日本財団 図書館


資料2.聞き取り調査協力依頼文書
 団体様
社団法人 環境情報科学センター
「砂浜環境調査マニュアル(仮称)」に関するヒアリング調査への協力のお願い
 時下ますますご清栄のこととお喜び申し上げます。
 さて、環境情報科学センターは、環境省許可の公益法人であり、機関誌の発行やシンポジウム、講演会などの開催の他、環境科学に関する委託調査研究や自主研究などを行っております。
 現在、弊センターでは、日本財団の助成を受け、平成12年度より自主研究として「砂浜海岸の環境影響評価の研究」と題し、砂浜海岸の持つ生態学的な機能に着目した評価手法の研究を行っております。平成12年度の研究では、既往資料や踏査に基づいて、外海性砂浜の概況と機能に関する基礎的知見の整理を行うとともに、相模湾沿岸12海浜を対象に現地調査を実施し、その結果に基づいて砂浜潮間帯の生物相に影響を及ぼす因子について検討を行いました(別紙−1)。
 平成13年度は、平成12年度の整理結果を受けて、砂浜海岸の生物に関する情報が十分に整理されていない現状から、一般市民・団体の実施を想定した「砂浜環境調査マニュアル(仮称)」を策定することにしました(別紙−2)。
 つきましては、日頃から地域の環境に接しておられる貴団体から、私どもで作成した「調査マニュアル(案)(別紙−3)」の実施可能性や、調査手法の不具合等についてのご意見、ご助言等をいただきたく、ヒアリングにお伺いしました。ご多忙中とは存じますが、何卒調査へのご協力をお願い申し上げます。
 
 連絡先及び担当者
 (社)環境情報科学センター
 東京都千代田区九段南4−7−24トゥーラント88ビル
 電話:03−3265−3916担当:石丸
 アジア航測株式会社(調査実施機関)
 神奈川県厚木市旭町5−42−32
 電話:046−229−7800担当:市橋・小塚・中西
別紙−1
「平成12年度砂浜海岸の環境評価手法の研究」概要
■研究目的
 従来、砂浜については漁業やレクリエーションの場としての他は利用価値が低いと考えられてきたが、近年、地球規模の環境悪化が進む中、砂浜も形態によっては豊かな生態系と高い生物生産力を有し、水質浄化等に大きく貢献していることなどが明らかにされ、その価値が見直されてきた。このようななか、全国各地で人工海浜の造成が進められているが、現状では土木工学的な造成にとどまっている。
 平成11年には海岸法が改正され、法目的に海岸の「防護」に加えて「環境」と「利用」が加えられた。今後は、海岸整備にあたり砂浜海岸の生物特性に対しても留意が必要と考えられるが、砂浜海岸の生物に関する情報は十分に整理されているとはいえない。
 このようなことから、本研究では、砂浜海岸の持つ生態学的な機能に着目した評価手法を開発し、人工海浜の質的向上に寄与することを目的とする。
■研究成果概要
 H12年度研究では、既往資料や踏査に基づいて、外海性砂浜の概況と機能に関する基礎的知見の整理を行うとともに、相模湾沿岸12海浜を対象に現地調査を実施し、その結果に基づいて砂浜潮間帯の生物相に影響を及ぼす因子について検討を行った。
 ・砂浜の機能と特性を整理した結果、砂浜の有する機能のうち、外海性砂浜では生物生息機能が重要と考えられた。
 ・相模湾沿岸の12海浜、全48地点において、砂浜潮間帯の生物相と環境に関する調査を実施した結果、(1)砂浜潮間帯の生物相は単調ではあるが、地盤高によって生息する生物が異なること、(2)砂浜特有の生物群が出現すること、(3)高潮線付近では出現種がより単調になること、(4)同一の海浜でも調査位置によって生物相が異なるごと等が明らかとなった。
 ・自然海浜と人工海浜との差異については、人工海浜で出現した生物が少なかったため、十分な検討が行えなかったが、対象とした人工海浜は、底質粒径が小さい割には汀線付近の勾配が大きく、不安定な状態にあり、このことが生物が少ない要因になっている可能性が示唆された。
 ・砂浜環境の評価軸について、調査結果に基づき検討を行ったが、的確な評価軸の設定には至らなかった。しかしながら、(1)有機物の指標となる因子(COD値や強熱減量)は、分析精度に関する課題もあり、有効な指標とはならないこと、(2)潮間帯の勾配と生物相間に負の相関があること等の知見が得られた。
別紙−2
「平成13年度砂浜海岸の環境評価手法の研究」概要
■研究目的
 一般市民が実施出来る砂浜環境の調査マニュアルを策定することにより、広く砂浜環境保全意識を啓蒙・啓発する。同時に調査データを集中管理するシステムを構築することにより、砂浜に関する基礎的情報を集積し、海域の環境保全に重要な役割を果たす砂浜環境の保全、人工海浜造成など良好な環境の創出の向上に資することを目的とする。
■研究概要
 人工海浜の質的向上に寄与することを目的として、砂浜海岸の持つ生態学的な機能に着目した評価手法に関し検討を行っているが、平成12年度事業では砂浜環境を評価するための評価軸を設定することを目標としている。
 平成13年度事業では、評価軸に関する調査方法を検討した上で、再度実際の砂浜海岸に適用し、評価軸の妥当性を検証し、調査手法も含め砂浜環境の評価手法を整理する。
 また、自然環境の評価にあたっては、高頻度かつ継続的な調査が必要とされることから、可能な限りボランティアなどを活用して行われることが望ましい。しかしながら、砂浜清掃などの活動事例については情報が整理されているが、海浜の調査研究を行う団体などの実態については、情報が整理されていない。
 このことから、海浜の調査などを行っている団体の有無、調査活動などを資料調査あるいはアンケートにより整理し、活動実態の整理を行う。また、今後、調査活動を依頼した際には、調査成果を一元的に管理するとともにフィードバックをすることが必要と考えられることから、海浜の調査を広く展開するシステムについて基礎的検討を行う。
資料−3
砂浜環境調査マニュアルの策定
■策定の目的
 「砂浜環境調査マニュアル(案)」は平成12年度の成果に基づき、各種市民団体、地元小中学校・高校などが実際に砂浜海岸の自然環境やアメニティー性を簡便に調査するためのガイドブック(マニュアル)として位置付けるものである。
■調査実施主体の設定とマニュアルのレベル
 砂浜海岸を調査する団体は小学校低学年から専門家を含む任意団体全てを想定している。砂浜の環境を調査あるいは観察している、各種団体については別項に示す方法による抽出することとするが、概ね「一般市民」および「大学生(専門学部)」が調査実施可能なマニュアルの作成を検討している。
 このレベルの差については、「動植物の同定能力」によって区分されるものであり、その他の項目については、ほぼ同様の内容として検討中である。
同定能力のない団体
 「水生指標生物による水質判定」等で用いられている「(指標生物)チャート」を作成し、分類群(目または科レベル)によって砂浜に生息・生育する動植物を判定する。
 例えば:サギ類、カモメ類、紅藻類、ハマトビムシ類など
同定能力のある団体
 鳥類や哺乳類、両生類・爬虫類などについては、現地で種の判定を行い、砂中に生息する小動物などについては、現場より採取(定量・任意)した検体を持ち帰り、顕微鏡を用いて種までの同定を想定するものである。
 例えば:コサギ、ヤグロカモメ、イギス、ヒメハマトビムシなど
■マニュアルの構成案
 まず始めに、砂浜のもっている役割・機能、自然環境の保全と言う視点からみた砂浜海岸の重要性について、地形学的、生物学的な視点からその概要を記述することとする。
 これは、干潟については埋立地問題などからその役割(水質浄化や生物の生産性など)や豊かな生態系について一般に知られているものの、砂浜海岸についてはほとんど知られていない状態である(平成12年度報告書)。
 マニュアル本編についても、この「砂浜の役割」「砂浜の生態系」に視点をあて、調査・観察するように構成する。
 マニュアルは[1]「砂浜の地理・地形」[2]「砂浜の底質・構成」[3]「砂浜の生物資源」[4]「砂浜の利用」の4項目を大分類として構成することとした。
 とくに[3]の「砂浜の生物資源」については、本マニュアルの構成および自然環境の保全に関して中心的な事項となるため、現地調査・観察の前に十分な情報の収集および整理を行う必要がある。最低限の生物情報をどのような場所、書籍・資料で閲覧するか、その手法を記述し、結果の表現方法(フォーム)を示すこととした。
■日本における砂浜海岸及び水域における各種情報の収集及び整理
 既往の生物情報を収集する。国レベルの情報については可能な限りマニュアルに貼付するものとする。とくに環境庁(レッドリスト・絶滅のおそれのある野生動植物)・水産庁(日本の希少な野生水生生物の関するデータブック)などの選定種についてはそのカテゴリーと共に生息情報を記載することとした。
 さらに県レベル、市町村レベルの生息情報については、所管部署、収集項目を記し、記載方法のフォームを貼付する。
●おもな国レベルの情報
 ・環境省 自然環境保全基礎調査 植生調査 特定植物群楽調査 植物目録 動物分布調査(哺乳類・鳥類・爬虫類・両生類・昆虫類・淡水魚類一周縁魚類) 海岸調査 干潟・藻場・サンゴ礁調査 海域環境調査 海域生物調査 など
日本の絶滅のある野生生物レッドデータブック(レッドリスト)
 ・農林水産省各海区水産研究所報
 ・建設省
■マニュアルの項目の抽出
 現在、表○○○に示すようなマニュアルの項目を抽出している。抽出した根拠は以下のとおりである。
 なお、調査方法については可能な限り簡単に効率よく調査するために、「絵チャート」「分類群チャート」等を作成し選択式で表現できるように検討中である。
 この「絵チャート」「分類群チャート」を作成するためには、現状の砂浜海岸の各種情報を収集し、カテゴリー区分、分類を実施する必要があり、現在作業中である。
●砂浜の気象
 砂浜の気候は水物の生息条件として非常に重要な環境因子である。各気象台や水産試験場などの経年的なデータを用いて記載する。
 波の状況については、個別の砂浜海岸についての情報がない可能性があるので、地域住民や市民団体などからのヒアリング、地形的な特性などから判断し、記載することとする。
 なお、ヒアリングの際にどのような点についてヒアリングすべきかについてもその例を記載することとする。
●砂浜の地形
 生物の生息環境、「器」としての砂浜の状況を把握する必要がある。とくに「砂浜の位置」によって、生息する動植物の概略の構成種が連想され、更に水質の汚染度、底質の状況なども推測することができる。「砂浜の位置」「方位」「長さ」に関しては1/25,000地形図を用い計測し、現地踏査によって補完する。「傾斜・勾配」「幅」に関しては現地でメジャー、簡易レベル、ポールなどを用いて概要が分かるように図で示す。
●河川・水路
 河川の有無によって、砂浜に生息する動植物相は大きく異なる。また河川水の水質も砂浜環境に大きく影響する。よって、砂浜海岸に流入している河川の状況を地形図上で調べ、現地踏査によってその規模(川幅や概略の水深)や水質を目視により観察する。
 水質は臭い、水色、透視度など外観をみる。
●人工構造物
 人工構造物の有無には砂浜海岸に対して三つの影響を及ぼす。ひとつには離岸堤などによって波の営力、砂浜の形成・形状に影響を及ぼし、生息する動植物相を規定する。
 二つ目は防波堤などによって砂浜の背後の植生環境に及ぼす影響。
 三つ目は視界に入る構造物の量、すなわち風景上の影響である。これらは砂浜の生物資源・自然環境に大きく影響するものであることから、構造物の規模や配置、砂浜に占める割合などを調査観察することとした。なお、構造物の種類や形状については専門的な知識もいることから、現状の施設の設置状況から構造物の種類・形状を抽出し、「絵チャート」にして示す予定である。
●砂浜の底質
 砂浜の底質(粒径)は生息する動植物の生息環境として重要な要素である。とくに砂礫質海岸とシルト分、泥分を含んだ海岸では大きく異なる。
 粒径に関しては、通常ふるいわけによって粒径加積曲線を作成し、構成される底質の状況を表現するが、一般には費用が掛かりまたその結果の表現にも専門的な知識が必要である。さらに、底質の有機汚染の状況などを図る目安としてはCOD、強熱(灼熱)減量あるいは酸化還元電位があげられるが、いずれの項目も高価な計器を用いるか室内分析によって得られるデータである。
 生物の生息環境としては、生息基盤となる粒径がどの程度のものなのか。泥分が多くかつ有機汚染(腐食臭)が進んでいるか。また還元状態(硫黄臭)で無酸素に近く、生物の生息に適していない状態か否かを把握することがまず必要な要件である。
 よって、底質については目視によって「粒径チャート」に示す粒径を判断し、色(色チャート)とにおい(臭いチャート)によって底質の状況を観察することとする。
 「粒径チャート」はアサガオの種大、米粒大、指でこするとざらつく、などと言った言葉で表現するか、各粒径の円を描いた図版を貼付するなどが考えられる。
 また、「色チャート」についても色見本帳ではなく、「黄褐色」「茶褐色」「濃い灰色」「象牙色」など一般に知られている言葉で表現する方法を検討中である。
 このほか、底質中の温度も生物の生息環境として重要であり、さらに有機汚染を増進する要因にもなることから、市販の温度計で計測する。
●漂着物
 漂着物は周辺海域あるいは、波浪、海流の影響などを視覚的に知ることができる重要な要素である。よって、漂着物の種類、量を調査・観察することとした。
 とくに海草藻類、甲殻類、マキガイ類、ニマイガイ類などは重要な生息情報となる。動植物の漂着物はサンプリングし標本として保存する方法も示すこととした。
 このほか、船舶などから流出した油分は廃油ボールなどとなり砂浜海岸に漂着し、生物の生息環境のみならず景観・アメニティー性、人の健康にも大きく影響を及ぼす。よって、廃油の漂着状況についても質や量を記録する。
 また、海流によって他地域から漂流したもの(ビンやビニール・プラスチック製品など)のリストも作成し、海流の影響も記録する。
●植生
 植生は砂浜に生息する鳥類や哺乳類、爬虫類、昆虫類にとって、ねぐら、隠れ家、繁殖空間など、生息環境として重要な役割を持っている。さらに背後林は飛砂を抑止し、砂中に生息する小動物の生息環境にも影響する。一方、陸からの飛砂は、浅海に形成された藻場の存在にも影響を及ぼすこともある(襟裳岬などの例)。よって、砂浜の背後林(植生)の有無及びその規模、構成する樹種の状況について調査・観察する。
 このほか、砂浜に形成される草本類を中心としたパッチ状の植物群落、植物種についても観察し、分布域と共に図中に記載する。
 浅海に形成された藻場、海草藻類群落は鳥類、海産哺乳類のエサ場として重要な役割を持っていることから、分布状況、規模を陸上からの目視観察、あるいは漂着物などから判断し記録する。必要によっては引き縄を投げ採取するなどの手法も検討中である。
●動物相
 陸産動物(哺乳類・鳥類など)については、双眼鏡などを用いた生体の目視観察、フンや足跡、食痕などフィールドサインの確認による生息状況の確認を行う。
 哺乳類の足跡については、「足跡チャート」等を作成し表記する方法を検討中である。昆虫類については種が多様であり、一般の観察者には不明な種も数多く含まれる。一方、昆虫類の種構成が砂浜海岸の環境を特徴づける場面は少ないものと予測される。よって、本マニュアルでは、環境の指標となるような種のみを抽出することを検討中である。
 潮間帯に生息する動物については、砂浜海岸の場合、コドラート(方形枠)を用いた定量的な採取方法と、ランダムに砂を採取しふるいにかける定性(任意)的な採取方法がある。定量的な手法により生産量、現存量の推定を行うかどうかは今後検討することとする。
 また、採取した個体の分析に関しては冒頭でも記したように、専門家を含む団体には種の同定までを、小中学生には「科」あるいは「属」レベルでの分類をマニュアル化するかどうかについて現在検討中である。
 浅海の魚類については、釣りや投網などによる調査も検討しているが、基本的には地元住民や漁業協同組合、釣り人からのヒアリング、あるいは観光地引き網などが実施されている浜では捕獲物の情報提供などにより判断することとした。
●利用
 以上示した動植物の生息状況のほかに、砂浜海岸での利用の状況についても調査・観察する。
 砂浜の利用には動植物との関連が強く、種の多様性が砂浜利用を満足させるものと、砂浜をオープンスペース、オープンウォーターなどスポーツ・レクリェーションフィールドとして利用するものに分類される。
 前者は釣りやバードウォッチング、植物観察のほか漁獲・漁労などが含まれる。このため、豊かな自然環境によって支えられる利用である。一方後者は、アメニティー性の面からは重要な利用空間とはなるが、生物資源の保全の観点からは避けるべき利用方法となる。
 この様な観点から、砂浜の自然環境の保全、生活利用、アメニティー性との関連など様々な砂浜環境を考える材料として重要な要素となる。








日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION