説明では、日本の排他的水域等でTACの対象となる魚種について、外国への割り当てを行う必要がなくなっている、ということのようであるが、日本の法令上のTACの定義が変更されてしまうことに、国際法上のTAC概念との同一性という要素を考慮しなくてよいのか、疑問がなくはない。しかし、逆の見方をすれば、今回の資源管理法の改正により、TAC管理がより日本の国内事情に適合した法的仕組みへと「進化」したものとも評価することもできる。これは、TACの導入が、沿岸国にとって具体的にどのような立法上の作為義務して課されるのかという問題であり、広範な立法裁量が認められるのであれば、今般の資源管理法改正は、評価されることになろう。








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