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III 自己攪拌型油分散剤の効果的な使用法の調査
III-1 調査目的
1 分散剤の分散性能(分散剤の原液散布と海水希釈散布による分散性能)
 流出油の油防除の一つとして分散剤による処理方法がある。この処理方法は国内外で事故時に多く採用されており顕著な事例として、メキシコ湾、カンペチェ、イクストーク1号油田の暴噴事故時(1979.6.3〜1980.3.23、噴出推定量64万kl以上、メキシコ石油公社発表)に固定翼航空機による493回の分散剤散布飛行が実施され流出油の分散処理が有効であったとの報告がある。
 しかしながら、数多くの流出油分散剤処理の事故事例があるがその分散性能については、定量的に計測した事例が少なく(計測したが失敗例が多い)海中における分散分布及び油分濃度の調査結果がほとんどないのが現状である。
2 実海域における分散性能の計測
 この油分散分布等の実海域における調査研究については、米国、カナダ、英国等で実施されているがいずれも海中に浮遊し、拡散漂流する油分混合水のサンプル位置(幅方向、鉛直方向の採取位置)の設定やサンプル時間との関連が適切でなく野外実験の難しさがある。
 その要因として実海域の広さ、潮海流、波浪、海水温、気温、風速等の海象・気象の環境条件の複雑さに加え計測に必要な航空機、船舶、計測器具、人員等に膨大な物量と費用を必要とすることが挙げられる。
3 実験室実験規模の試験法
 一方、実験室規模実験の試験法は、海外を含めるとおよそ40種があり、容器、形状、振とう法及び試験水の多寡等多種多様である。これらの試験法における分散剤の散布は「予め混合法」と「直接散布法」の2通りがある。
 「予め混合法」は試験油量と分散剤量との比率を定め、これらを予め混合した状態で試験容器の海水面に添加し攪拌する。
 「直接散布法」は、容器中の海水面に試験油を投入し、油膜が一定となった状態の油面上に分散剤を均一に滴下して攪拌する。この分散剤を滴下した際、ハーディング現象(油と水との界面張力が限りなく0に近くなり油層を一方向に押しつける)が発生する。
この場合は、やり直すことになる。また、ロールオフ現象(油層面から分散剤が水面に流れ落ちる)があり、油面上に均一に分散剤を滴下するのが難しい点が挙げられる。このため分散性能値にバラツキが生じ再現性が悪い欠点がある。
 このことから、各国の試験法の試験油と分散剤の散布法は分散率のバラツキが少なく、再現性の高い安定した性能値が得られる「予め混合法」が大勢を占めている。なお、我が国の分散剤の分散性能試験である舶査52号及びMDPC法も予め混合法を採用している。
4 本調査研究の目的
 前述のとおり、実海域実験と実験室実験との分散性能の相関関係に関しての研究は未だ手探りの現状であり、且つ分散剤の散布方法が異なることも要因としてある。
 そこで、本調査研究では、実験室実験での「予め混合」及び「直接散布法」の分散性能を把握するための試験法を確立して、上述の散布方法の分散性能調査を行うとともに、 未だ分散剤を海水に希釈して散布するといった、誤った散布法の分散性能の位置付を明らかにすることを目的とした。








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