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1)既往資料にみる砂浜生物
[1]海浜性植物
 砂浜には特有の植物が生育することは良く知られている。例えば、砂浜ではコウボウムギ、ハマヒルガオ、ハマニガナ、オニシバ等が極普通に生育するが、これらは少し内陸に入っただけで姿を消してしまい、海岸と内陸ではほとんど共通種がみられないことが普通である。以下に海崖を含む海岸の植物を示したが、多くが海岸に特異的に分布する植物となっている。
 
海岸性の植物
アッケシソウ 塩沼地 ハマニンニク 砂丘・礫浜 バシクルモン 断崖地
ウミミドリ 塩沼地 ハマヒルガオ 砂丘・礫浜 ハマギク 断崖地
ウラギク 塩沼地 ネコノシタ 砂丘・礫浜 コハマギク 断崖地
シバナ 塩沼地 ハマニガナ 砂丘・礫浜 オオウシノケグサ 断崖地
ドロイ 塩沼地 ハマボウフウ 砂丘・礫浜 エゾネギ 断崖地
カワツルモ 塩沼地 コウボウムギ 砂丘・礫浜 ワダン 断崖地
アマモ 塩沼地 オニシバ 砂丘・礫浜 ホソバワダン 断崖地
ヒトモトススキ 塩沼地 ケカモノハシ 砂丘・礫浜 イソギク 断崖地
シオグサ 塩沼地 ハマベンケイソウ 砂丘・礫浜 ボタンボウフウ 断崖地
アイアシ 塩沼地 ハマハコベ 砂丘・礫浜 ハマナデシコ 断崖地
ハマダイコン 塩沼地 エゾオグルマ 砂丘・礫浜 ラセイタソウ 断崖地
イワタイゲキ 塩沼地 ハマウツボ 砂丘・礫浜 タイトゴメ 断崖地
ツルナ 塩沼地 エゾスカシユリ 砂丘・礫浜 ツワブキ 断崖地
オカヒジキ 塩沼地 ナミキソウ 砂丘-礫浜 ハマオモト 断崖地
シチメンソウ 塩沼地 コウボウシバ 砂丘・礫浜 アシタバ 断崖地
フクド 塩沼地 ハマナシ 砂丘・礫浜 ハマウド 断崖地
ハマサジ 塩沼地 ハマゴウ 砂丘・礫浜 ハチジョウススキ 断崖地
ハマアカザ 塩沼地 ハイネズ 砂丘・礫浜 ダンチク 断崖地
マツナ 塩沼地 ダルマギク 断崖地 オニヤブソテツ 断崖地
ハママツナ 塩沼地 ノジギク 断崖地 ウバメガシ 断崖地
ナガミノオニシバ 塩沼地 シマカンギク 断崖地 ハマピワ 断崖地
シロヨモギ 砂丘・礫浜 ソナレムグラ 断崖地 トベラ 断崖地
スナビキソウ 砂丘・礫浜 クサスギカズラ 断崖地 マサキ 断崖地
ハマハタザオ 砂丘・礫浜 トウテイラン 断崖地 マルバグミ 断崖地
ウンラン 砂丘・礫浜 ハマボッス 断崖地 ハマヒサカキ 断崖地
ハマエンドウ 砂丘・礫浜 スカシユリ 断崖地 ハマボウ 断崖地
ハマビシ 砂丘・礫浜 キリンソウ 断崖地    
「野生植物館」より整理
 
海浜の植物
Lathyrus japonicus ハマエンドウ
Phragmites australis ヨシ
Carex kobomugi コウボウムギ
Calystegia Soldanella ハマヒルガオ
Lolium multiflorum ネズミムギ
Phellopterus litoralis ハマボウフウ
Peucedanum japonicum ボタンボウフウ
Rubia cordifolia var pratemsis クルマバアカネ
Ischaemum anthephoroides ケカモノハシ
Zoysia sp. シバ
Messersohmidia sibirica スナビキソウ
Raphanus sativus var raphanistroides ハマダイコン
Digitaria ciliaris メヒシバ
Zoisa macrotachya オニシバ
Oenothera laciniata コマツヨイグサ
Wedelia chinensis ネコノシタ
lxeris repens ハマニガナ
旧環境庁資料より整理
[2]海浜性昆虫類等
 昆虫類について、旧環境庁の資料を基に出現種の整理を行ったところ、「ウミベ…」や「ハマ…」といった種名が散見され、海浜と結びつきが強い種もあることが認められた。しかしながらこれら種に関する詳細な調査例や知見は少なく、砂浜の減少や改変とともに知られることなく分布しなくなっている種も多いものと思われる。
 
海浜の昆虫
Halla okadai アカムシ
Dolichopodidae アシナガバエ科の一種
Dolichopodidae アシナガバエ科の一種
Tabanidae sp. アブ科の一種
  アメンボsp
FORMICIDAE sp. アリ科の一種
  蚊(成体)
  甲虫の幼虫
Cercyon aptus コケシガムシ
Hydaticus grammicus コシマゲンゴロウ
Tenebrionidae sp. ゴミムシダマシ(幼虫)
Harpaldae sp. ゴミムシ科の一種
Armadillidium vulgare ダンゴムシ
Lispinus impressicollis longulus チビホリハネカクシ
Thalasselaphas maximus ツヤハマベゾウムシ
Diptera ハエ目の一種
昆虫 ハサミムシ類
Staphylinidae ハネカクシ科の一種
Aphela gotoi ハマベゾウムシ
  ハマベバエの1種
Anisolabis maritima ハマベハサミムシ
環境庁資料より作成
 
東京湾岸の砂浜に出現する昆虫
  和名
1 コウチュウ   ハラビロハンミョウ
2 オサムシ ヒョウタンゴミムシ
3 ガムシ オサムシモドキ
4 フチトリケシガムシ
5 コケシガムシ
6 エンマムシ ニセハマベエンマムシ
7 ハマベエンマムシ
8 ツヤハマベエンマムシ
9 ハネカクシ ホソウミベハネカクシ
10 ホソアバタウミベハネカクシ
11 ツヤウミベハネカクシ
12 アカウミベハネカクシ
13 アバタウミベハネカクシ
14 ウミベアカバハネカクシ
15 ツヤケシヒゲブトハネカクシ
16 ホソセスジヒゲブトハネカクシ
17 コブスジコガネ ヒメコブスジコガネ
18 オオコブスジコガネ
19 コガネムシ ヤマトケシマグソコガネ
20 シロスジコガネ
21 コメツキムシ アカアシコハナコメツキ
22 ゴミムシダマシ ホソハマベゴミムシダマシ
23 ヒメホソハマベゴミムシダマシ
24 ニセハマヒョウタンゴミムシダマシ
25 ハマヒョウタンゴミムシダマシ
26 オオマルチビゴミムシダマシ
27 マルチビゴミムシダマシ
28 オオスナゴミムシダマシ
29 カクスナゴミムシダマシ
30 クロズハマベゴミムシダマシ
31 ゾウムシ ハマベゾウムシ
32 トビイロヒョウタンゾウムシ
33 トンボ イトトンボ ヒヌマイトトンボ
34 チョウ ヤガ ハマオモトヨトウ
「東京湾の生物誌」より作成
[3]鳥類
 海岸の鳥類としては、カモやカモメ類が越冬のために訪れたり、春秋に渡って来るシギ・チドリ類が代表的なものである。特にシギ・チドリ類は、波打ち際で波に追われながら採餌を行う場として砂浜を利用しており、砂浜の鳥類の代表的なものといえる。
表2.1 渥美半島の外海と内湾における鳥類の観察の事例
科名 種名 太平洋岸 三河湾
カイツブリ ハジロカイツブリ
ミミカイツブリ  
カンムリカイツブリ  
カワウ  
ウミウ  
ヒメウ  
カモ マガモ  
カルガモ  
コガモ  
ヨシガモ  
ヒドリガモ  
オナガガモ  
クロガモ    
シノリガモ  
ホオジロガモ
ウミアイサ  
   
チドリ シロチドリ  
ダイゼン  
シギ ハマシギ  
イソシギ  
カモメ ユリカモメ  
セグロカモメ
オオセグロカモメ  
カモメ  
ウミネコ  
出典:「海岸の自然観察.自然観察の手引き Vol.4.愛知県」
[4]潮間帯の底生生物
 砂浜海岸の潮間帯に出現する海域生物群としては、可能性として全ての生物群が出現するが、主なものとしては、多毛類、二枚貝類、甲殻類が中心となっている。
 昨年度に実施した相模湾沿岸の砂浜海岸潮間帯における底生生物相をみても、出現種30種のうち、多毛類、二枚貝類、甲殻類が24種類と80%を占めている。
表2.2 平成12年10〜11月の相模湾沿岸の砂浜海岸潮間帯から採集された底生生物
No. 種名
1 紐形 不明 不明  NEMERTINEA 紐形動物門の数種
2 環形 多毛 チロリ Glycera sp. (チロリ科の一種)
3 シリス Brania clavata ホソテシリス
4 Syllinae Gen.sp. シリス亜科の一種
5 シロガネゴカイ Nephtys californiensis コクチョウシロガネゴカイ
6 スナゴカイ Pisione sp. (スナゴカイ科の)
7 スピオ科 Rhynchospio sp. (スピオ科の一種)
8 Scolelepis(Scolelepis) spp. (スピオ科の数種)
9 原始環虫 イイジマムカシゴカイ Polygordius sp. (イイジマムカシゴカイ科の一種)
10 ムカシゴカイ Saccocirus sp. (ムカシゴカイ科の一種)
11 貧毛 不明  OLIGOCHAETA 貧毛綱の一種
12 軟体 腹足 ニシキウズガイ Umbonium giganteum ダンベイキサゴ
13 タマガイ Glossaulax didyma ツメタガイ
14 二枚貝 バカガイ Mactra nipponica チゴバカガイ
15 Mactra chinensis バカガイ
16 フジノハナガイ Chion semigranosa フジノハナガイ
17 Latona cuneata ナミノコガイ
18 マルスダレガイ Meretrix lamarckii チョウセンハマグリ
19 節足 甲殻 アミ Mysidae Gen.sp. アミ科の一種
20 ドロクダムシ Bubocorophium sp. (ドロクダムシ科の一種)
21 ヒサシソコエビ Harpiniopsis sp. (ヒサシソコエビ科の一種)
22 ツノヒゲソコエビ Urothoe sp. (ツノヒゲソコエビ科の一種)
23 モクズヨコエビ Hyale sp. (モクズヨコエビ科の一種)
24 ヘラムシ Synidotea laevidorsalis ワラジヘラムシ
25 スナホリムシ Excirolana chiltoni ヒメスナホリムシ
26 コツブムシ Sphaeromatidae Gen.spp. コツブムシ科の数種
27 ヤドカリ Diogenes nitidimanus テナガツノヤドカリ
28 Diogenes sp. ツノヤドカリ属の一種
29 スナホリガニ Hippa sp. スナホリガニ属の一種
30 カラッパ Matuta lunaris キンセンガニ


[5]魚類
 生活史の一部で波打ち際(砕波帯)を利用する魚類の稚仔の存在が知られている。仙台湾の砂浜浅海域の調査事例では、水深5m以浅に特徴的に出現する魚種のあることが知られている他、クサフグのように砂浜の波打ち際に集団で押し寄せて産卵をする魚種もある。
表2.3 砂浜浅海域に出現する魚類の水深帯別分布(大方・石川、1979)
水深
5m 10m 15m
アユ、シロウオ、ヒゲダイ、コチ、ガンゾウビラメ、ウシノシタ類    
バケヌメリ、カレイ類、ヨウジウオ、ホウボウ類、マサバ、サブロウ、アイナメ  
カタクチイワシ、イシカワシラウオ、クモハゼ類、スズキ、ニベ、カジカ類、ギンポ類、マイワシ、クロウシノシタ、イカナゴ、イシガレイ、ネズッポ類、シマハゼ、アナゴ類、シロギス、マアジ、サビハゼ
  ササウシノシタ、アカエイ、イシナギ、ムラソイ、リュウグウハゼ、コモンフグ、チゴダラ  
  クサウオ、マコガレイ、アカシタビラメ、アカハゼ、クサフグ
    カサゴ類、チダイ、タチウオ、マダラ


[6]その他
 砂浜の生物として象徴的な生物としてウミガメを第一にあげることができる。この他にも、砂浜の汀線際を産卵に活用する、アカテガニやカブトガニ、普段は砂浜背後の林に生息するオオヤドカリ類、ヤシガニ類、オカガニ類のように成長に従って、海域部から陸上部へ異動する生態をもつ生物も知られている。








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