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[2]小田の浜海岸
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 小田の浜海岸は、気仙沼大島の唯一の海水浴場であり、沖合には陸中海岸国立公園の海中公園がある、自然豊かな海岸である。
 ただし、津波(高潮)対策として、海岸林と砂浜部の間には護岸が築かれている。
 砂浜は比較的広く、満潮線付近には30cm程度の段差があり、また、汀線付近には10m間隔程度のビーチカスプが発達している。
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 砂浜植生は、人の入り込みが多いためか、海岸の両端部にのみ残り、中央部にはあまりみられない。
 写真は、コウボウシバ。
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 ハマニガナ
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 ハママツナ。
 群落は小さいものが、パッチ状に分布していた。
2.2 砂浜海岸環境調査マニュアル(案)の位置付けの検討
 砂浜海岸環境調査マニュアル(案)は、砂浜海岸を観察する時の視点(楽しみ方)を手引きする内容とし、一般市民が手軽に砂浜環境の調査を実施することにより、広く砂浜環境保全意識と砂浜海岸の魅力を啓蒙・啓発することを期待するものである。
 また、砂浜自体を保全し、砂浜環境の質を高めていくことが重要であることを述べたが、地域の住民が生活環境のひとつである砂浜環境を高めていく視点を整理する一助とするものとした。
(1)砂浜に対する市民のイメージ
 砂浜の一般的なイメージと利用について、平成12年8月に総理府が行った「海辺ニーズに関する世論調査」によると、「海辺」という言葉からイメージするものについての問いに対し、「自然のままの砂浜(白砂青松)」をあげた人が最も多かったという調査結果が示されている。海辺に行った「目的」、「季節」についての問いでは、「海水浴」が最も多く、季節も「夏季」に集中している結果が示されている。さらに「海辺」での不満についても海水浴時のものに集中している。
 このことから「海辺」に対する一般的なイメージは、夏季に海水浴で訪れる海水浴場の印象が強いことと、夏季以外は砂浜海岸が利用されていないことがうかがえる。
 また、利用に関しては「海辺ニーズに関する世論調査」からは、夏季以外の砂浜海岸の利用法があまり知られていないか、ほとんどないと思われているように感じとることができる。
(2)砂浜の重要性
 砂浜は独特の美しい景観を見せるだけではなく、生物の産卵・生育・生息の場であり、休息・採餌の場であり、水質浄化の場となる環境保全の大きな役割を持っている。また、人にとって漁業・レクリエーション等の利用の場、地域の歴史や文化の舞台となるほか、砂浜が存在することにより波の力を低減し、背後地を海岸災害から守る、防護の機能も持っている。
 このように我が国の長い海岸線の中でも、水辺に近づきやすい砂浜は、身近な生活の場であり、古くから文化的な意味を持つ空間となっており、砂浜環境が劣化したり、存在そのものがなくなってしまうことは、人々の日常生活の場や文化的活動の場の要素が消失してしまうことにもつながる。このため、砂浜自体を保全し、砂浜環境の質を高めていくことは、地域に暮らす人々にとっても重要な意味を持っていると考えることができる。
(3)本マニュアルの位置付け
 最近、まちづくりや地域の開発行為の計画にあたって、地域住民が中心となって計画づくりを行う“住民参加型”事例が多くなった。河川整備等においても計画づくりから住民が参加して整備事業を実施し、自分たちが利用する地域環境の質的向上を考える事例が増え、特に平成10年の河川法改定以降、この傾向が強くなっている。海岸についても、平成11年に海岸法の改正があり、従来の海岸災害からの「防護」のみを法目的としていたものから、新たに「環境」、「利用」をも法目的に加え、これら三者が調和した海岸整備を進めることとなった。また、海岸整備計画の検討にあたっては、住民の意見を反映する手続きがとられることともなっている。このようなことを背景に、地域住民も地域の海岸についてその特性を知り、海岸環境の質的向上を提言することができるようになった。しかし、先に紹介した「海辺ニーズに関する世論調査」の結果にみられる通り、一般に海岸に対する興味は、海水浴利用等の限られた時季に限られた利用形態に関して意識されているのが現状であり、これまで、十分な調査研究が行われてこなかったこともあって、砂浜環境を知り評価する着眼点も整理されているとはいえない。これは、後述するように、海岸の自然環境を調査する手引き書が多数紹介されているが、砂浜の環境にスポットをあてたものは少ないことからも分かる。
 このようなことから、今回検討するマニュアルでは、四季を通じて砂浜海岸を知る時の視点(楽しみ方)を手引きする内容とし、一般市民が手軽に砂浜環境の調査を実施することにより、広く砂浜環境保全意識と砂浜海岸の魅力を啓蒙・啓発することを期待するものである。また、砂浜自体を保全し、砂浜環境の質を高めていくことが重要であることを述べたが、地域の住民が生活環境のひとつである砂浜環境を高めていく視点を整理する一助とするものとした。
 将来的には、砂浜海岸への興味を持たせるきっかけ作りのみではなく、調査データを収集することにより、砂浜に関する基礎的情報を整理し、海域の環境保全に重要な役割を果たす砂浜環境の保全、人工海浜造成など良好な砂浜環境の創出の向上に資することを目的とする。
2.3 調査実施主体の設定
 「砂浜海岸環境調査マニュアル(案)」は、その主旨から、地域住民が主体となり、興味を持って調査できることが第一条件となる。また、環境教育や海岸環境保全を啓蒙する役割を考慮すると、小中学校生なども実際に砂浜海岸の自然環境やアメニティー性を簡便に調査できるガイドブックとなる必要がある。
 このことから、本マニュアルの対象は、小学校低学年から一般市民までのあまり専門知識を有しない団体・市民を対象として設定するものとした。
 なお、「専門的知識をもった団体・市民」と「あまり専門的な知識を持たない団体・市民」とのレベルの差は、おもに「動植物の同定能力」によって区分できるものと考えられる。
【同定能力にあまり自信のない団体・市民】
 「水生指標生物による水質判定」等で用いられている「(指標生物)チャート」を作成し、分類群(目または科レベル)によって砂浜に生息・生育する動植物を判定する。
 例えば:サギ類(鳥)、カモメ類鳥)、紅藻類(海藻)、ハマトビムシ類(甲殻類)など動植物のグループで判断する。
【同定能力のある団体】
 鳥類や哺乳類、両生類・爬虫類などについては、現地で種の判定を行い、砂中に生息する小動物などについては、現場より採取(定量・任意)した検体を持ち帰り、顕微鏡を用いて種までの同定を想定するものである。
 例えば:コサギ(鳥)、セグロカモメ(鳥)、イギス(海藻)、ヒメハマトビムシ(甲殻類)など種レベルまで判断できる。
 
 このマニュアルでは、動植物については基本的に現地でわかる範囲で種の記載をするものとした。また、地形や地象の観察についてもできるだけ少人数でも測定・観察できるような内容とし、さらに調査道具についてもごく一般的な家庭にあるものあるいは日常的に利用しているものを用いて調査できるように工夫する必要がある。








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