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(2)銃器議定書
 (Protocol against the illicit Manufacturing of and Trafficking in Firearms, Their Parts and Components and Ammunition, supplement the United Nations Convention against Transnational Organized Crime)
 銃器議定書(8) は、その第2条の「目的」において、「この議定書は、銃器、同部品及び構成部分並びに弾薬の密造及び不正取引を防止しこれと戦い及びこれを根絶するために締約国間の協力を促進し、容易にし及び強固にすることを目的とする。」と規定していることからも明らかな通り、銃器、同部品及び構成部分並びに弾薬(以下、銃器等という)の密造及び不正取引の「防止その他の対策のための各国間の協力促進」を目的としている。つまり、少なくとも規定上は、目的としているのは各国間の協力促進であって、加盟国の国内における密造及び不正取引といった犯罪行為の防止その他の対策の強化はこの議定書の直接の目的ではない。こうした目的規定の表現ぶりは、銃器議定書と同じく国連組織犯罪条約を補足する他の二つの議定書の目的規定と比べて違いがあるが、これは、各加盟国における具体的な銃器規制は各国の自主性に任せるべきであり、条約による国際的な規制の平準化は国際協力のための必要不可欠な範囲にとどめるべきであるという銃器議定書の基本的な考え方を反映したものと思われる(9)
 銃器議定書において加盟国に犯罪化が義務づけられるのは第5条に規定される3つの行為である。第一は、第5条の(a)の銃器等の密造(illicit manufacturing)である。密造が問題となるのは、「銃器」、「同部品及び構成部分」、又は「弾薬」であるが、このうち「部品及び構成部分」の製造に関する規制は各国ごとに千差万別であるため、部品及び構成部分の密造については製造国においてこれらの製造に許可や認可が必要である場合のみ犯罪化するとされている。
 第二は、(b)の銃器等の不正取引(illicit trafficking)である。不正取引が問題となるのは、国境を越えた銃器等の輸入、輸出、譲受け、譲渡し、配達、移動又は移送であり、国際性が前提になっている。
 第三は、第8条で義務づけられる製造者名、製造された国又は場所及び、製造一連番号からなる、個々の銃器に固有な製造時の「刻印」(Making)の偽造又は違法な破壊行為、削除行為、又は変造行為である。
 そして、第5条第2項では、第1項に掲げる犯罪について、未遂(予備を含むと解してもよいとされている)、共同正犯、教唆、幇助、その他の支援行為の犯罪化を義務づけている。なお、第1条第2項は「この議定書の中に特別の定めがない限り、条約の条文はこの議定書に準用される」と規定しているが、本議定書第5条の規定は「特別の定め」に当たるので、本体条約第5条の規定(参加罪・共謀罪)は銃器議定書には準用されないことになるため、第5条第1項に掲げる犯罪については参加罪・共謀罪の創設義務は生じないと解される。








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